クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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中等部編

第十一話 お金ってステキですよね? あ、違いますよ? そういう意味じゃないです。お金って生活に必要じゃないですか。それ以外のry(1)

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   ◆◆◆

  第十一話 お金ってステキですよね? あ、違いますよ? そういう意味じゃないです。お金って生活に必要じゃないですか。それ以外の意味は無いですよ? 勘違いしないでくださいね☆

   ◆◆◆

「どうしてこんなことに……」

 その有様を見て、アイリスは思わずそう言葉を漏らした。
 アイリスの両手には財布が握られ、中がよく見えるように開かれている。
 しかしその中はほとんど空だった。
 なぐさめ程度に小銭が入っているだけ。
 どうしてこうなった?
 その原因を探るべく、アイリスは出費の記憶を掘り起こした。
 まずわかりやすいのは学食だ。
 学校でのお昼はいつもみんなで学食だと決まっている。
 たしかに、お弁当を作ったほうが安くすむ。だがしかし、この出費はやむを得ない。友達づきあいは大事だ。

“アイリスちゃん、ほんとよく食べるね”
“いつも大盛だな”

 クラリスちゃんとルナちゃんの声が記憶の中から響く。
 まあ、たしかに、いつも大盛だけど、それは大した出費じゃないし。追加で小銭を少し失うだけだし。
 
“そんなに食べて、太っちゃったりしないんですか?”

 最近わたし達のグループに加わったシノブちゃんの声が続いて響く。
 よけいなお世話だし。大丈夫だし。部活でちゃんと運動してるし。

「……」

 他に目立つ出費といえば……やはりアレだろうか。
 寮生は夜はもちろん寮で食べるのだが、土日などの休みの日はそれが無い。
 なんでも、寮生の生活能力を自発的に伸ばすためだとか。キーラ理事長の方針だそうだ。
 そのため、寮のすべての部屋に食事を作るためのガス設備が整っている。すごいよお。さすが名門校だ。
 でもわたしはこれを使ったことが無い。わたしは外食ですませているからだ。
 だってしょうがない。この街にはおいしそうな店がいっぱいなのだ。高級店をのぞく全店の全メニューを制覇するという使命がわたしにはあるのだ。
 これは無視できない大きな出費だ。
 しかし財布の中が空になるほどではないはず。

「……」

 と、なると……原因はやっぱりアレかなあ。
 思い当たるものがあったわたしは、クローゼットを開けた。
 中にはかわいい洋服が並んでいる。
 ……ええ、そうです。買いました。高かったけど買いましたとも。 
 だってしょうがない。ステキなお店がいっぱいあるんだもん。さすが都会って感じ。こんな誘惑に勝てるわけないよお。しょうがないにゃあ。
 ……でもさすがに反省しなくては。すっからかんはやばい。
 問題はこれからどうするか。次の給料日(奨学金が振り込まれる日)はいつだっけ?
 ……やっば~い。まだ1週間以上あるよお。土日でも朝ごはんは出るけど、それだけじゃ餓死しちゃうよお。
 どうしよう。友達からお金を借りる? ……ううん、それはダメだ。友達になってまだ日が浅いのに、そんなことをしたら友達でいられなくなっちゃう。
 となると、

「そりゃあ、働いて稼ぐしかないだろ」
「うひゃあ!?」

 突如響いた声に驚いて振り返ると、そこにはヴィーさんがいた。
 いつの間にか部屋のドアは開いており、ヴィーさんは開けたドアにもたれかかりながらニヤついた顔をこっちに向けてる。
 ちょっと! 気配を消して近づかないでくださいよ!
 わたしのこの心の声に、ヴィーさんは答えた。

「いや、消してないが? 普通に歩いてきたが? ノックもしたぞ?」

 それでも勝手に女の子の部屋のドアを開けちゃダメです!
 わたしのそんな心の抗議の声をヴィーさんはやっぱり無視し、部屋の中に歩み入ってきながら口を開いた。
 
「お前は運が良い。良い儲け話があるぞ」

 儲け話? なんですそれは?

「上手くいけば……そうだな、これくらいは稼げると思うぞ」

 言いながらヴィーさんはわたしの机の上からペンとノートを勝手に拝借し、さらさらと数字を書いてそれをわたしに見せた。
 ……!? え?!

「え、え、えぇ?! ゼロがいっぱいついてますけど、こんなにもらえるんですか?」
「ああ、そうだ。お前の働き次第だが、ウソじゃない」

 素晴らしい! そんなのやるに決まって――
 いや待って! まだ何をするのか聞いてない! こんなに稼げる仕事、あやしすぎる! イヤな予感がします!
 ハッ! まさか!?

「まさか、わたしにエッチなお仕事をさせる気ですか! 悔い改めろこの悪魔! 変態!」

 わたしのこの正しき抗議に、ヴィーさんはめんどくさそうに答えた。

「そういうんじゃないから安心しろ。仕事の内容は――」

 そして語られた内容はエッチなものでは無かったが、とんでもないことには変わりなかった。
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