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第五話 わたし、島を出ます! (10)

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 床を蹴って回避行動を取りながら剣と隊長さんを使って迎撃を行う。
 だけど触手の数はあまりにも多く、わたしの両足は触手に捕まってしまった。
 直後、

「っ!」

 両足に激痛が走り、わたしはその場に倒れた。
 そしてわたしの足は動かなくなった。
 足に力が入らない。
 なぜか。わたしの感知能力はその答えをすぐに見つけてくれた。

(信号の伝達を邪魔されてる!?)

 筋肉への命令が届かない。
 だけど、魔力の経路はすべては遮断されていない。
 少し遠回りすれば魔力を目的地に流し込める。そうすれば動ける!
 わたしは即座にそれを実行しようとしたのだけれど、

「!!」

 その実行よりも黒い染みからの追撃のほうが早かった。
 腰に、背中に、肩に、腕に、次々と触手が巻き付く。
 次にどこが狙われるのか、敵の本命はどこなのかはわかっていた。
 それは顔面。
 だからわたしは隊長さんの剣で防御しようとしたのだけど、放たれた触手の数は一本では無かった。
 わたしのあたまを丸ごと包もうとするかのような数。
 隊長さんの剣だけで捌ききれる数じゃ無かった。
 だからわたしは回避行動を取った。
 だけどわたしにできた動きは、片腕で顔をかばいながら上半身をひねることだけだった。
 それでもなんとか顔面への直撃はさけることができた。
 でも、一本の触手がわたしの首に巻き付いた。

「っ! ぃや、あああ!」

 触手が首に根を張り、何かが流れ込んでくる感覚に、わたしは叫び声を上げることしかできなかった。
 その痛みと共にわたしは感じ取った。

(お、ねえちゃん……?!) 
 
 おねえちゃんがわたしの中に流れ込んできている。わたしはそう感じた。
 その感覚と共に全身から力が抜けていく。
 隊長さんの剣もやられた。もう抵抗できない。
 わたし死んじゃうの? そんな思いが脳裏に走った直後、

「……!?」

 誰かが走ってきた音と共に、わたしに巻き付いていた触手はすべて斬り落とされた。
 解放されると同時に抱きかかえられる。
 助けにきてくれた? 誰が?
 ヴィーさんかブルーンヒルデさんかと思いながら見上げると、そこにはまったく違う顔があった。
 わたしを助けてくれたのはルイスさんだった。
 あの時の隊長さんのように、片腕でわたしを抱きかかえたまま、もう片方の腕で剣を振るい、襲い掛かってくる触手を切り伏せる。
 その剣はまるで宝石のように――いいや、これはたぶん本物の宝石だ――その刀身は七色に輝いていた。
 その輝きが太陽のように強さを増すと同時に、その刀身から白い雷が放たれる。
 雷が空気を裂く音と共に、ルイスさんの声が響いた。

「少し気持ち悪いかもしれないけど、我慢して!」

 直後にその言葉の理由は明らかになった。
 ルイスさんの袖の中から、胸元から、服のあらゆる隙間から大量のムカデが伸び現れ、わたしの体に巻き付き始めたからだ。
 確かに気持ち悪かった。でも嫌悪感はすぐに消えた。それがルイスさんの精霊であることが感じ取れたからだ。
 すると間も無く、わたしの体から痛みが引いていくのを感じた。ムカデさんが触手に攻撃されたところを治療してくれているようだった。
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