クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

文字の大きさ
上 下
106 / 120
中等部編

第十一話 お金ってステキですよね? あ、違いますよ? そういう意味じゃないです。お金って生活に必要じゃないですか。それ以外のry(6)

しおりを挟む
 悪いけど、痛い思いをするのはそっちだよ! という思いを響かせながらわたしは踏み込んだ。
 わたしの突進に合わせて、エッジくんは真横に地面を蹴る。
 いや、蹴ったというよりは飛んだって感じ。
 跳躍は鋭く、エッジくんはほぼ直線の軌道でフェンスに張り付いた。
 直後にエッジくんはフェンスを蹴って別のフェンスへ。
 連続壁蹴りの要領でフェンスからフェンスへ。
 わたしの頭上を右へ左へ前後に飛び回る。
 速い。目が追い付かない。重いフェンスがガシャガシャ揺れてる。
 だけどわたしの感知は追い付けてる。攻撃に見せかけただけの、スレスレですれちがうフェイントばっかりなのも感じ取れてる。
 問題はいつ仕掛けてくるか。
 これも違う。これもフェイント。これもこれもこれも――
 ! これだ!
 
「ここだぁ!」
 
 感知を信じ、本能に従うままにわたしはパンチを繰り出した。
 ドンピシャ! 向かってくるエッジくんとわたしのパンチの軌道がキレイに直線で重なってる!
 あ、でも、このまま殴ったら大けがしちゃうよね。手をグーからパーに変えて受け止めるような感じで叩こう。
 そう思ったわたしが手を開いた瞬間、

「!?」

 パーにしたばかりのわたしの手は、勢いよく叩き払われた。
 そして直後、

「ぐぇっ?!」

 ラリアットの要領で、エッジくんの腕が首にたたきつけられた。
 そのまま抱きつかれる形でリングに二人で倒れこむ。
 そして気付けば、

「……!」

 わたしは仰向けにされて後ろから首をしめられていた。
 これは、えっと、たしか、魔法禁止スポーツのプロレスの、そう、チョークスリーパーってやつだ。
 この拘束から抜ける手段は簡単。エッジくんの腕に魔力を流すだけでいい。
 にもかかわらず、なぜエッジくんがこんな攻撃をしかけてきているのか。
 その理由は心に響いていた。
 このまま負けを認めてくれ、とエッジくんは言っている。
 たしかに、ちょっと苦しいけど、このまま抵抗しなければ痛みなく終わるだろう。
 でも――

(ごめん!)

 エッジくんの情けに対しての謝罪の言葉を響かせながら、わたしは魔力を流し込んだ。
 その痛みにエッジくんは拘束を解き、わたしから距離を取る。
 見ると、エッジくんはむずかしい顔をしていた。
「なんであきらめてくれないんだ」、その目はそう言っているように見えた。
 そんなこと言われてもしょうがない。わたしにもちっぽけなプライドがある。相手が同年代なら、なおさら勝ちたくなる。
 でもそれだけじゃない。
 不思議な期待感が大きくなってる。
 同じものをエッジくんも感じてる。それがわかる。
 わたしはその期待感の正体を確かめるために、再びリングを蹴った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

夫達の裏切りに復讐心で一杯だった私は、死の間際に本当の願いを見つけ幸せになれました。

Nao*
恋愛
家庭を顧みず、外泊も増えた夫ダリス。 それを寂しく思う私だったが、庭師のサムとその息子のシャルに癒される日々を送って居た。 そして私達は、三人であるバラの苗を庭に植える。 しかしその後…夫と親友のエリザによって、私は酷い裏切りを受ける事に─。 命の危機が迫る中、私の心は二人への復讐心で一杯になるが…駆けつけたシャルとサムを前に、本当の願いを見つけて─? (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

ハズレスキル【分解】が超絶当たりだった件~仲間たちから捨てられたけど、拾ったゴミスキルを優良スキルに作り変えて何でも解決する~

名無し
ファンタジー
お前の代わりなんざいくらでもいる。パーティーリーダーからそう宣告され、あっさり捨てられた主人公フォード。彼のスキル【分解】は、所有物を瞬時にバラバラにして持ち運びやすくする程度の効果だと思われていたが、なんとスキルにも適用されるもので、【分解】したスキルなら幾らでも所有できるというチートスキルであった。捨てられているゴミスキルを【分解】することで有用なスキルに作り変えていくうち、彼はなんでも解決屋を開くことを思いつき、底辺冒険者から成り上がっていく。

北条氏政転生 関八州どころか東日本は全部俺の物 西は信長に任せて俺は歴史知識を利用して天下統一を手助けします。

ヒバリ
ファンタジー
1〜20までスカウトや内政ターン 20〜33まで戦タイム 安房攻め 34〜49戦後処理と内政 目標11/3日までに書き溜め 50〜61河東の戦い1 62〜70河東の戦い2 71〜80河東の戦い3 81〜85河東の戦い 後始末 86〜 川越夜戦 やばい、話の準備してるとどんどん内容が増えて予定通りにいかんのだがー? 時代物が好きなのでかきました。 史実改変物です。基本的な大きな歴史事件は史実通りに起こります。しかし、細かい戦や自分から仕掛ける戦はべつです。関東に詳しくなく細かい領地の石高や農業に関することはわからないのでご都合主義ですしある程度は史実とは違うことをするので全体的にご都合主義です。 北条氏親がいない世界線です。変更はこれだけです。あとは時代知識を使って漁夫の利を桶狭間でとったり、河東を強化して領内を強くして川越夜戦の援軍に駆けつけて関東統一にのりだします。史実通り豊後に来たポルトガル船を下田に呼んで史実より早めの鉄砲入手や、浪人になったり登用される前の有名武将をスカウトしたりします。ある程度は調べていますが細かい武将までは知りません。こういう武将がいてこんなことしましたよ!とか意見ください。私の好きなものを書きます。

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

処理中です...