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25.ふっきれる
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もどかしい状態が数秒間。続く。
次回へ続く、では終われないから困る。しかも体感よりずっと長い。
逃げろと言われたけれど、今もまだ足がすくんでる。動けない。まずい。このままじゃかなりやばい。
どうにか意を決して、
「ジルに……騎士様に任せて逃げよう! コルフェ、いくよ。馬車に戻って!」
怯えて私にすがり付いているコルフェを振り返り見る。
「で、でもっ、神父さまが……!」
コルフェは神父が変貌して暴れている様子にただただうろたえていた。
でも。とか言ってる場合じゃないんだけど、でもを連呼しながら震えている彼と目があって。少し私も不安が伝染しそうになってしまう。
いくら魔法の才能に恵まれて将来的には国内トップクラスに強い騎士になるコルフェといえど、今の彼にはまだ戦う意思や技術なんてない。
無力でか弱い小さな子供だ。私と同じ、守られる側の人間なんだ。
未来の魔法剣士様に想いを馳せても無駄だという事実を実感する。
むしろコルフェは私が私が守らなきゃいけない儚い存在なんだ。
でも、彼は儚いだけではなかった。
コルフェには私とは決定的に違うところがあった。
手を引いて逃げようと声を掛けても、従わない。
臆病な心には引っ張られずコルフェはその場に残ろうとする意思と理由を持ってる。
それは、彼の瞳に映って揺れている景色にある。
「だめです、メイカさん。た、助けなきゃ……! 神父さまをこのままにできない、です!」
はっきりと声に出した彼が私の手を振りほどく。
目の奥のサファイアブルーの中では絶え間なく恐れて揺れているのに、心の中では揺るがない気持ち。
私にはないそれがコルフェをこの場に留めさせている。
「コルフェ……」
私としては神父の体が魔物の呪いで人狼にされようと、ジルに斬られて死んでしまおうと。どうなっても正直よかった。
神父は悪人で、畜生野郎だ。最低のクズだ。
人狼になって人々に疎まれて、このまま勝手にざまぁされればせいせいする。そのくらいの存在。
私にとってはコルフェを利用していた気持ち悪くて憎い奴だし、当然の報いを受けているだけだと思う。
でも、コルフェはそんな風には思ってない。
(コルフェ……あなたって本当に……)
お人好しというか。情にアツいというか。どう表現したらいいかわかんないけど、とにかく。
助けなきゃ。と、いう彼の言葉に私は気付かされてしまった。
そして、同時に思い出した。
私の推しの本当の性格を。
彼はまちがいなく私が惚れ込んだ
──≪推し≫だ。
私には出会った瞬間から嫌な印象しかなかった神父でも、コルフェにとってはお世話になった人。
短い間でも食事や寝床をあたえてくれて、面倒をみてくれた恩人なんだ。
その前提があるのをすっかり忘れてしまってた。
自分の私的な感情で神父のことを見捨てる私に、コルフェの必死な表情は大事なことを思い出させてくれた。
神父がどうなろうといい。なんて事は考えちゃいけなかったんだ。
だって、コルフェがこんなに一生懸命なんだから。
純真無垢で世間を知らない少年だ。
今の彼を見てそう笑う人もいるかもしれないし、実際私がそうなりかけていた。
自分が奴にされていた嫌なことを飲み込んで、神父のことを心配するなんて。
自分を騙していた加害者をかばうようなこと、私だったらできない。
推しがかわいそうな目にあうのを拒否して、救い出してしまった私だったら。絶対に許せないし。
コルフェは今の私じゃあ理解できないほど優しい。
本気で神父をもとに戻そうと考えている。でも、どうすればいいのか。
一般人の私たちに何ができるのか。
(そうだ……! 例のチート級アイテムがあるじゃない!)
