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中等部編
第六話 わたし、中学生です! (5)
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うながされるままに、わたし達はドアを開けて中へと入った。
理事長室と書かれたその部屋の内装は、廊下の雰囲気と大差は無かった。
家具はどれも格式高いが、古い。骨董品にしか見えないものもある。
本棚には分厚い本がびっしりと並んでいる。ほんとにこんなに読んでるのかな? なんて思っちゃったりするけど、それは口には出さない。でもたぶん思考を読まれてると思うけど、そんなことは気にしない。
そして部屋の中央にある立派な机には、理事長らしき人が座っていた。
女性だ。明らかに若い。多めに見ても20台後半くらいに見える。
端正な顔立ちだ。男装できそうなくらいカッコよくてキレイ。
女性はそのキレイな顔立ちを崩さぬまま、口を開いた。
「ようこそキーラ魔法学園に。私が理事長のキーラです」
キーラ? 学園の名前と同じ?
この学園は古い学園だ。わたしでも知ってるちょっとした歴史がある。設立者のキーラさんがまだ生きてるはずはない。
じゃあ名前が同じなのはたまたま? 偶然? そんな疑問を抱いた直後、ブルーンヒルデさんが教えてくれた。
「ここの理事長は就任と同時に『キーラ』の名を引き継ぐのよ。戸籍の名を変えるわけじゃないけどね。人に名乗るときは『キーラ』を使うの」
じゃあ、本名は別にちゃんとあるんだ。ヴィーさんと同じか。そんなことをわたしが思ったあと、キーラ理事長さんはわたしに向かって口を開いた。
「もう知っているとは思うけど、あなたは特例という扱いでこの学園に入学することになります。学園があなたを保護します」
ありがとうございます! よろしくお願いします! 甘えられるところにはとことん甘えていきます!
わたしがそんなことを考えた直後、キーラさんは釘を刺すように言った。
「ですが、あなたにはこの学園の生徒らしく振舞うことを要求します」
そう言われても、わたしにはあまり実感が湧かなかった。とりあえず真面目っぽく振舞っておけばいいのかな? その程度にしか思わなかった。
この思いも読まれたのを感じたけど、キーラ理事長さんは特に感情をゆらすこと無く、続けて口を開いた。
「難しいことは要求しません。学生らしく、節度を守っていただければそれで結構です。それともう二つ、許可してほしいことと、約束してもらいたいことがあります。それはあなたを特例として迎え入れるための条件でもあります」
許可してほしいことと、約束してほしいこと? なんでしょう? わたしが尋ねるより早く、キーラ理事長さんは口を開いた。
「まず一つ、あなたには監視がつきます。これを許してほしい。そしてもう一つは、我々の監視を振り切るようなことはしないこと。これを約束してほしい」
この条件に、わたしは、
「わかりました!」
と、即答した。
監視がつく? 問題ありません! わたしを守るためには必要でしょう! よくわかります! オッケーオッケーです!
わたしのこの即答に、キーラ理事長さんは薄い笑みを浮かべながら口を開いた。
「よかった。では早速だけど、その監視役を紹介しておくわ」
キーラ理事長さんがそう言ったのとほぼ同時に、わたしはそれの接近を感じ取った。
その気配はこの城に入った時から感じ取れていた。
城全体を包んでいる大きな気配。
その一部が凝縮し、気配を濃くしながら近づいてくる。
そしてその気配は開けっ放しの窓から入り込んできた。
それは濃い霧のような精霊だった。
霧は部屋に入ると同時にさらに凝縮し、人の形となった。
それは男の人だった。30代くらいに見える。
服装は軍服っぽい礼装って感じ。あの船で隊長さん達が着ていた服に似ている。軍服に装飾をいっぱいつけた感じだ。
そんなオシャレで立派な格好をした精霊さんは、わたしに向かって声を響かせた。
“この街の守り神の一人、アランだ。主にこの城の警備を担当している。よろしく”
当然のようにわたしは驚いた。
守り神!? この学校にはそんなすごいものまでいるのかあ。さっすが名門!
ん? この人がわたしの監視役ってこと? 神さまがわたしを守ってくれるということ?
ありがとうございます! よろしくお願いします! 甘えられるところにはとことん甘えていきます!
