111 / 120
中等部編
第十一話 お金ってステキですよね? あ、違いますよ? そういう意味じゃないです。お金って生活に必要じゃないですか。それ以外のry(11)
しおりを挟む
叫びと共にお姉ちゃんの二刀が十字を切り、エッジくんの赤黒く燃える拳が地面に叩きつける勢いで振り下ろされる。
十字の交差点から光の刃が花開くようにあふれ、間も無く歪み、からみ合いながら白い曲線の濁流と化す。
エッジくんが放ったものもヤバイものだった。触手が巻き付いた赤い球が地面に叩きつけられ、爆炎と共に赤黒い波が走り出していた。
うわああああああ! 大事故確定! いろいろ終わったあああああ!
わたしはあきらめ、現実から目を背けようとした。
直後、
「!?」
二つの濁流がぶつかり合うその中心に、真上から飛びこんでくる影があった。
(ヴィーさん!?)
わたしは驚いた。それだけであり、なんとかしてくれるかもなどという期待感は無かった。自殺行為にしか見えなかった。
のだけど、
「!!?」
次の瞬間、わたしの驚きはもっと大きな驚きに塗り替えられた。
ヴィーさんはリングに叩きつけるように切り離した防御魔法を投げ、その中心に大太刀を突き刺した、一瞬だったけどそう見えた。
貫かれた防御魔法の傘は中心からひび割れながらちぎれ、その破片は白いヘビのような光の刃となった。
ヴィーさんの姿はその白ヘビの群れが作り出した白い刃の繭に包まれ、直後に二人が放った技がヴィーさんをはさみこむようにぶつかり合った。
「……っ!」
雷のような光魔法の炸裂音が幾重にも重なった轟音と共に、リングは白く包まれ、その眩しさにわたしは目を細めた。
わたしは痛みを覚悟していた。
だけど、その鋭い感覚は来なかった。
閃光がおさまり、目を開けると、そこにはボロボロになったリングに立つヴィーさんの姿があった。
エッジくんも無傷のようだ。
そしてヴィーさんはわたしとエッジくんを交互に見ながら口を開いた。
「二人ともそこまでだ。ここはあくまで娯楽の場。命のやりとりになるような本物の仕合はご法度だぞ」
言いながらヴィーさんは大太刀を鞘におさめ、続けて審判に向かって口を開いた。
「危険試合により双方とも失格、それでいいな?」
これに審判さんが頷きを返すと、ヴィーさんはわたしに向かって言った。
「ケガはないな? 勝ったぶんの賞金をもらって帰るぞ」
瞬間、わたしは気付いた。
めずらしく、ヴィーさんの心の声が漏れたからだ。
ヴィーさんの意識はエッジくんに向いていた。
……当然か。アレを体内に飼ってるんだから。
気になるなあ。聞いたら教えてくれるかな? うう、でも声をかけづらい。あんなにバチバチした直後にフレンドリーな会話ができるとは思えない。お姉ちゃん? 悔い改めて?
悩んでる間にエッジくんはリングを降りて老人と一緒に帰り始めた。
……うーん、今日は無理かな。わたしも素直に帰ろう。
おっとそうだ! 忘れちゃいけない! お金お金お金! ギブミーマネー!
わたしが欲した直後に、どこかから戻ってきたヴィーさんはそれをわたしに差し出した。
「お前の取り分だ」
うおおおおおおおおおおお! 札束だあああああ!
「いいんですか! こんなにもらっても!?」
「いらないのか?」
「いただきます!」
わたしは奪い取るような勢いでヴィーさんからそれを受け取った。
いちまーい、にまーい、さんまーい、うふふふふふ。お金持ちだあ。
ん? ちょっと待って? 明日もくればまた稼げるのでは? もっとお金持ちになれるのでは?!
わたしのその疑問にヴィーさんが答えた。
「今日のように稼ぐのはもう無理だぞ」
「なんでぇ?」
「お前の強さが評価されたからだ。もう無名の新人じゃない。だから次からはオッズが変わるぞ」
「えぇ~」
わたしはがっくりと肩を落とした。
でもまあ、しょうがないか、と、わたしがすぐに気を取り直すと、ヴィーさんは笑顔で言った。
「さて、大きく稼げたことだし、帰りにどこかで豪華なメシでも食っていくか? お前のおかげで稼がせてもらったからな。おごってやるぞ」
「本当ですか!? ステキです!」
わたしはキラキラと目を輝かせながらヴィーさんの隣に並び、わくわくな帰路についた。
十字の交差点から光の刃が花開くようにあふれ、間も無く歪み、からみ合いながら白い曲線の濁流と化す。
エッジくんが放ったものもヤバイものだった。触手が巻き付いた赤い球が地面に叩きつけられ、爆炎と共に赤黒い波が走り出していた。
うわああああああ! 大事故確定! いろいろ終わったあああああ!
