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生ハム原木がやってきたぞ、生ハムとは戦争である

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タイトルの通りである。
台湾の友人を一週間程度泊めることになったのだが、そいつと共に生ハムの原木はやってきた。
むしろ生ハムが到着する方が一日早かったので、生ハムの前乗りである。

SNSで定期的に話題になったり、コストコで販売されていたり、と一般家庭に生ハム原木があることも目新しくなくなってきただろうか。
それでも実際の身の上話となると大事件である。
ルームシェアをしている都合、家自体は3LDKと広めではあるが、それでも嫌がらせの様な大きさと存在感を放っていた。

日本のキッチンは生ハム原木を設置しておくことを前提に設計されていないのである。
ワンルームではまず無理だろう。
もしあなたがワンルームに住んでいて、友人が生ハム原木を持ってこようとしているならば、止めた方が良い。
寿命一年の人間が「死ぬまでにやりたいことリスト」として挙げていても、ちょっと断るレベルである。

さて、そんな化け物相手に立ち向かっていくことになるわけだが、まず刃がギザギザとした小型のナイフを手に、生ハムを削いでいく。
原木は全体が脂でコーティングされている為、これをはがして肉までたどり着かなくてはならない。

表面は食べられないコーティング油、その下に豚の脂・所謂ラード、そして肉となっている為、乾燥せずに熟成できるという理屈は大変よくわかるのだが、なかなか大変なカット作業である。

そして出てきた生ハム。確かに味は良い。
脂もたっぷりで柔らかい。自分の手で切り出すのも楽しい。

そういって盛り上がれるのは三日目までだ。
友人は楽しい時期を堪能し、ちょっと食べたら満足して、たっぷり残った原木を私の家に置いて帰っていった。

その翌日から戦いが始まる。
何故、生ハム原木とは戦争であるのか。

まず生ハムは乾燥する。
脂で包まれているので乾燥しないというのは上で書いた通りだが、切り口は別だ。
露出した表面から乾燥してしまう。
日本の湿度ではきっちりラップをすると逆にカビてしまう可能性があるので、余った肉で蓋をする。
当然乾燥する、なので食べる際には改めて表面の乾燥した部分を削いでいく必要がある。

そもそも疑問なのだが、みんな生ハムってそんなに好きですか。
毎日毎食たべるほど好きでしょうか。
日本の食生活からしても毎日食べないと思うのだ。

そうなるともう生ハムは乾燥しまくる。
ふと生ハム食べたいなと思っても、まずはひたすらジャーキーみたいになった肉をこそぎ落とすことから始まる。

もちろん奥の方の肉はしっとり柔らかなままなのだが、手軽にすぐ食べれない手間によって、手を出すのがだんだん億劫になっていく。
ちなみにカット自体もすごく難しい。
私は指を三回切った。時間もすごいかかる。

そして、日本において生ハムといえばパック売りのスライスされた物をイメージすると思うのだが、そちらはかなり食べやすい風味をしていると思う。理想的な厚さにならない点や切り出した直後の違いもあるが、そもそも脂の臭みが全然違う。

強烈な脂の風味は旨さであると同時に独特のクセでもある。
本場の味、と慣れ親しんだ日本向けの味、どちらが優れているわけではないが毎日食べ続けるのには疲れてしまう味ではあった。

だが目の前には肉の塊がある。戦わなければならない。
薄く切り出すのは大変で億劫だとは言え、旨味と塩味の塊となったタンパク質だ。
有効活用しない点はない。

というわけでまず大きめにカットしていく。切れ端は生ハムなので随時つまみ食いする。
切り出した塊を最終的にみじん切りにする。
薄く切り出していくよりもだいぶ楽だ。それに骨から外せばジップロックで冷蔵保存もできるので利便性も高い。

それでみじん切りにした生ハムをトマトソースにぶち込んでパスタソースを作る。
生が売りの物を加熱するのもバカみたいな気もするが、塩気の強さと脂の臭みをトマトが上手く受け止めてくれた。
これはかなり上手くいった。

こうして先日、長きに渡る戦いを終えて生ハムを食べ切った次第である。
ありがとう友人、もし次があるのならば今度は二倍の量を食べて帰ってくれ。
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