わたしのそんな思考は当然のように読まれており、アランさんは笑顔で声を響かせた。
“ハハ。明るくて正直でいいね。キミの期待に応えられるように頑張るよ”
その声が響き終わった直後、キーラ理事長さんがアランさんに尋ねた。
「他の連中は?」
他の連中? 他にも神さまがいるの? わたしがそんな疑問を抱くと、またしてもブルーンヒルデさんが教えてくれた。
「アランの他に三人の守り神がいるわ。その三人には街の警備を担当してもらってるのよ」
ブルーンヒルデさんの説明が終わるのを見てから、アランさんはキーラ理事長さんに答えた。
“彼らは来られないって、さっき連絡が来たよ。街で問題を起こしている住人がいるみたいだ”
「そう。ならしょうがないわね。まあ、顔合わせは日を改めてからでもかまわないでしょう」
キーラ理事長さんはそう言ったあと、わたしに向かって口を開いた。
「それではこれから寮へ案内するわ」
理事長室と書かれたその部屋の内装は、廊下の雰囲気と大差は無かった。
家具はどれも格式高いが、古い。骨董品にしか見えないものもある。
本棚には分厚い本がびっしりと並んでいる。ほんとにこんなに読んでるのかな? なんて思っちゃったりするけど、それは口には出さない。でもたぶん思考を読まれてると思うけど、そんなことは気にしない。
そして部屋の中央にある立派な机には、理事長らしき人が座っていた。
女性だ。明らかに若い。多めに見ても20台後半くらいに見える。
端正な顔立ちだ。男装できそうなくらいカッコよくてキレイ。
女性はそのキレイな顔立ちを崩さぬまま、口を開いた。
「ようこそキーラ魔法学園に。私が理事長のキーラです」
キーラ? 学園の名前と同じ?
この学園は古い学園だ。わたしでも知ってるちょっとした歴史がある。設立者のキーラさんがまだ生きてるはずはない。
じゃあ名前が同じなのはたまたま? 偶然? そんな疑問を抱いた直後、ブルーンヒルデさんが教えてくれた。
「ここの理事長は就任と同時に『キーラ』の名を引き継ぐのよ。戸籍の名を変えるわけじゃないけどね。人に名乗るときは『キーラ』を使うの」
じゃあ、本名は別にちゃんとあるんだ。ヴィーさんと同じか。そんなことをわたしが思ったあと、キーラ理事長さんはわたしに向かって口を開いた。
「もう知っているとは思うけど、あなたは特例という扱いでこの学園に入学することになります。学園があなたを保護します」
ありがとうございます! よろしくお願いします! 甘えられるところにはとことん甘えていきます!
わたしがそんなことを考えた直後、キーラさんは釘を刺すように言った。
「ですが、あなたにはこの学園の生徒らしく振舞うことを要求します」
そう言われても、わたしにはあまり実感が湧かなかった。とりあえず真面目っぽく振舞っておけばいいのかな? その程度にしか思わなかった。
この思いも読まれたのを感じたけど、キーラ理事長さんは特に感情をゆらすこと無く、続けて口を開いた。
「難しいことは要求しません。学生らしく、節度を守っていただければそれで結構です。それともう二つ、許可してほしいことと、約束してもらいたいことがあります。それはあなたを特例として迎え入れるための条件でもあります」
許可してほしいことと、約束してほしいこと? なんでしょう? わたしが尋ねるより早く、キーラ理事長さんは口を開いた。
「まず一つ、あなたには監視がつきます。これを許してほしい。そしてもう一つは、我々の監視を振り切るようなことはしないこと。これを約束してほしい」
この条件に、わたしは、
「わかりました!」
と、即答した。
監視がつく? 問題ありません! わたしを守るためには必要でしょう! よくわかります! オッケーオッケーです!
わたしのこの即答に、キーラ理事長さんは薄い笑みを浮かべながら口を開いた。
「よかった。では早速だけど、その監視役を紹介しておくわ」
キーラ理事長さんがそう言ったのとほぼ同時に、わたしはそれの接近を感じ取った。
その気配はこの城に入った時から感じ取れていた。
城全体を包んでいる大きな気配。
その一部が凝縮し、気配を濃くしながら近づいてくる。
そしてその気配は開けっ放しの窓から入り込んできた。
それは濃い霧のような精霊だった。
霧は部屋に入ると同時にさらに凝縮し、人の形となった。
それは男の人だった。30代くらいに見える。
服装は軍服っぽい礼装って感じ。あの船で隊長さん達が着ていた服に似ている。軍服に装飾をいっぱいつけた感じだ。
そんなオシャレで立派な格好をした精霊さんは、わたしに向かって声を響かせた。
“この街の守り神の一人、アランだ。主にこの城の警備を担当している。よろしく”
当然のようにわたしは驚いた。
守り神!? この学校にはそんなすごいものまでいるのかあ。さっすが名門!
ん? この人がわたしの監視役ってこと? 神さまがわたしを守ってくれるということ?
ありがとうございます! よろしくお願いします! 甘えられるところにはとことん甘えていきます!
わたしのそんな思考は当然のように読まれており、アランさんは笑顔で声を響かせた。
“ハハ。明るくて正直でいいね。キミの期待に応えられるように頑張るよ”
その声が響き終わった直後、キーラ理事長さんがアランさんに尋ねた。
「他の連中は?」
他の連中? 他にも神さまがいるの? わたしがそんな疑問を抱くと、またしてもブルーンヒルデさんが教えてくれた。
「アランの他に三人の守り神がいるわ。その三人には街の警備を担当してもらってるのよ」
ブルーンヒルデさんの説明が終わるのを見てから、アランさんはキーラ理事長さんに答えた。
“彼らは来られないって、さっき連絡が来たよ。街で問題を起こしている住人がいるみたいだ”
「そう。ならしょうがないわね。まあ、顔合わせは日を改めてからでもかまわないでしょう」
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