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中等部編

第七話 警察沙汰で青春大ピンチ危機一髪! (8)

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「……っ! 待て! 私の話を聞け!」

 白衣のオジサンの声と共に、ガシャンガシャンという音が背後から響き始める。
 振り返ると、オジサンが鼻血を流しながら追いかけてきているのが見えた。
 うわー、痛そう……ごめんね。
 事故とはいえ悪いのはわたしなので、心の中で謝りながらわたしは逃げ続けた。
 でも距離が離れない。あのパワーアーマー、見た目の割に速い。いや、あの見た目だから速いのかな? スカスカだもんね。
 でも追い付かれることは無い。高低差を利用すれば簡単に振り切れるだろう。
 わたしがそんなことを考えた直後、オジサンは再び声を響かせた。

「止まらないのであれば、実力行使に移らせてもらう!」

 え? 実力行使?
 その物騒な言葉に振り返ると、パワーアーマーの右腕が前へ突き出されるのが見えた。
 そしてオジサンは叫んだ。

「希望を掴むグロリアスナッコォウ!! 発射ァ!!」

 その言葉と共に、パワーアーマーの右ひじが爆発した。そう見えた。
 その爆発の力によって、ひじから先が発射される。
 ちなみに、爆発によってオジサンの顔は黒く焦げました。ちっちゃな女の子はどこからともなく溶接時に使うフェイスシールドを取り出し、顔を守ってました。かわいい。
 爆発で発射されたものだけど、腕が重いせいか銃弾みたいに速くは無い。今のわたし達なら余裕で目で追える。
 だからわたしは命中の直前にヒラリと回避することができたんだけど、

「!?」

 瞬間、三本しかない無骨なパワーアーマーの指が、わたしの目の前で「ガチャン」と閉じられた。
 わたしを狙った? かよわい女の子になにをするんですか! わたしを捕まえてどうするつもりだ、この変態!
 わたしが「キシャーッ」という感じの表情で怒りの感情を返すと、発射された右腕はワイヤーで本体に繋がっているのが見えた。
 そしてオジサンは手元にあるリールを巻き戻して、発射した右腕を引き戻そうとしていた。
 まさかの手巻き式?! そこはカッコよく自動式にしましょうよ! ちっちゃい女の子も一生懸命まきまきしてる。うん、かわいい。
 これなら余裕そうだなあ、そう思った直後、再びオジサンの声が響いた。

「意地と執念のセカンドシュート!!」

 その声と共に左腕が発射。
 さっきと速度は大差無い。これなら簡単によけれる。ふふん、意地と執念だけじゃどうにもならないんですよ!
 わたしはそう思ったのだけど、

「?!」

 わたしは気付いた。
 手の平に穴が開いてる!
 そして気付いた時にはもう手遅れだった。
 穴から小さな爆発音が響き、網が発射される。
 網は瞬く間に回避不能なほどに広がり、わたしは成す術も無く網に捕まってその場に転んだ。
 でも大丈夫! ヴィーさんが剣を持ってるからね! 網を斬ってくれるはず!
 って、あれー! 振り返りもせずに走り続けてるー! クラリスちゃんは立ち止まってわたしとヴィーさんを交互に見ながらあたふたしてる。かわいい。
 ちょっとヴィーさーん! 捕まってますよー! 気付いてるでしょ! 止まれこの悪魔! 悔い改めろ!
 わたしのその清く真摯な思いが通じたのか、ヴィーさんは止まってこっちに駆け寄り始めてくれた。なんかムカつく表情をしてるけど、いまは許してあげましょう。
 でも急いで! ヴィーさんの剣が速いのは知ってるけど、それでもギリギリな気がする!
 だが、その予想は直後に外れることになった。

「!」

 周囲から赤い点が一気に集まってきた、そして包囲された、と思った次の瞬間には、その赤い点はわたし達の目の前に現れ距離を詰めてきた。

「全員動くな! 手を上げろ!」

 集まってきた軍警察の一人がそう叫ぶと、ヴィーさんは観念した表情で両手を上げた。
 一方、オジサンはなぜか笑いながら口を開いた。

「協力感謝する! この女の子がいれば、わたしの研究は遥かな高みに至るであろう!」

 ハッハッハ、と笑うオジサンに対して、軍警察は銃を突きつけながら声を上げた。

「わけのわからないことを言ってないで、お前もさっさとパワーアーマーから降りて手を上げろ!」

 これに対し、オジサンは「は?」みたいな顔を返した。少し前に車を踏み壊したのをもう忘れちゃったのかな? 短期記憶は大丈夫ですか?
 そしてわたし達は全員警察に取り押さえられた。

「君には黙秘権がある! 不利な証言はしなくていい! そして弁護士を雇う権利もある! もしも経済的な理由で弁護士を雇うことが困難な場合には、公選弁護人を――」

 軍警察さんがすごい勢いでお約束のセリフをしゃべっていたけど、わたしの頭には入ってこなかった。
 お父さん、お母さん、おばあちゃん、ごめんなさい。わたしは警察に捕まってしまいました……
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