わたしはあきらめ、現実から目を背けようとした。
直後、
「!?」
二つの濁流がぶつかり合うその中心に、真上から飛びこんでくる影があった。
(ヴィーさん!?)
わたしは驚いた。それだけであり、なんとかしてくれるかもなどという期待感は無かった。自殺行為にしか見えなかった。
のだけど、
「!!?」
次の瞬間、わたしの驚きはもっと大きな驚きに塗り替えられた。
ヴィーさんはリングに叩きつけるように切り離した防御魔法を投げ、その中心に大太刀を突き刺した、一瞬だったけどそう見えた。
貫かれた防御魔法の傘は中心からひび割れながらちぎれ、その破片は白いヘビのような光の刃となった。
ヴィーさんの姿はその白ヘビの群れが作り出した白い刃の繭に包まれ、直後に二人が放った技がヴィーさんをはさみこむようにぶつかり合った。
「……っ!」
雷のような光魔法の炸裂音が幾重にも重なった轟音と共に、リングは白く包まれ、その眩しさにわたしは目を細めた。
わたしは痛みを覚悟していた。
だけど、その鋭い感覚は来なかった。
閃光がおさまり、目を開けると、そこにはボロボロになったリングに立つヴィーさんの姿があった。
エッジくんも無傷のようだ。
そしてヴィーさんはわたしとエッジくんを交互に見ながら口を開いた。
「二人ともそこまでだ。ここはあくまで娯楽の場。命のやりとりになるような本物の仕合はご法度だぞ」
言いながらヴィーさんは大太刀を鞘におさめ、続けて審判に向かって口を開いた。
「危険試合により双方とも失格、それでいいな?」
これに審判さんが頷きを返すと、ヴィーさんはわたしに向かって言った。
「ケガはないな? 勝ったぶんの賞金をもらって帰るぞ」
瞬間、わたしは気付いた。
めずらしく、ヴィーさんの心の声が漏れたからだ。
ヴィーさんの意識はエッジくんに向いていた。
……当然か。アレを体内に飼ってるんだから。
気になるなあ。聞いたら教えてくれるかな? うう、でも声をかけづらい。あんなにバチバチした直後にフレンドリーな会話ができるとは思えない。お姉ちゃん? 悔い改めて?
悩んでる間にエッジくんはリングを降りて老人と一緒に帰り始めた。
……うーん、今日は無理かな。わたしも素直に帰ろう。
おっとそうだ! 忘れちゃいけない! お金お金お金! ギブミーマネー!
わたしが欲した直後に、どこかから戻ってきたヴィーさんはそれをわたしに差し出した。
「お前の取り分だ」
うおおおおおおおおおおお! 札束だあああああ!
「いいんですか! こんなにもらっても!?」
「いらないのか?」
「いただきます!」
わたしは奪い取るような勢いでヴィーさんからそれを受け取った。
いちまーい、にまーい、さんまーい、うふふふふふ。お金持ちだあ。
ん? ちょっと待って? 明日もくればまた稼げるのでは? もっとお金持ちになれるのでは?!
わたしのその疑問にヴィーさんが答えた。
「今日のように稼ぐのはもう無理だぞ」
「なんでぇ?」
「お前の強さが評価されたからだ。もう無名の新人じゃない。だから次からはオッズが変わるぞ」
「えぇ~」
わたしはがっくりと肩を落とした。
でもまあ、しょうがないか、と、わたしがすぐに気を取り直すと、ヴィーさんは笑顔で言った。
「さて、大きく稼げたことだし、帰りにどこかで豪華なメシでも食っていくか? お前のおかげで稼がせてもらったからな。おごってやるぞ」
「本当ですか!? ステキです!」
わたしはキラキラと目を輝かせながらヴィーさんの隣に並び、わくわくな帰路についた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる