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魔物
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あくびをしながら、大きく伸びをする魔物。
艶やかな漆黒の毛並み。ぴんっと聳え立つ耳。血を連想させる深紅の瞳。ショッとした体躯。蛇のように長い尻尾。
魔物でありながら、物怖じするほどの気品を漂わせている。
「しゃ、喋った」
カルミアはただただ混乱していた。
魔物って喋るっけ?いや、喋らないはずだ。...喋らないはずだよな?
何処か自身なさげなのは、カルミアは十八年間籠の鳥だった、いわば超がつくほどの世間知らずだからだ。
もしかして知らないだけで魔物って喋る?
ま、まさかあ。
そもそもてっきり魔族でも召還されると思っていたのに魔物だって?
ーーきっと彼はカルミアの力になってくれるはずです。
カルミアは、ヨハンの手紙の一節を思い出していた。
カルミアは思わず、力になるって何処がだよ!というか彼って誰だよと心の中で鋭いツッコミを入れた。
「カルミア様、凄い光でしたけど何事ですの」
駆け寄ってきたターニャが、カルミアの視線の先にいる魔物を捉えるなり、歓喜の声を上げた。
「きゃー!!可愛い!アーダルベルト北部ローゼルフト地方に生息するケット・シーじゃありませんの!」
どうやらこの魔物はケット・シーというらしい。
ターニャは興奮冷めやらぬと言った様子で説明してくれた。
「魔物でありながら、その愛らしい姿にファンも多いんですのよ。でも警戒心が強くて中々お目にかかれないんですの!個体数も少なくて、絶滅魔物種に認定もされてますのよ」
「へ、へえ」
「でもおかしいですわね。ケット・シーは、雪のような真っ白な毛並みに、青空のような碧眼をしてるはずなんですけど」
まるで魔族のようですわ、とターニャは言った。
するとケット・シーはまた喋った。
『小娘、中々感がいいな』
ケット・シーは優雅に自分の腕を舐めて、顔を洗っている。
「...ターニャ、魔物って喋るっけ?」
「....いいえ?」
「なんでこのケット・シーは喋るんだと思う?」
「カルミア様、疲れてるんですの?」
ターニャは怪訝そうに首をかしげた。
「喋ってないですわよ?」
「....え?」
でもさっき小娘って。
『俺の声が聞こえるのか?』
緋色の瞳が興味深そうに細められた。
艶やかな漆黒の毛並み。ぴんっと聳え立つ耳。血を連想させる深紅の瞳。ショッとした体躯。蛇のように長い尻尾。
魔物でありながら、物怖じするほどの気品を漂わせている。
「しゃ、喋った」
カルミアはただただ混乱していた。
魔物って喋るっけ?いや、喋らないはずだ。...喋らないはずだよな?
何処か自身なさげなのは、カルミアは十八年間籠の鳥だった、いわば超がつくほどの世間知らずだからだ。
もしかして知らないだけで魔物って喋る?
ま、まさかあ。
そもそもてっきり魔族でも召還されると思っていたのに魔物だって?
ーーきっと彼はカルミアの力になってくれるはずです。
カルミアは、ヨハンの手紙の一節を思い出していた。
カルミアは思わず、力になるって何処がだよ!というか彼って誰だよと心の中で鋭いツッコミを入れた。
「カルミア様、凄い光でしたけど何事ですの」
駆け寄ってきたターニャが、カルミアの視線の先にいる魔物を捉えるなり、歓喜の声を上げた。
「きゃー!!可愛い!アーダルベルト北部ローゼルフト地方に生息するケット・シーじゃありませんの!」
どうやらこの魔物はケット・シーというらしい。
ターニャは興奮冷めやらぬと言った様子で説明してくれた。
「魔物でありながら、その愛らしい姿にファンも多いんですのよ。でも警戒心が強くて中々お目にかかれないんですの!個体数も少なくて、絶滅魔物種に認定もされてますのよ」
「へ、へえ」
「でもおかしいですわね。ケット・シーは、雪のような真っ白な毛並みに、青空のような碧眼をしてるはずなんですけど」
まるで魔族のようですわ、とターニャは言った。
するとケット・シーはまた喋った。
『小娘、中々感がいいな』
ケット・シーは優雅に自分の腕を舐めて、顔を洗っている。
「...ターニャ、魔物って喋るっけ?」
「....いいえ?」
「なんでこのケット・シーは喋るんだと思う?」
「カルミア様、疲れてるんですの?」
ターニャは怪訝そうに首をかしげた。
「喋ってないですわよ?」
「....え?」
でもさっき小娘って。
『俺の声が聞こえるのか?』
緋色の瞳が興味深そうに細められた。
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