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中等部編

第十一話 お金ってステキですよね? あ、違いますよ? そういう意味じゃないです。お金って生活に必要じゃないですか。それ以外のry(11)

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 叫びと共にお姉ちゃんの二刀が十字を切り、エッジくんの赤黒く燃える拳が地面に叩きつける勢いで振り下ろされる。
 十字の交差点から光の刃が花開くようにあふれ、間も無く歪み、からみ合いながら白い曲線の濁流と化す。
 エッジくんが放ったものもヤバイものだった。触手が巻き付いた赤い球が地面に叩きつけられ、爆炎と共に赤黒い波が走り出していた。
 うわああああああ! 大事故確定! いろいろ終わったあああああ!
 わたしはあきらめ、現実から目を背けようとした。
 直後、

「!?」

 二つの濁流がぶつかり合うその中心に、真上から飛びこんでくる影があった。
 
(ヴィーさん!?)

 わたしは驚いた。それだけであり、なんとかしてくれるかもなどという期待感は無かった。自殺行為にしか見えなかった。
 のだけど、

「!!?」

 次の瞬間、わたしの驚きはもっと大きな驚きに塗り替えられた。
 ヴィーさんはリングに叩きつけるように切り離した防御魔法を投げ、その中心に大太刀を突き刺した、一瞬だったけどそう見えた。
 貫かれた防御魔法の傘は中心からひび割れながらちぎれ、その破片は白いヘビのような光の刃となった。
 ヴィーさんの姿はその白ヘビの群れが作り出した白い刃の繭に包まれ、直後に二人が放った技がヴィーさんをはさみこむようにぶつかり合った。

「……っ!」

 雷のような光魔法の炸裂音が幾重にも重なった轟音と共に、リングは白く包まれ、その眩しさにわたしは目を細めた。
 わたしは痛みを覚悟していた。
 だけど、その鋭い感覚は来なかった。
 閃光がおさまり、目を開けると、そこにはボロボロになったリングに立つヴィーさんの姿があった。
 エッジくんも無傷のようだ。
 そしてヴィーさんはわたしとエッジくんを交互に見ながら口を開いた。 

「二人ともそこまでだ。ここはあくまで娯楽の場。命のやりとりになるような本物の仕合はご法度だぞ」
 
 言いながらヴィーさんは大太刀を鞘におさめ、続けて審判に向かって口を開いた。

「危険試合により双方とも失格、それでいいな?」

 これに審判さんが頷きを返すと、ヴィーさんはわたしに向かって言った。

「ケガはないな? 勝ったぶんの賞金をもらって帰るぞ」

 瞬間、わたしは気付いた。
 めずらしく、ヴィーさんの心の声が漏れたからだ。
 ヴィーさんの意識はエッジくんに向いていた。
 ……当然か。アレを体内に飼ってるんだから。
 気になるなあ。聞いたら教えてくれるかな? うう、でも声をかけづらい。あんなにバチバチした直後にフレンドリーな会話ができるとは思えない。お姉ちゃん? 悔い改めて?
 悩んでる間にエッジくんはリングを降りて老人と一緒に帰り始めた。
 ……うーん、今日は無理かな。わたしも素直に帰ろう。
 おっとそうだ! 忘れちゃいけない! お金お金お金! ギブミーマネー!
 わたしが欲した直後に、どこかから戻ってきたヴィーさんはそれをわたしに差し出した。

「お前の取り分だ」

 うおおおおおおおおおおお! 札束だあああああ!

「いいんですか! こんなにもらっても!?」
「いらないのか?」
「いただきます!」

 わたしは奪い取るような勢いでヴィーさんからそれを受け取った。
 いちまーい、にまーい、さんまーい、うふふふふふ。お金持ちだあ。
 ん? ちょっと待って? 明日もくればまた稼げるのでは? もっとお金持ちになれるのでは?!
 わたしのその疑問にヴィーさんが答えた。

「今日のように稼ぐのはもう無理だぞ」
「なんでぇ?」
「お前の強さが評価されたからだ。もう無名の新人じゃない。だから次からはオッズが変わるぞ」
「えぇ~」

 わたしはがっくりと肩を落とした。
 でもまあ、しょうがないか、と、わたしがすぐに気を取り直すと、ヴィーさんは笑顔で言った。

「さて、大きく稼げたことだし、帰りにどこかで豪華なメシでも食っていくか? お前のおかげで稼がせてもらったからな。おごってやるぞ」
「本当ですか!? ステキです!」

 わたしはキラキラと目を輝かせながらヴィーさんの隣に並び、わくわくな帰路についた。
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