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中等部編

第六話 わたし、中学生です! (6)

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   ◆◆◆

 女子寮に到着したわたし達はまず管理人に挨拶した。
 管理人から寮の規則などを説明されたあと、わたし達は部屋へと案内された。
 寮は一人部屋であり、意外なことに門限は無かった。
 部屋はキレイだった。ほぼ新品と言えるくらい。
 クローゼットの中とかには、わたしの私物が入っていた。どうやら、ルイスさんが気を使ってわたしの実家から送らせていたらしい。しかもかなり前に。ルイスさんはだいぶ前からわたしの入学を計画していたということになる。
 しかしどうやってわたしの実家に入ったんだろう。しかも、言えば他の物も送ってきてくれるとのこと。……まあ、細かいことは気にしなくてもいいか。
 机の上には教科書などの授業で必要なものが置かれていた。
 とりあえずそれはそのままにしておいた。あえて念を押して言いますけど、わたしは勉強はスキではないのです。
 そしてトイレとお風呂は共同だった。これは予想通りだったけど、一つ予想外なことがあった。
 お風呂がスゴイ。スゴすぎるくらいスゴイ。わたしの深い表現力をもってしても上手く言い表せないくらいスゴイ。
 まるで高級ホテルのお風呂のように広くてキレイ。高級ホテルのお風呂入ったこと無いけど。
 わたしはそんな寮で一日を過ごしたあと、フカフカのベッドの中に入った。
 ドキドキして眠たくないけど、ちゃんと寝なきゃ。青春の一日目がわたしを待ってる!

   ◆◆◆

 そしてわたしはまたあの夢を見た。
 薄青い光が差し込むあの夢。
 場面は実家のわたしの部屋だった。
 鏡のある化粧台の前にわたしは座っている。
 鏡にはもう一人映っていた。おねえちゃんだ。わたしの後ろに立ってわたしの髪にクシを入れている。
 気持ちいい。
 わたしがその気持ちよさに目を閉じかけた瞬間、声が響いた。

「そのままで聞いてほしい。今夜キミをここに呼んだのは、伝えるべきことがあるからなんだ」
 
 顔がわからないあの人の声。
 わたしが言われた通りクシの感触に心をゆだねると、声は続いた。

「キミのお姉さんにある技術を習得してもらった。絶対に役に立つはずだ」

 技術? それはどんな? わたしが尋ねるまでも無く、声は続いた。

「これからは心の読み合いが重要になってくると思う。危ない場面ではそういう技術の優劣が重要になる」
 
 なるほど? その技術とは具体的にどんな? わたしが尋ねるまでも無く、声は続いた。

「一言で言えば人格の切り替えだ。キミはいつでも自由にお姉さんと入れ替わることができる。突然まったく別の思考パターンに切り替わるわけだから、敵を混乱させることができるはずだ」

 ほほー、それはすごいですねえ。
 実はわたしはよくわかっていなかったのだが、とりあえず「うんうんうん」と頷いておいた。
 しかしそれは読まれていたらしく、直後にまた声が響いた。

「今はわからなくても大丈夫。状況や場面に応じた使い方をまとめておいたから。目が覚めたらすべて理解するはずだよ」

 目が覚めたら全部身についている!? 睡眠学習というやつですか?! 楽して技術が習得できるなんて、なんて素晴らしい!
 わたしがそんな心の声を響かせると、その人は笑った。ような気がした。
 そしてその人はその笑みのまま声を響かせた。ような気がした。

「では今日はこれでお別れとさせていただくよ。忙しない(せわしない)かもしれないが、まだまだやるべきことが多くてね。それではまたいつかの夢で――」

 その言葉と共にわたしの意識は少しずつ薄らぎ、そしてわたしは再び完全な眠りへと落ちた。
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