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中等部編
第十二話 エッジ(7)
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雷のヘビは触手を打ち払いながら店員の体の上を這い、痛々しい傷を作っていく。
その傷に、白っぽい何かが付着していることにエッジは気付いた。
(あれは……霜か?)
店員の皮膚が少し凍っている。
これは冷却魔法だ。あの精霊は店員の体を感電させながら熱を奪っている。
間も無く、触手の抵抗が止まり、それを確認したヴィーは店員を地面に寝かせた。
やったのか? エッジがそんな心の声を響かせると、ヴィーは答えた。
「殺してはいない。大人しくなってもらっただけだ」
答えながらヴィーは周囲の状況を確認し、再び口を開いた。
「お前、銃撃戦は経験したことあるか?」
エッジが「無い」と答えると、ヴィーは言った。
「そうか。だったら俺から離れないことだ」
言い終えた直後にそれは始まった。
銃声が四方八方から響き始める。
あまりに急な展開に、エッジは思わず声を上げた。
「なにが起きてるんだ!?」
ヴィーは少しめんどくさそうに答えた。
「その質問に答えるより、さっさと逃げるほうが先決だと思うんだがな。まあいい、教えてやる。お前が思ってる通りで正解だ。お前の寄生体はお前が寝てる間に卵を街中にばらまいてたのさ」
その言葉に、エッジはショックを受けた。
俺のせい? そんな言葉が浮かんだ。
だからヴィーは再び口を開いた。
「自分を責めるな。悪いのは寄生体だ。そしてその寄生体をなんとかできる医者がいないという不運が重なった。それだけだ」
そしてヴィーは「さあ、行くぞ」と、あらかじめ決められていた逃走ルートめざして走り出そうとした。
それをエッジは呼び止めた。
「待ってくれ! 母さんを置いてはいけない!」
ヴィーは即答した。
「病院には別の部隊が向かってる。そいつらに任せておけばいい。そしてこれ以上の質問はナシだ。走るぞ!」
◆◆◆
周囲ではエッジを安全に逃がすために兵士達が敵を食い止めていた。
狭い路地の曲がり角で、壁を盾にしながら時々顔をのぞかせて銃撃する。
しかし直後に数倍の弾丸が撃ち返される。
曲がり角の後ろに隠れてその反撃をやりすごしながら、兵士は声を上げた。
「相手は乗っ取られた一般人だ! 手術すればまだ助かる可能性がある! できるだけ致命傷はさけろ!」
直後、敵の銃声が止むと同時に、声を上げた兵士の真横から別の兵士が身を乗り出して銃撃。
銃撃はすべて下半身狙い。言われた通り、できるだけ致命傷を避けながら相手の足を止めようとしている。
だが敵の勢いは止まらない。
最前列の敵を転ばせても、押し寄せる波のようにすぐに後続が現れる。
その後続による反撃の銃撃から身を隠しながら、もう一人の兵士は声を上げた。
「しかし、敵は予想よりも強力な武装をしています! 数も多い!」
それはわかっていた。
だから兵士は声を上げた。
「こっちが突破されそうだ! 誰か来てくれ!」
その声に応えるように、機械の駆動音と重い足音が近づいてきた。
間も無く、一体のパワーアーマーが二人の横を通り過ぎ、狭い路地に飛び出した。
飛び出すと同時に、パワーアーマーは左腕に装備していた長方形型の大盾を、地面に横向きに置いた。
すぐにその場にしゃがみ、大盾を土嚢がわりの障害物として身を守る。
直後に大量の弾丸が大盾に撃ち込まれるが、大盾はそのすべてをはじき返す。
攻撃がパワーアーマーに集中した隙を狙って、二人の兵士が反撃。
その時、兵士の一人は見た。
押し寄せてくる敵のある一人が、丸いものをにぎりしめていることを。
反射的に兵士は叫んだ。
「やばい! グレネードだ!」
その声と同時にそれは投げられた。
そして言われるまでも無くパワーアーマーはその危険を認識していた。
だから声と同時にパワーアーマーは盾から身を乗りだしていた。
目にはアイリスと同じ精霊が棲んでいた。
ゆえにその目は飛んでくるグレネードをしっかりと認識していた。スローモーションであり、標的のグレネードはわかりやすく枠線で囲まれていた。
標的に向かってパワーアーマーは右手のサブマシンガンを構えた。この照準合わせは自動であった。
本人がやることは引き金を引くことだけであり、照準が合うと同時にパワーアーマー乗りはそれをやった。
発射された弾丸は的確にグレネードを弾き返し、直後に起きた爆発は集団は赤く吹き飛ばした。
その傷に、白っぽい何かが付着していることにエッジは気付いた。
(あれは……霜か?)
