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中等部編
第八話 ちっちゃいはかわいい。かわいいは正義。ゆえにちっちゃいは正義(4)
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放課後――
授業は(あんまりわからなかったけど)何事も無く終わり、みんなはそれぞれの部活へと出かけて行った。
そろそろわたしも部活を始めよう。そう思ったわたしはクラリスちゃんに声をかけようとしたけど、クラリスちゃんが口を開く方が早かった。
「アイちゃん、今日はこれから何か用事ある?」
奉仕活動以外には特に何も。まあ、その奉仕活動もまだ具体的な内容が通知されてないから、今日はやらなくていいのかも。
わたしはそう答えようとしたのだけど、それよりも先に別の声が割り込んだ。
「二人ともここにいたのか。ちょうどいい。お前達にやってほしいことがある。これは二人にとってとても大切なことだ。だからついてこい」
その声と共に現れたのはヴィーさんだった。
ついてこいというその言葉を、クラリスちゃんは拒否しようとした。
「すいません、私とアイちゃんはこれから――「顧問にはお前の欠席を既に伝えてある。だから大丈夫だ」
しようとしたのだけど、やっぱり拒否権は無かった。
ついてこいってなんだろう。イヤな予感しかしない。大丈夫だとはまったく思えない。
大切なことだ、とか言われてもまったく信用できない。ヴィーさん気付いてますか? あなたの信用はすでに地の底まで落ちているのですよ?
ていうか、なんでこの人はこんなになんでもかんでも好き勝手できるのだろう。昨日あんなとんでもないことになったのに、この人のメンタルはどうなってるの? 誰かこの疫病神を止めてください!
わたしはそう願ったけど、この場にはルイスさんもキーラさんもいないのであった。
◆◆◆
そして案内された場所は、学園の近くにある裏山だった。
そこには5人の軍人さん達と、数多くの生徒達が待っていた。軍人さんのうちの一人は知ってる人だった。ハットマン軍曹さんだ。
学生達はみな軍人さんと同じ迷彩服を着ている。ちなみにわたしとクラリスちゃんも同じ服装だ。ここに来る前に着替えさせられた。
さらに服装だけじゃなく、みんな同じリュックをしょってる。
このリュック、なにが入っているのか知らないけどかなり重い。20キロくらいある感じがする。
そしてわたしとクラリスが最後の到着だったらしく、ハットマン軍曹は声を上げた。
「よし、これで全員集まったな! 諸君らの参加を感謝する!」
ハットマン軍曹さんは生徒達を見回しながら再び声を上げた。
「諸君! 私が君たちに望むことはただ一つ! 胸を張れる戦士になることだ!」
ん?
「心配はしなくていい! 名門かつ難関であるこの学園に入学できている時点で君たちにはその才能がある!」
あれ? これって、
「君たちにはそれぞれ夢があるはずだ! 競争が激化してきている今の社会は戦場に似ている! その戦場で立派に戦い続けられる戦士を皆で目指そう! 私がそれを全力でサポートする!」
おかしい……この演説、すでに聞いたことがあるような……デジャヴかな?
そのことを突っ込みたかったけど、それよりも聞くべきことがあったのでわたしは手を上げて尋ねた。
「あのう、これから何をやらされるんですか?」
わたしがまだ何も聞かされてないことを伝えると、ハットマン軍曹は答えた。
「これは新しく立ち上げられたサバイバルゲーム部だ! 顧問は私、ハットマンが務める!」
サバイバルゲーム? よくわからないけど、ゲームなんだったら、楽しいことなのかな?
わたしはそう期待したが、直後のハットマン軍曹の言葉はとても不穏なものだった。
「初日の活動内容はこの山でレンジャー訓練だ! だが安心してほしい! 我々が最後までついている! 共に困難を乗り越えていこう!」
ん? れんじゃーくんれん? なんかすごく不穏な感じなんですけど?
◆◆◆
「GO、GO、GO!! ムーブムーブ!」
軍人さんの急かす声に押されるがまま、わたし達は山の中を走った。
まともな道は無い。腰まである草木を踏み倒しながら走る。
「止まるな! いけいけいけ!」
声に押されるままに、池を泳ぎわたる。
「握りとロックを意識しろ! それがロープ登りのコツだ!」
声に急かされるままに、ロープを使って崖を登る。
そんなこんなで初日の部活が終わるころには、みんなヘトヘトになっていた。
わたしは地面の上にあおむけになりながら思った。
あれ……? わたしの青春はいずこへ? こんなはずじゃなかったのに……。
こうしてわたしとクラリスちゃんはサバイバルゲーム部(ガチ)に入部することになった。
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