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第五話 わたし、島を出ます! (6)
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その言葉と共にそれは始まり、ヴィーとブルーンヒルデは感じ取った。
強い魔力の流れ。
発生源はやはり手の平。
手にこめられた魔力量はいたって平凡。
だが、手を包んでいる手甲に流れ込んだ瞬間、魔力は瞬間的かつ爆発的に加速した。
手から腕へ、肩から背中へと、光のような速さで駆け上る。
そして背中のふくらみに流れ込んだ魔力は何かを回し始めた。高速の回転が感じ取れた。
それと同時に、別のものが動き始めたのも感じ取れた。
その感覚はヴィーがよく知るものであった。
蒸気機関車のエンジンが動く感覚だ。
ゆえにヴィーは心の声を響かせた。
(この試作型、やはり従来の原動機とのハイブリッド型か。ルイスは魔力のみでの駆動を目指していたが、まだまだクリアすべき課題が残されているようだな)
ゆえにMPAという呼称は正確では無い。名付け直すならば、HB-MPAあたりが無難だろうか。
(いや、もっとも的確な表現はHB-PAか。だが、ルイスはMにこだわっている。ゆえにこの呼び名が選ばれることは無いだろうな)
そんなことを考えながら、ヴィーはエネルギーの流れと働きを感知能力で追った。
上半身は蒸気機関で動かし、下半身は魔力で動かしているようだ。
ならば、ある特徴がすぐに表れるはず。
ヴィーのその予想は直後に的中した。
鎧の隙間から蒸気が噴き出し始めたのだ。
中は蒸し風呂だろう。着用者はかなりつらいはず。
背中の放熱板はこの熱を逃がすためだ。
旧式のパワーアーマーはこの熱の問題が常につきまとっていた。あまりの熱量に着用者がダウンしてしまうため、長時間の運用は困難だった。
ハイブリッドになってマシにはなっているだろうが、それでもかなり暑いはず。
ゆえにヴィーはその放熱性能に注目したが、ブルーンヒルドは別の問題に注目していた。
ブルーンヒルデはそれについて口を開いた。
「魔力と蒸気の力を使って油を圧縮し、その圧力を利用して各関節を動かしているようだけど、魔力瓶の性能はあまり良くないようね。だから重い蒸気機関を搭載している。この考え方で合ってる?」
それは独り言のようなしゃべり方であったが、ヴィーはちゃんと答えた。
「ああ、それで正解だ。現状の魔力瓶の性能はお世辞でも悪くないとは言えない。デカイわりに魔力の蓄積量が少ないし、保存できる時間も長いとは言えない」
その返事に対しは、ブルーンヒルドは素直な感想を返した。
「あれは本当に戦力として信用できるの?」
ヴィーは過去のデータをもとに答えた。
「精霊使いの損耗率が大きく下がったという実績があるから、その点については疑う必要は無い。かわりに運用コストが大幅に上がったがな。だが優秀な精霊使いは魔法使いよりも重要だから、大金をかけてでも守る価値があるのさ」
その言葉に、ブルーンヒルデはまたも「ふうん」と返した。
その「ふうん」については共感できる部分があった。
ゆえにヴィーは続けて口を開いた。
「まあ、俺としてもあの試作型がどれほど戦えるのかについては興味がある。お手並み拝見といこう」
ヴィーがそう言った直後、
「機銃の射程圏内まであと十秒! 甲板上にいる兵士達は戦闘に備えよ!」
隊長格と思われる兵士の声が響いた。
強い魔力の流れ。
発生源はやはり手の平。
手にこめられた魔力量はいたって平凡。
だが、手を包んでいる手甲に流れ込んだ瞬間、魔力は瞬間的かつ爆発的に加速した。
手から腕へ、肩から背中へと、光のような速さで駆け上る。
そして背中のふくらみに流れ込んだ魔力は何かを回し始めた。高速の回転が感じ取れた。
それと同時に、別のものが動き始めたのも感じ取れた。
その感覚はヴィーがよく知るものであった。
蒸気機関車のエンジンが動く感覚だ。
ゆえにヴィーは心の声を響かせた。
(この試作型、やはり従来の原動機とのハイブリッド型か。ルイスは魔力のみでの駆動を目指していたが、まだまだクリアすべき課題が残されているようだな)
ゆえにMPAという呼称は正確では無い。名付け直すならば、HB-MPAあたりが無難だろうか。
(いや、もっとも的確な表現はHB-PAか。だが、ルイスはMにこだわっている。ゆえにこの呼び名が選ばれることは無いだろうな)
そんなことを考えながら、ヴィーはエネルギーの流れと働きを感知能力で追った。
上半身は蒸気機関で動かし、下半身は魔力で動かしているようだ。
ならば、ある特徴がすぐに表れるはず。
ヴィーのその予想は直後に的中した。
鎧の隙間から蒸気が噴き出し始めたのだ。
中は蒸し風呂だろう。着用者はかなりつらいはず。
背中の放熱板はこの熱を逃がすためだ。
旧式のパワーアーマーはこの熱の問題が常につきまとっていた。あまりの熱量に着用者がダウンしてしまうため、長時間の運用は困難だった。
ハイブリッドになってマシにはなっているだろうが、それでもかなり暑いはず。
ゆえにヴィーはその放熱性能に注目したが、ブルーンヒルドは別の問題に注目していた。
ブルーンヒルデはそれについて口を開いた。
「魔力と蒸気の力を使って油を圧縮し、その圧力を利用して各関節を動かしているようだけど、魔力瓶の性能はあまり良くないようね。だから重い蒸気機関を搭載している。この考え方で合ってる?」
それは独り言のようなしゃべり方であったが、ヴィーはちゃんと答えた。
「ああ、それで正解だ。現状の魔力瓶の性能はお世辞でも悪くないとは言えない。デカイわりに魔力の蓄積量が少ないし、保存できる時間も長いとは言えない」
その返事に対しは、ブルーンヒルドは素直な感想を返した。
「あれは本当に戦力として信用できるの?」
ヴィーは過去のデータをもとに答えた。
「精霊使いの損耗率が大きく下がったという実績があるから、その点については疑う必要は無い。かわりに運用コストが大幅に上がったがな。だが優秀な精霊使いは魔法使いよりも重要だから、大金をかけてでも守る価値があるのさ」
その言葉に、ブルーンヒルデはまたも「ふうん」と返した。
その「ふうん」については共感できる部分があった。
ゆえにヴィーは続けて口を開いた。
「まあ、俺としてもあの試作型がどれほど戦えるのかについては興味がある。お手並み拝見といこう」
ヴィーがそう言った直後、
「機銃の射程圏内まであと十秒! 甲板上にいる兵士達は戦闘に備えよ!」
隊長格と思われる兵士の声が響いた。
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