クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

文字の大きさ
上 下
69 / 120
中等部編

第七話 警察沙汰で青春大ピンチ危機一髪! (5)

しおりを挟む
 わたしはそう願ったけど、うさんくさい男がさらに言い返したことで、その願いが叶う気配は遠く消えた。

「言いがかりはやめてほしいですね! どうせ、未熟なちびっ子達が追跡されていたに決まってる! 保護者失格ですよ、ヴィーさん!」

 さらに燃え上がりそうなことを言い返したー! しかもどうでもいい火の粉がこっちに振りかかろうとしてるー!

「そっちこそ言いがかりはやめろ! 俺のお守りは完璧だぞ! 俺の感知能力を疑うのか?!」

 んー、微妙な反論! 
 ヴィーさんとうさんくさい男がそんなどうでもいい水掛け論をしているうちに、わたし達は工場のフェンスを乗り越え、街中に入った。
 このまま何事も無く駅まで走れるだろうか?
 ……あ、やっぱりあきらめる気は無いみたい。追いかけてきてる。しかも工場の外に何人かを待機させていたらしく、回り込もうとしてる赤い点がある。
 このままだと待ち伏せされちゃう! どうしよう!
 直後、先頭を走るヴィーさんが声を上げた。

「こっちだ!」

 そう叫びながら狭い路地に入っていったヴィーさんの背中を追う。
 あれ? でも、この先は行き止まりだとわたしの右目には表示されてるんですが。
 その疑問を声に出そうとした瞬間、ヴィーさんは再び声を上げた。

「登るぞ!」

 登る?! 一瞬意味がわからなかったけど、ヴィーさんは直後にそれを実践してみせた。
 上へ跳躍し、細い路地の壁を蹴って反対側の壁に飛び、さらに壁を蹴って上へ登る。
 いわゆるパルクールってやつですか? そんなことを考えながらわたしも同じように壁を登った。
 無事、屋根の上に到着!
 って、クラリスちゃんは?! そう思って振り返ると、クラリスちゃんはしっかりとついてきていた。うさんくさい人もだ。
 ……えぇ。もしかして、こういうことってみんなできることなの? なんか自信無くす。
 でも体力は自信あるもんね! そんなことを考えながら屋根の上を走り出すと、わたしは再び感じ取った。
 ……うわー。警察さんもしっかりとついてきてる。屋根の上に登ってきた。しかも速いよお。自信無くすぅ。
 このままだと追い付かれちゃうなあ。じゃあしょうがないね。ヴィーさん、自首してください。
 と、わたしが提案しようとした瞬間、ヴィーさんは再び叫んだ。

「降りるぞ!」

 言うと同時にヴィーさんは屋根から飛び降り、わたし達も続いた。
 でも路地に降りても状況は変わらない。というか状況悪くなってない? このままだと挟み撃ちにされちゃう。
 なんで降りたんだろう? その疑問を尋ねる前にヴィーさんは行動を起こした。

「こっちだ!」

 ヴィーさんはそう声を上げながら、民家の裏口を蹴破った。
 ええええ!? ちょっと?! なにしてるんですか! まさか!?
 そのまさかだった。ヴィーさんは民家に駆け込んでいった。
 食事中の家主が「え?!」的な視線をこちらに向けている。 
 その視線に対し、ヴィーさんは答えた。

「失礼! 緊急事態なので通らせてもらう!」

 失礼すぎる! 他人の家をショートカットに使うなんて、小学生低学年でも許されないムーブですよ!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

龍の寵愛を受けし者達

樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、 父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、 ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。 それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。 それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。 王家はある者に裏切りにより、 無惨にもその策に敗れてしまう。 剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、 責めて騎士だけは助けようと、 刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる 時戻しの術をかけるが…

偽物の侯爵子息は平民落ちのうえに国外追放を言い渡されたので自由に生きる。え?帰ってきてくれ?それは無理というもの

つくも茄子
ファンタジー
サビオ・パッツィーニは、魔術師の家系である名門侯爵家の次男に生まれながら魔力鑑定で『魔力無し』の判定を受けてしまう。魔力がない代わりにずば抜けて優れた頭脳を持つサビオに家族は温かく見守っていた。そんなある日、サビオが侯爵家の人間でない事が判明した。妖精の取り換えっ子だと神官は告げる。本物は家族によく似た天使のような美少年。こうしてサビオは「王家と侯爵家を謀った罪人」として国外追放されてしまった。 隣国でギルド登録したサビオは「黒曜」というギルド名で第二の人生を歩んでいく。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

異世界立志伝

小狐丸
ファンタジー
 ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。  さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。

【本編完結】転生隠者はまったり怠惰に暮らしたい(仮)

ひらえす
ファンタジー
後にリッカと名乗る者は、それなりに生きて、たぶん一度死んだ。そして、その人生の苦難の8割程度が、神の不手際による物だと告げられる。  そんな前世の反動なのか、本人的には怠惰でマイペースな異世界ライフを満喫するはず……が、しかし。自分に素直になって暮らしていこうとする主人公のズレっぷり故に引き起こされたり掘り起こされたり巻き込まれていったり、時には外から眺めてみたり…の物語になりつつあります。 ※小説家になろう様、アルファポリス様、カクヨム様でほぼ同時投稿しています。 ※残酷描写は保険です。 ※誤字脱字多いと思います。教えてくださると助かります。

転生チートは家族のために~ユニークスキルで、快適な異世界生活を送りたい!~

りーさん
ファンタジー
 ある日、異世界に転生したルイ。  前世では、両親が共働きの鍵っ子だったため、寂しい思いをしていたが、今世は優しい家族に囲まれた。  そんな家族と異世界でも楽しく過ごすために、ユニークスキルをいろいろと便利に使っていたら、様々なトラブルに巻き込まれていく。 「家族といたいからほっといてよ!」 ※スキルを本格的に使い出すのは二章からです。

処理中です...