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第五話 わたし、島を出ます! (19)
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アイリスの見た目をした何者かが部屋に戻ったあともヴィーはまだ廊下に残っていた。
部屋に戻る気になれなかったからだ。
それはブルーンヒルデも同じだった。
ゆえにブルーンヒルデは確認するようにヴィーに尋ねた。
「さっきの話、どう思う?」
その点についてはヴィーは思考を隠していない。二人の思いは共有されている。聞く必要は無い。
それでもあえて尋ねたのは、声に出すことで事の重要性を煽りつつ、話し合いにもちこむためだ。
ヴィーはこの申し出に乗り、答えた。
「……奴は俺達の『真名』を知っていた。当時の出来事もだ。もしかしたら、本物かもな」
これに、ブルーンヒルデは慎重な言葉を返した。
「ただ長生きしてるだけの古いやつというだけの可能性もあるわよ」
ヴィーは頷きを返し、口を開いた。
「それは確かにその通りだ。奴はただの同期の他人かもしれない。だが、アイリスの中にいたという事実だけでも、信じるには十分だと俺は思ってる」
この言葉に、ブルーンヒルデは薄く笑みを浮かべながら口を開いた。
「フフ。めずらしいわね。こういう時あなたは大抵疑うのに」
「そうだったか? 俺はそんなになんでも疑ってたか?」
「ええ。そうよ」
はっきりと断言するようなブルーンヒルデのその返事に対し、ヴィーは、
「そうか。まあ、それでもいいさ」
どうでもいいさ、というような感じで相槌を打ったあと、ヴィーは疑わない理由について説明した。
「少なくとも俺には信じる根拠がもう一つある。『お前は俺よりも後からここに来た』から知らないだろうが、あいつが言ったセリフの中には、俺を含めた一部のやつしか知らない秘密に触れるものがあったんだよ」
興味が湧いたブルーンヒルデはそれについて聞き返した。
「そういえば、それっぽいことを言っていたわね。あなたはそれについて心を隠してるみたいだけど、その秘密とやらはわたしにも話せないほどの内容なの?」
ヴィーは首を振って答えた。
「申し訳ないが、プライベートな内容なんだ」
たぶん教えてくれないだろうな、という予想が的中したゆえに、ブルーンヒルデは、
「あ、そう」
と、淡白な返事を返し、ヴィーに向けて背を向けながら口を開いた。
「じゃあ、わたしはもう部屋に戻るわ」
だが、ヴィーはまだ話したいことがあった。
だからヴィーはその離れようとする背に声をかけた。
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