店員の皮膚が少し凍っている。
これは冷却魔法だ。あの精霊は店員の体を感電させながら熱を奪っている。
間も無く、触手の抵抗が止まり、それを確認したヴィーは店員を地面に寝かせた。
やったのか? エッジがそんな心の声を響かせると、ヴィーは答えた。
「殺してはいない。大人しくなってもらっただけだ」
答えながらヴィーは周囲の状況を確認し、再び口を開いた。
「お前、銃撃戦は経験したことあるか?」
エッジが「無い」と答えると、ヴィーは言った。
「そうか。だったら俺から離れないことだ」
言い終えた直後にそれは始まった。
銃声が四方八方から響き始める。
あまりに急な展開に、エッジは思わず声を上げた。
「なにが起きてるんだ!?」
ヴィーは少しめんどくさそうに答えた。
「その質問に答えるより、さっさと逃げるほうが先決だと思うんだがな。まあいい、教えてやる。お前が思ってる通りで正解だ。お前の寄生体はお前が寝てる間に卵を街中にばらまいてたのさ」
その言葉に、エッジはショックを受けた。
俺のせい? そんな言葉が浮かんだ。
だからヴィーは再び口を開いた。
「自分を責めるな。悪いのは寄生体だ。そしてその寄生体をなんとかできる医者がいないという不運が重なった。それだけだ」
そしてヴィーは「さあ、行くぞ」と、あらかじめ決められていた逃走ルートめざして走り出そうとした。
それをエッジは呼び止めた。
「待ってくれ! 母さんを置いてはいけない!」
ヴィーは即答した。
「病院には別の部隊が向かってる。そいつらに任せておけばいい。そしてこれ以上の質問はナシだ。走るぞ!」
◆◆◆
周囲ではエッジを安全に逃がすために兵士達が敵を食い止めていた。
狭い路地の曲がり角で、壁を盾にしながら時々顔をのぞかせて銃撃する。
しかし直後に数倍の弾丸が撃ち返される。
曲がり角の後ろに隠れてその反撃をやりすごしながら、兵士は声を上げた。
「相手は乗っ取られた一般人だ! 手術すればまだ助かる可能性がある! できるだけ致命傷はさけろ!」
直後、敵の銃声が止むと同時に、声を上げた兵士の真横から別の兵士が身を乗り出して銃撃。
銃撃はすべて下半身狙い。言われた通り、できるだけ致命傷を避けながら相手の足を止めようとしている。
だが敵の勢いは止まらない。
最前列の敵を転ばせても、押し寄せる波のようにすぐに後続が現れる。
その後続による反撃の銃撃から身を隠しながら、もう一人の兵士は声を上げた。
「しかし、敵は予想よりも強力な武装をしています! 数も多い!」
それはわかっていた。
だから兵士は声を上げた。
「こっちが突破されそうだ! 誰か来てくれ!」
その声に応えるように、機械の駆動音と重い足音が近づいてきた。
間も無く、一体のパワーアーマーが二人の横を通り過ぎ、狭い路地に飛び出した。
飛び出すと同時に、パワーアーマーは左腕に装備していた長方形型の大盾を、地面に横向きに置いた。
すぐにその場にしゃがみ、大盾を土嚢がわりの障害物として身を守る。
直後に大量の弾丸が大盾に撃ち込まれるが、大盾はそのすべてをはじき返す。
攻撃がパワーアーマーに集中した隙を狙って、二人の兵士が反撃。
その時、兵士の一人は見た。
押し寄せてくる敵のある一人が、丸いものをにぎりしめていることを。
反射的に兵士は叫んだ。
「やばい! グレネードだ!」
その声と同時にそれは投げられた。
そして言われるまでも無くパワーアーマーはその危険を認識していた。
だから声と同時にパワーアーマーは盾から身を乗りだしていた。
目にはアイリスと同じ精霊が棲んでいた。
ゆえにその目は飛んでくるグレネードをしっかりと認識していた。スローモーションであり、標的のグレネードはわかりやすく枠線で囲まれていた。
標的に向かってパワーアーマーは右手のサブマシンガンを構えた。この照準合わせは自動であった。
本人がやることは引き金を引くことだけであり、照準が合うと同時にパワーアーマー乗りはそれをやった。
発射された弾丸は的確にグレネードを弾き返し、直後に起きた爆発は集団は赤く吹き飛ばした。
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