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第五話 わたし、島を出ます! (13)
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海の中から飛び出してきたデカブツの正体は、巨大なスライムのような特定の形を持たない精霊だった。山のように大きいスライムだ。
同時にぶつかってきた波に船体が少し揺らされる。
衝突の衝撃はそれだけだったけど、わたし達は予想通り丸のみにされた。
だけど、わたし達を包み守っているブルーンヒルデさんの花は、丸のみにされても崩れることは無かった。
ここからどうなるの? わたしがそう思った瞬間、花に変化が変化が起きた。
花びらの表面がでこぼこになり始めた、そう見えた直後、そのでこぼこは鋭いトゲとなって伸び始めた。
スライムの体に食い込みながら枝分かれし、根を張っていく。
根はスライムの体を食い殺しながら進んでいた。苦悶の感覚が伝わってきた。
その痛みからスライムは逃げようとしたけど、根を張られたせいで動けない。
離れるには根を張られた部分を切り捨てるしかない。
スライムは迷い無く、それを実行しようとした。
しかしそれよりもこちらの精霊の動きのほうが早かった。
根が加速し、さらに深く食い進み始める。
それだけでは無かった。
わたし達を包むことでつぼみのような形になっていた花が、開花するように先端部分を少し開いたのだ。
開くと同時に、中から大量のトゲ付きのツルが飛び出した。
覆いかぶさっているスライムを食い破り、天に向かって伸び生える。
飛び出した大量のツルはうごめきながらからまり、一つの形を編み上げた。
それは人の形に見えた。
特徴的なふくらみがあることから、女性を模したものに見えた。お風呂場で見たブルーンヒルデさんに似てると、わたしは思った。
その巨大な女性型の人形は意思を持ったかのように動き始め、右手を前へ突き出した。
その動作と共に、場にいる全員の頭の中に『行け』という言葉が響いた、いや、脳裏から浮かんできた。
浮かんできたのは声だけでは無かった。
映像が脳裏に流れた。焼けつくようにはっきりと理解できた。
そして映像とまったく同じことが、次の瞬間から始まった。
開いたつぼみの先端から、大量のツルがあふれるように伸び出し、逃げようとするスライムの上に覆いかぶさっていく。
大きな獲物を網で捕らえた、そんな感じだった。
だけどそれはただの網では無かった。
すべてがトゲまみれの、バラのいばらで編んだかのような網。
そのトゲも先と同じく、伸びて食い込み、スライムの体を食い進んで根を張っていった。
これはもう逃げられない。そう思った。
けども、
「!? 逃げられちゃう!」
わたしは感じ取った。
スライムが根を張られた表面部分をすべて切り捨てて、中身だけ脱出しようとし始めたのを。
しかし直後、ヴィーさんが笑みを浮かべながら口を開いた。
「いいや、完璧なタイミングで完璧な援軍が来てくれた。だから俺達の勝ちだ」
援軍? そんなものどこに? 思わずそう聞き返しそうになった。
意識を集中して感知を研ぎ澄ませば、それは見つけられた。
それははるか上空にいた。
V字型の編隊を組んで近づいてくるそれらは、戦闘機の部隊だった。
同時にぶつかってきた波に船体が少し揺らされる。
衝突の衝撃はそれだけだったけど、わたし達は予想通り丸のみにされた。
だけど、わたし達を包み守っているブルーンヒルデさんの花は、丸のみにされても崩れることは無かった。
ここからどうなるの? わたしがそう思った瞬間、花に変化が変化が起きた。
花びらの表面がでこぼこになり始めた、そう見えた直後、そのでこぼこは鋭いトゲとなって伸び始めた。
スライムの体に食い込みながら枝分かれし、根を張っていく。
根はスライムの体を食い殺しながら進んでいた。苦悶の感覚が伝わってきた。
その痛みからスライムは逃げようとしたけど、根を張られたせいで動けない。
離れるには根を張られた部分を切り捨てるしかない。
スライムは迷い無く、それを実行しようとした。
しかしそれよりもこちらの精霊の動きのほうが早かった。
根が加速し、さらに深く食い進み始める。
それだけでは無かった。
わたし達を包むことでつぼみのような形になっていた花が、開花するように先端部分を少し開いたのだ。
開くと同時に、中から大量のトゲ付きのツルが飛び出した。
覆いかぶさっているスライムを食い破り、天に向かって伸び生える。
飛び出した大量のツルはうごめきながらからまり、一つの形を編み上げた。
それは人の形に見えた。
特徴的なふくらみがあることから、女性を模したものに見えた。お風呂場で見たブルーンヒルデさんに似てると、わたしは思った。
その巨大な女性型の人形は意思を持ったかのように動き始め、右手を前へ突き出した。
その動作と共に、場にいる全員の頭の中に『行け』という言葉が響いた、いや、脳裏から浮かんできた。
浮かんできたのは声だけでは無かった。
映像が脳裏に流れた。焼けつくようにはっきりと理解できた。
そして映像とまったく同じことが、次の瞬間から始まった。
開いたつぼみの先端から、大量のツルがあふれるように伸び出し、逃げようとするスライムの上に覆いかぶさっていく。
大きな獲物を網で捕らえた、そんな感じだった。
だけどそれはただの網では無かった。
すべてがトゲまみれの、バラのいばらで編んだかのような網。
そのトゲも先と同じく、伸びて食い込み、スライムの体を食い進んで根を張っていった。
これはもう逃げられない。そう思った。
けども、
「!? 逃げられちゃう!」
わたしは感じ取った。
スライムが根を張られた表面部分をすべて切り捨てて、中身だけ脱出しようとし始めたのを。
しかし直後、ヴィーさんが笑みを浮かべながら口を開いた。
「いいや、完璧なタイミングで完璧な援軍が来てくれた。だから俺達の勝ちだ」
援軍? そんなものどこに? 思わずそう聞き返しそうになった。
意識を集中して感知を研ぎ澄ませば、それは見つけられた。
それははるか上空にいた。
V字型の編隊を組んで近づいてくるそれらは、戦闘機の部隊だった。
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