クトゥルフの魔法少女アイリスの名状しがたき学園生活

稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)

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第三話 V・A (7)

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   ◆◆◆

 翌日――

 わたしは森の中に呼び出された。
 場所は完全な茂みの中。
 野生動物が作ったと思われる細い道を頼りに、わたしはその場所にやってきたのだけど、

「ヴィーさん? どこですか?」

 ヴィーさんは待ち合わせ場所にはいなかった。
 おかしいなあ。ヴィーさんはわたしよりも先に家を出たはずなんだけど。わたしの朝のシャワーが長すぎて怒ったんだろうか?
 それとも場所を間違えたのかなあ? でもわたしの感知能力はここだって言ってるんだけどなあ。
 そんなことを考えながら周囲を見回した瞬間、

「!?」

 ぞくりと、背中を何かが駆け上がった。
 強烈な悪寒が沸き上がる。
 違う。駆け上がったんじゃない。ぶつけられたんだ。それに反応して悪寒が生じたんだ。
 それに気付くのと同時に、わたしは振り返りながら剣を抜き放った。
 背後から迫っていた悪寒の正体と、わたしの剣がぶつかり合って火花を散らす。
 見ると、殺意の正体はヴィーさんだった。
 ヴィーさんは振り抜いた大太刀を鞘に戻しながら口を開いた。

「とりあえず、殺意に反応はできるか。ギリギリだったが、まずは良し」

 そう言ってヴィーさんは腰のホルスターに左手を伸ばし、

「ではこれはどうだ?」

 迷うことなく、ソレを抜いてわたしに向けた。
 銀色に輝く大型の拳銃。装填されているのは象も殺せる大薬莢(だいやっきょう)。
 直後に引き金が引かれ、火薬の炸裂音が響いた。

(え?)

 銃で撃たれた、その事実をすぐに認識できなかった。
 右肩が熱い。痛い。
 その痛みでようやくわたしは何が起こったのかを理解した。
 慌てて左手を右肩に当てる。
 穴は開いてない。かすっただけ。
 それを確認した瞬間、次の銃声が響いた。
 今度はふとももに熱い痛みが走る。
 痛みの大きさでわかる。これも当たってない。かすっただけ。
 しかしそれに安堵する間も無く、ヴィーさんは冷たく言った。

「次は当てるぞ」

 その言葉と共に、再びぶつけられた。
 悪寒が背中を駆け上がるほどの強烈な殺意。
 その悪寒に突き動かされるように、わたしは全力で地面を蹴っていた。
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