上 下
21 / 29

21.かかせない人物

しおりを挟む
 そうか。そうだったのか。

(なるほどねぇ……)

 ≪シュテルフスタインⅡ≫は続編で、世界観や舞台が同じだから数年前のお話にあたる無印のキャラも何人かいるんだった。
 当然のように目の前に現れた新キャラ。
 否、旧キャラ。
 そこのところも忠実な世界というわけで。

(でも、ジルが何でこんなところに?)

 ジルは≪シュテルフスタインⅡ≫にもサブキャラとして続投出演しており、教会騎士になったコルフェの剣の指南役で上官にあたる人物になっている。
 コルフェを攻略する上では結構絡みが発生するし、前作から出番が続投されているキャラの中では立場上、登場頻度も優遇されている。

 ≪シュテルフスタイン≫シリーズは乙女系恋愛ゲームを普段あまりしない……というお姉さま方にも意外に人気がある。
 その理由の一つが、このジルというキャラのお陰だと私は思っていた。

 見た目での人気も勿論そこそこある。初代無印の人気投票では二位を博した男だ。流石といえよう。
 ジルは性格も明るく気さくで、他の攻略キャラたちとの絡みがとにかく多い。
 そのお陰で、主人公に自分を重ねて没入し恋愛ゲームを楽しむ人だけではなく、キャラ同士の掛け合いを見て関係性を楽しむ人たちにも受け入れられている。

 包み隠さず言うならば、ジルはボーイズラブを嗜(たしな)む腐女子の方々にも好まれていて、主人公以外とのカップリングも多種多様。よりどりみどり。
 何を隠そう私自身もコルフェを攻略するルート内で何度も見せられることになる、ジルとコルフェの師弟関係のイベントが大変ドツボ。ハマるしかなかった。
 ≪シュテルフスタイン≫ファンが自由に想い描いた二人の世界の妄想を、漫画にしたり小説にしたりして発表してくれる人もいた。

 それは、趣味や嗜好が違う他人(なかま)からの供給。
 コルフェの全てが知りたい私にとってはそれらも立派な研究資料。
 別視点で見るコルフェの存在にも興味があって、某所で開催された夏の大会場で薄いご本を何冊か購入させて頂いたほどです。

 そんな思い入れもあるわけなのだけれど、今は無印に近い頃の姿で私の視線の先にジルがいる。
 青年コルフェの隣で相棒のように剣を振るって戦う先輩騎士とは違う。まだ出会う前の若々しい姿で。

(よく考えたら私のせいで教会との繋がりがなくなっちゃったコルフェって、このままだと騎士にもならないし、ジルにも出会わなくなっちゃうんじゃ……)

 そうだとしたら二人を出会わせて繋がりを発生させる機会は今しかない。
 今も選択肢は出てこないけれど、これはゲームの神様が与えてくれた絶好のチャンスなのかもしれない。

「メイカさん? どうかしたんですか?」

「行こう。コルフェ」

「い、行くって?!」

「あの騎士様に話があるの!」

 ジルのことを思い出している私は一体どんな顔をしていたんだろう。
 不思議そうに見上げているコルフェの手を握り、私は勢いのままに馬車を降りた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

最推しの悪役令嬢にお近づきになれるチャンスなので、王子の婚約者に立候補します!

あゆみノワ★9/3『完全別居〜』発売
恋愛
マリエラの最推し、ダリアは悪役令嬢である。しかし、ただの悪役令嬢ではない。プロの悪役令嬢である――。これは、悪役令嬢ダリアと王子の恋のお話、ではなく。そんなダリアを最推しとする少女マリエラの、推し活の記録である。  孤児院育ちで人生捨て鉢になっていた少女マリエラが、とある伯爵令嬢と運命的な出会いを果たし、最推しになったお話です。ちなみに主人公マリエラは、可憐でかわいらしい見た目に反して、超毒舌かつたくましい少女です。  甘いお話をご期待の方は、ご注意くださいませ。    ※恋愛要素は、ほぼほぼありません。GL要素もありません。  ※小説家になろう様でも掲載中です。

貴族としては欠陥品悪役令嬢はその世界が乙女ゲームの世界だと気づいていない

白雲八鈴
恋愛
(ショートショートから一話目も含め、加筆しております) 「ヴィネーラエリス・ザッフィーロ公爵令嬢!貴様との婚約は破棄とする!」  私の名前が呼ばれ婚約破棄を言い渡されました。  ····あの?そもそもキラキラ王子の婚約者は私ではありませんわ。  しかし、キラキラ王子の後ろに隠れてるピンクの髪の少女は、目が痛くなるほどショッキングピンクですわね。  もしかして、なんたら男爵令嬢と言うのはその少女の事を言っています?私、会ったこともない人のことを言われても困りますわ。 *n番煎じの悪役令嬢モノです? *誤字脱字はいつもどおりです。見直してはいるものの、すみません。 *不快感を感じられた読者様はそのまま閉じていただくことをお勧めします。 加筆によりR15指定をさせていただきます。 *2022/06/07.大幅に加筆しました。 一話目も加筆をしております。 ですので、一話の文字数がまばらにになっております。 *小説家になろう様で 2022/06/01日間総合13位、日間恋愛異世界転生1位の評価をいただきました。色々あり、その経緯で大幅加筆になっております。

転生できる悪役令嬢に転生しました。~執着婚約者から逃げられません!