閃いた。私はポケットを探り、小瓶を取り出す。
透けた青い瓶。中に透明な液体が入っているそれを、掲げてみる。
次回へ続く、では終われないから困る。しかも体感よりずっと長い。
逃げろと言われたけれど、今もまだ足がすくんでる。動けない。まずい。このままじゃかなりやばい。
どうにか意を決して、
「ジルに……騎士様に任せて逃げよう! コルフェ、いくよ。馬車に戻って!」
怯えて私にすがり付いているコルフェを振り返り見る。
「で、でもっ、神父さまが……!」
コルフェは神父が変貌して暴れている様子にただただうろたえていた。
でも。とか言ってる場合じゃないんだけど、でもを連呼しながら震えている彼と目があって。少し私も不安が伝染しそうになってしまう。
いくら魔法の才能に恵まれて将来的には国内トップクラスに強い騎士になるコルフェといえど、今の彼にはまだ戦う意思や技術なんてない。
無力でか弱い小さな子供だ。私と同じ、守られる側の人間なんだ。
未来の魔法剣士様に想いを馳せても無駄だという事実を実感する。
むしろコルフェは私が私が守らなきゃいけない儚い存在なんだ。
でも、彼は儚いだけではなかった。
コルフェには私とは決定的に違うところがあった。
手を引いて逃げようと声を掛けても、従わない。
臆病な心には引っ張られずコルフェはその場に残ろうとする意思と理由を持ってる。
それは、彼の瞳に映って揺れている景色にある。
「だめです、メイカさん。た、助けなきゃ……! 神父さまをこのままにできない、です!」
はっきりと声に出した彼が私の手を振りほどく。
目の奥のサファイアブルーの中では絶え間なく恐れて揺れているのに、心の中では揺るがない気持ち。
私にはないそれがコルフェをこの場に留めさせている。
「コルフェ……」
私としては神父の体が魔物の呪いで人狼にされようと、ジルに斬られて死んでしまおうと。どうなっても正直よかった。
神父は悪人で、畜生野郎だ。最低のクズだ。
人狼になって人々に疎まれて、このまま勝手にざまぁされればせいせいする。そのくらいの存在。
私にとってはコルフェを利用していた気持ち悪くて憎い奴だし、当然の報いを受けているだけだと思う。
でも、コルフェはそんな風には思ってない。
(コルフェ……あなたって本当に……)
お人好しというか。情にアツいというか。どう表現したらいいかわかんないけど、とにかく。
助けなきゃ。と、いう彼の言葉に私は気付かされてしまった。
そして、同時に思い出した。
私の推しの本当の性格を。
彼はまちがいなく私が惚れ込んだ
──≪推し≫だ。
私には出会った瞬間から嫌な印象しかなかった神父でも、コルフェにとってはお世話になった人。
短い間でも食事や寝床をあたえてくれて、面倒をみてくれた恩人なんだ。
その前提があるのをすっかり忘れてしまってた。
自分の私的な感情で神父のことを見捨てる私に、コルフェの必死な表情は大事なことを思い出させてくれた。
神父がどうなろうといい。なんて事は考えちゃいけなかったんだ。
だって、コルフェがこんなに一生懸命なんだから。
純真無垢で世間を知らない少年だ。
今の彼を見てそう笑う人もいるかもしれないし、実際私がそうなりかけていた。
自分が奴にされていた嫌なことを飲み込んで、神父のことを心配するなんて。
自分を騙していた加害者をかばうようなこと、私だったらできない。
推しがかわいそうな目にあうのを拒否して、救い出してしまった私だったら。絶対に許せないし。
コルフェは今の私じゃあ理解できないほど優しい。
本気で神父をもとに戻そうと考えている。でも、どうすればいいのか。
一般人の私たちに何ができるのか。
(そうだ……! 例のチート級アイテムがあるじゃない!)
閃いた。私はポケットを探り、小瓶を取り出す。
透けた青い瓶。中に透明な液体が入っているそれを、掲げてみる。
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