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第四話 地獄は突然やってくる (6)

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   ◆◆◆

 気付けば、白く染まった視界は暗転していた。
 倒れている。真っ暗だけど、感覚でわかる。
 そして足に違和感がある。
 その違和感は直後におぞましさに変わった。

「!!」

 見ると、わたしの足には黒い触手が巻き付いていた。
 そして視界が真っ暗なのは夜だからでは無かった。
 黒い触手の群れに囲まれているからだ。
 完全に覆い包まれている。逃げ道は無い。
 そして触手はわたしの足から腰へと這い上がってきた。
 気持ち悪い。そして焼け付くように痛い。
 ぬるぬると、腹から胸まで覆いつくされる。

「いや! やだぁ!」
 
 無駄と知りながらも、わたしは振り払うようにもがいた。
 すると直後、

「うおおおおぉっ!」

 あの隊長さんが黒い触手を切り裂いて飛び込んできた。
 触手まみれになりながらも、わたしを抱き上げて脱出する。
 そしてわたしは思い出した。
 これは船で実際にあったこと。忘れていた記憶だと。
 だからこれは夢なのだ。
 それに気づいたのと同時にすべては停止し、場面から色が失われ、そしてすべてが白く塗りつぶされた。
 その白い世界の中でさらに思い出した。現実のことだ。早く目を覚まさないと。
 でも、目を覚ましたところでわたしに何かできるのだろうか? 
 助けを呼ぶこともできない。隊長さんのような人は現れない。
 ならば、このまま気絶していたほうがいいのではないだろうか?
 ……いいや、それは違う。そう思う。あきらめるのはイヤだ。
 だからわたしの願いは一つだけ。
 隊長さんのようになりたい。せめて勇気が欲しい。何もできなくとも隊長さんのように最後まで勇敢でありたい。
 そう思った直後、声が聞こえた。

“ならば私の名を呼ぶといい”

 その声と共にわたしはその名を思い出した。
 だからわたしはその名を叫んだ。

“――――――ッ!”

 だけど、わたしの声は白に吸い込まれたかのようにまったく響かなかった。
 しかし相手には届いた。わたしにはそれがわかった。はっきりと感じられたからだ。
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