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転生

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転生先はカルミア・ロビンズという男の子だったが、前世と違って幸せな人生を送っているかと言えば、そうでもなかった。彼もまた不幸な人生を歩んでいた。どうやら桜の花びらのような美にすべての運を使い果たしたらしい。
娼館を営む夫婦の間に生まれたカルミアは、幼い頃から商品にされてきた。娼館で商品、と言えば、何をして来たかは言わずとも分かるだろう。男でありながら、その美しい容貌に客足は絶えなかった。大事な人気商品が逃げださないように、四六時中世話人がへばり付いていたせいで、カルミアも樹と同じく、外の世界に触れた事がなかった。
しかしそんなカルミアに転機が訪れる。カルミアが十五歳の時だった。
 
娼館が火事にあった。生き物のように唸る炎に飲まれる美しい館。館の中はさながら地獄のようだった。炎の海に包まれ、黒煙が渦を巻いている。体の内側から炙られるような熱気に支配され、呼吸が出来ない。火の粉を纏った小屋組みが降り落ちる中、優雅に着飾った女子供が逃げ惑っている。
 
地獄のような光景だったが、カルミアはふと思った。――これはチャンスだと。
館の主人である両親も、見張り役である世話人もいない。彼らは商品を置いて、我先にと逃げ出してしまった。
 
この騒動の中、一人くらい居なくなっても、誰も気付かない。もしかしたら炎に焼かれ、死んでしまったと思ってくれるかもしれない。こんな絶好の機会は二度とない。
 
”自由になりたい。”
 
カルミアはそう思うや否やすぐに行動に移した。火傷する事すら恐れず、火の海に飛び込み、なんとか館から抜け出した。娼館を取り囲んでいた森の中を走って、走って、とにかく走った。
炎が反射して、ほんのり赤みがかったあの時の空が今でも忘れられない。ついに籠の鳥は自由を得たのだった。
 
そこからはよく覚えてない。
 
煤こけたボロボロの体で何日間も歩き続けてたどり着いた先は、幸運にも王都のスラム街だった。しかしお金はなく、頼れる人もいない。ましてや十五年間、籠の鳥だった子供だ。食べ物を購入するには金貨と交換しなくてはいけないという概念すらない世間知らずが、この先一人で生きていけるわけがなかった。
案の定、カルミアはゴミ溜めのような路地裏で餓死寸前になっていた。そんな死にかけのカルミアを拾ってくれたのは、なんとこの国の皇太子様だった。
 そして月日は巡り、十八歳になった現在はというと…。
――何故か王宮の一室で監禁されていた。
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