九重
恋愛
気がつけば、とある乙女ゲームの悪役令嬢に転生していた主人公。 しかし、この悪役令嬢は十五歳で死んでしまう不治の病にかかった薄幸な悪役令嬢だった。 ヒロインをいじめ抜いたあげく婚約者に断罪され、心身ともに苦しみ抜いて死んでしまう悪役令嬢は、転生して再び悪役令嬢――――いや悪役幼女として活躍する。 しかし、主人公はそんなことまっぴらゴメンだった。 どうせ転生できるならと、早々に最初の悪役令嬢の人生から逃げだそうとするのだが…… これは、転生できる悪役令嬢に転生した主人公が、執着婚約者に捕まって幸せになる物語。

[完結]転生したのは死が間近の女王様!? ~超可愛い弟が王になれるよう平凡な女王が抗う奮闘記~

秋刀魚妹子
恋愛
 龕灯 真理〖がんどう まり〗は女性として日本で生まれ、平凡な人生を送っていた。  しかし、大人しい内気な性格が災いし、友人や恋人に恵まれず。 容姿にコンプレックスがあったマリが表舞台で活躍する事は無かった。  THEオタク街道まっしぐらだったのだ。  そのまま成人し、平凡な会社に就職したマリはオタ活の幸せな日々を過ごしていたが、とある日に会社の飲み会で全てが終わった。  お酒を普段飲まないマリに、パワハラ上司が無理矢理飲ませ泥酔させたのだ。  そして、初めて泥酔したマリは無敵だった。 パワハラ上司を言葉の暴力でボコボコにしてしまう。  しかし、帰宅途中に足がふらつきそのまま道路に倒れトラックに轢かれ死んでしまったのだ。  走馬灯の最後に、信じてもいない神に願った。  願わくば、あの大好きな乙女小説の主人公みたいな人生を送りたいと。  そして、恋をし。  幸せな日々を送りたいと。  次にマリが目覚めた時には、願いが叶ったのかその乙女小説の世界に!?  でも、マリとしての記憶が残ったまま転生したのは最悪な事に小説の序盤で滅びるモブ王国のお姫様!?  容姿はめちゃくちゃ可愛いけど、既に王と王妃は死んでて私が女王になれって!?  マリの下には超絶可愛い弟が!  最悪だけど、最高な事にその弟はマリの推しだった!!  小説では、国が滅んだ後に主人公ハーレムに拾われ立派なイケメンになる予定の弟君だ!  それに、このお姫様は小説では女王になった後1年後に原因不明で死去していた!  抗うマリに容赦なく襲いかかる滅亡フラグ! 果たしてマリは可愛い弟の為に国を残存させれるのか!?  痛快爽快の恋愛コメディ、内政も恋愛も酔って解決泥酔無双!    ※ この作品に登場する人物、団体、地名は全て架空でありフィクションです。  ※ご都合主義と逆ハーレムが苦手な方はご注意下さい。  少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました

みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。 日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。 引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。 そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。 香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

申し訳ないけど、悪役令嬢から足を洗らわせてもらうよ!

甘寧
恋愛
この世界が小説の世界だと気づいたのは、5歳の頃だった。 その日、二つ年上の兄と水遊びをしていて、足を滑らせ溺れた。 その拍子に前世の記憶が凄まじい勢いで頭に入ってきた。 前世の私は東雲菜知という名の、極道だった。 父親の後を継ぎ、東雲組の頭として奮闘していたところ、組同士の抗争に巻き込まれ32年の生涯を終えた。 そしてここは、その当時読んでいた小説「愛は貴方のために~カナリヤが望む愛のカタチ~」の世界らしい。 組の頭が恋愛小説を読んでるなんてバレないよう、コソコソ隠れて読んだものだ。 この小説の中のミレーナは、とんだ悪役令嬢で学園に入学すると、皆に好かれているヒロインのカナリヤを妬み、とことん虐め、傷ものにさせようと刺客を送り込むなど、非道の限りを尽くし断罪され死刑にされる。 その悪役令嬢、ミレーナ・セルヴィロが今の私だ。 ──カタギの人間に手を出しちゃ、いけないねぇ。 昔の記憶が戻った以上、原作のようにはさせない。 原作を無理やり変えるんだ、もしかしたらヒロインがハッピーエンドにならないかもしれない。 それでも、私は悪役令嬢から足を洗う。 小説家になろうでも連載してます。 ※短編予定でしたが、長編に変更します。

処理中です...