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中等部編

第十話 突然のニンジャ!(4)

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   ◆◆◆

 休み時間――

 シノブは何事も無く時間が過ぎることを願っていた。その可能性は低いとわかっていても願った。
 でもやっぱりダメだった。

「ねえねえ、シノブちゃんって本当にニンジャなの?!」

 シノブの周りにはあっという間に人だかりができ、アイリスは再び同じ質問をぶつけてきた。
 答えられるわけがない。
 だからシノブは質問を返してやりすごすことにした。

「えぇっと……みなさんニンジャというものをご存じなんですか?」

 これにアイリスは頷きを返し、一冊の娯楽雑誌を取り出して見せながら口を開いた。
 
「ニンジャをテーマにしたマンガがあってね、すごい人気なんだよ!」 
  
 ほほう。マンガですか。シノブは強く興味を惹かれた。
 ニンジャというものがこの遠き異国の地にどのような形で伝わっているのか、興味がある。
 一体どんな内容なのか、知っておくのも悪くはないかもしれない。
 そう思ったシノブは尋ねた。

「へえ、なんていうマンガなんですか?」

 アイリスは雑誌を開き、あるページを示しながら答えた。

「これ! 『ギャラクシースター☆ニンジャキューティーズ!』っていうの!」

 うわあ……しょっぱなから強烈なやつがきたなあ……
 強烈すぎてどう反応すればいいかわからないですよ?
 うーん、とりあえず、無難な反応を返しておこう。

「どんな内容なんですか?」

 アイリスは笑顔で答えた。

「えっとね、悪い人達から地球を守るためにニンジャが宇宙からやってくるの! 必殺技がかっこいいんだよー」

 直後にルナがヒーローっぽいポーズをとりながら声を上げた。

「わたしが相手だ! いざ尋常に勝負! とう、変身!」

 宇宙からやってきた? 必殺技がかっこいい? 変身?! まあまあまあまあ、子供向けのマンガだからね、そういう設定は目をつぶるとしましょう。
 でも、「尋常に勝負」ってどういうことだ! ニンジャは正面から正々堂々と戦ったりしないから! 隠密行動からの不意打ちが基本ですから! 
 シノブはそう突っ込みたかったが、ルナが続けて違うポーズを取りながら声を上げた。

「フォトン・ジツ・オウギ! シャイニングディストラクション!」

 フォトン・ジツ!? 火遁とか水遁とかと同じ類のアレってこと?! いやいやいや、フォトンって光魔法とか光子とかの意味だよね!? 「トン」がつけばなんでもいいと思ってるのか!! ていうか、「シャイニングディストラクション」ってなんだ! ニンジャ要素ゼロじゃん!
 シノブがそう突っ込む間も無く、アイリスが再び口を開いた。

「でもね、ニンジャは実は抜け忍びでね、だから同じ里のニンジャ達からも襲われちゃうの」

 抜け忍びってちょっとマニアックな知識だと思うんだけど、他の設定がガバガバっぽいのはどういうことなんだろう。

「でもねでもね、一人でがんばるニンジャに共感して少しずつ仲間が増えていくの! その過程が感動的ですごいんだよー」

 ほほう。設定はともかく、それは王道でいい感じですねえ。
 シノブはちょっと感心したが、直後にぶちこわす質問がアイリスの口から響いた。

「ところでシノブちゃんは伊賀流なの? 甲賀なの? それともシャイガ流?」

 シャイガってなんだ! 「ガ」がつけばなんでもいいと思ってるのか!
 
 このあとも突っ込みたくなるような質問攻めが続いた。
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