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中等部編
第六話 わたし、中学生です! (2)
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門をくぐっても、目的のお城まではかなり距離があった。
門から続く大通りには多くの家屋が立ち並んでいる。ただの住居だけでは無く、お店も見える。
これはまるで――いや、城のそばにあって城壁に囲まれているのだから、これは間違い無く城下街と呼べるものだろう。たぶん。
そんなことを考えていると、ヴィーさんが口を開いた。
「城壁に囲まれたこの街すべてが、学園の管理下にある。言わば、これは学園都市と呼べる街だ」
ヴィーさんはそう説明してくれたが、わたしは上の空だった。
だってしょうがない。目の前の光景がすごいんだもん。
精霊がいっぱいいる。まるで街の住人であるかのように、あちこちにいる。
犬型の精霊が大人と並んで歩いている。散歩なのかな?
猫型の精霊が屋根の上で寝ている。精霊は寝なくてもいいはず。あれはきっと見張り番かなにかだろう。
熊のような大型の精霊が二足歩行で――いや、顔はクマっぽくない。なんだろう、よくわからない。なんか親しみやすい顔をした知らない動物だ。
そして空には大小様々な鳥型の精霊が――うわ、ちっちゃなドラゴンみたいなのも飛んでる。あれらはきっと、情報伝達用の精霊だろう。
人間よりも精霊のほうがはるかに多いのでは? そんな感想を抱いた直後、さらに異質なものが目に入った。
それは初めて見たものでは無かった。
あの船で、甲板の上で戦っていたパワーアーマーさんだ。
蒸気を噴き散らしながらズシンズシンと、通りを歩いている。
わたしがその重厚なカッコよさに惹かれていると、ヴィーさんの声が響いた。
「キーラ魔法学園は軍部と繋がりがあり、大学にはそれ系の学部もある。実験用の施設も充実しているからな。ああいうのは珍しくないぞ」
ヴィーさんの説明が終わった直後、今度は頭の中に知らない声が響いた。
“ここは初めてですね? よろしければ道案内をしてさしあげましょうか?”
声のほうに振り返ると、そこには制服っぽい格好をした女の人が立っていた。
……ん? え?! この人、透けてる! これ精霊だ!
うわすごい。ガイド役の精霊なんてものがいるのかあ。
わたしがちょっと感動していると、ヴィーさんがわたしの代わりに答えた。
「けっこうだ。俺はこの街をよく知ってる」
その言葉に対し、精霊の女の人は小さなお辞儀を返し、元の立ち位置に歩いて戻り始めた。
精霊だから歩く必要なんてないはずなのに、細かいところまで人間っぽく作ってあるなあ。
わたしがそう感心していると、新しい音が耳に届いた。
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