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中等部編
第十一話 お金ってステキですよね? あ、違いますよ? そういう意味じゃないです。お金って生活に必要じゃないですか。それ以外のry(6)
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悪いけど、痛い思いをするのはそっちだよ! という思いを響かせながらわたしは踏み込んだ。
わたしの突進に合わせて、エッジくんは真横に地面を蹴る。
いや、蹴ったというよりは飛んだって感じ。
跳躍は鋭く、エッジくんはほぼ直線の軌道でフェンスに張り付いた。
直後にエッジくんはフェンスを蹴って別のフェンスへ。
連続壁蹴りの要領でフェンスからフェンスへ。
わたしの頭上を右へ左へ前後に飛び回る。
速い。目が追い付かない。重いフェンスがガシャガシャ揺れてる。
だけどわたしの感知は追い付けてる。攻撃に見せかけただけの、スレスレですれちがうフェイントばっかりなのも感じ取れてる。
問題はいつ仕掛けてくるか。
これも違う。これもフェイント。これもこれもこれも――
! これだ!
「ここだぁ!」
感知を信じ、本能に従うままにわたしはパンチを繰り出した。
ドンピシャ! 向かってくるエッジくんとわたしのパンチの軌道がキレイに直線で重なってる!
あ、でも、このまま殴ったら大けがしちゃうよね。手をグーからパーに変えて受け止めるような感じで叩こう。
そう思ったわたしが手を開いた瞬間、
「!?」
パーにしたばかりのわたしの手は、勢いよく叩き払われた。
そして直後、
「ぐぇっ?!」
ラリアットの要領で、エッジくんの腕が首にたたきつけられた。
そのまま抱きつかれる形でリングに二人で倒れこむ。
そして気付けば、
「……!」
わたしは仰向けにされて後ろから首をしめられていた。
これは、えっと、たしか、魔法禁止スポーツのプロレスの、そう、チョークスリーパーってやつだ。
この拘束から抜ける手段は簡単。エッジくんの腕に魔力を流すだけでいい。
にもかかわらず、なぜエッジくんがこんな攻撃をしかけてきているのか。
その理由は心に響いていた。
このまま負けを認めてくれ、とエッジくんは言っている。
たしかに、ちょっと苦しいけど、このまま抵抗しなければ痛みなく終わるだろう。
でも――
(ごめん!)
エッジくんの情けに対しての謝罪の言葉を響かせながら、わたしは魔力を流し込んだ。
その痛みにエッジくんは拘束を解き、わたしから距離を取る。
見ると、エッジくんはむずかしい顔をしていた。
「なんであきらめてくれないんだ」、その目はそう言っているように見えた。
そんなこと言われてもしょうがない。わたしにもちっぽけなプライドがある。相手が同年代なら、なおさら勝ちたくなる。
でもそれだけじゃない。
不思議な期待感が大きくなってる。
同じものをエッジくんも感じてる。それがわかる。
わたしはその期待感の正体を確かめるために、再びリングを蹴った。
わたしの突進に合わせて、エッジくんは真横に地面を蹴る。
いや、蹴ったというよりは飛んだって感じ。
跳躍は鋭く、エッジくんはほぼ直線の軌道でフェンスに張り付いた。
直後にエッジくんはフェンスを蹴って別のフェンスへ。
連続壁蹴りの要領でフェンスからフェンスへ。
わたしの頭上を右へ左へ前後に飛び回る。
速い。目が追い付かない。重いフェンスがガシャガシャ揺れてる。
だけどわたしの感知は追い付けてる。攻撃に見せかけただけの、スレスレですれちがうフェイントばっかりなのも感じ取れてる。
問題はいつ仕掛けてくるか。
これも違う。これもフェイント。これもこれもこれも――
! これだ!
「ここだぁ!」
感知を信じ、本能に従うままにわたしはパンチを繰り出した。
ドンピシャ! 向かってくるエッジくんとわたしのパンチの軌道がキレイに直線で重なってる!
あ、でも、このまま殴ったら大けがしちゃうよね。手をグーからパーに変えて受け止めるような感じで叩こう。
そう思ったわたしが手を開いた瞬間、
「!?」
パーにしたばかりのわたしの手は、勢いよく叩き払われた。
そして直後、
「ぐぇっ?!」
ラリアットの要領で、エッジくんの腕が首にたたきつけられた。
そのまま抱きつかれる形でリングに二人で倒れこむ。
そして気付けば、
「……!」
わたしは仰向けにされて後ろから首をしめられていた。
これは、えっと、たしか、魔法禁止スポーツのプロレスの、そう、チョークスリーパーってやつだ。
この拘束から抜ける手段は簡単。エッジくんの腕に魔力を流すだけでいい。
にもかかわらず、なぜエッジくんがこんな攻撃をしかけてきているのか。
その理由は心に響いていた。
このまま負けを認めてくれ、とエッジくんは言っている。
たしかに、ちょっと苦しいけど、このまま抵抗しなければ痛みなく終わるだろう。
でも――
(ごめん!)
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その痛みにエッジくんは拘束を解き、わたしから距離を取る。
見ると、エッジくんはむずかしい顔をしていた。
「なんであきらめてくれないんだ」、その目はそう言っているように見えた。
そんなこと言われてもしょうがない。わたしにもちっぽけなプライドがある。相手が同年代なら、なおさら勝ちたくなる。
でもそれだけじゃない。
不思議な期待感が大きくなってる。
同じものをエッジくんも感じてる。それがわかる。
わたしはその期待感の正体を確かめるために、再びリングを蹴った。
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