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王都と漆黒の大迷宮
第56話 地獄のケーキパーティー
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マリアさんの作ってくれた昼食を食べてから、いよいよ例のモノを取り出すことにした。
「ケーキパーティーの幕開けだあー!!」
私はバッグの中からケーキが入った箱を取り出すと、封を丁寧に開けてお皿に取り分けていく。
「とりあえず20個ぐらいでいいかな♪」
色鮮やかなケーキがテーブルを彩っていく様子を、シィーは呆れ顔で眺めながら、
「とりあえずって数じゃねえの......。テーブルがケーキまみれなの」
「大丈夫でしょ! 7人もいるんだから1人3個食べるとしたら、これでも足りないぐらいだよ?」
そう言うと、チカは鼻歌を歌いながら上機嫌でケーキをテーブルに並べていく。
シィー、マリー、メリィはお互い顔を見合わせると、チカからそっと距離をとった。
「──ねえ。なんでチカはこんなにテンションが高いの?」
「わかんないニャ。よっぽどケーキが好きなのかもしれないニャ。」
「ん。私もそう思う。馬車の中でもちょっとおかしかった」
「そういえばそうだったの!」
「一番悲惨なのはジョン爺ニャ......。ほら、あれをみるニャ」
ジョンさんの方を見てみる。
一見平静を装っているが、よくみると頬を引きつらせて動揺している様子が見て取れた。
「ジョン爺がどうかしたの?」
「──甘いモノが大嫌いなのニャ......。」
「馬鹿なの? 食べなきゃいい話なの!」
「そうもいかないニャ。客人が用意したものを食べないのは失礼にあたるニャ。ジョン爺は執事としてのプライドが高いから断れないニャ」
「ん。それも3個用意されてる」
シィーは両手でニヤけた口元を押さえて、笑いを堪えるかのように肩を僅かに揺らす。
「ぷぷっ! それはいい事を聞いたの!」
「「えっ?」」
マリーとメリィはシィーの意外な反応に驚いて、間の抜けた声を漏らした。2人の視線の先で、シィーがニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべていた。
◆◇◆◇
「ふっー。これで終わりっと♪」
チカは満足げにそう言うと、テーブルの上に並べられた沢山の美味しそうなケーキをうっとりした表情で眺める。
やっと念願のケーキが食べられる。ふふっ♪ いったいどんな味がするのか想像するだけで、涎が止まらなくなっちゃいそうだよ♪
「じゃあみんなで食べよっか! まだまだおかわりもあるからね!」
「では、わたしはお茶をみなさまに用意しますね。」
マリアさんがお茶を運んでみんなの席に配っていくと、みんなはそれぞれテーブルからケーキを選んでフォークで口元に運んでいく。
──わたしはチーズケーキにしようかな♪
私はチーズケーキの先端をフォークで一口サイズに切って口元に運ぶ。
「んっ~♪ 甘くてすごく美味しいっ!」
チーズの風味と甘味が口いっぱいに広がって、まるで溶けるように口の中から消えていく。
元の世界で食べるチーズケーキより美味しいかもしれない。異世界にきてよかったー!!
みんなに視線を向けてみると、美味しそうにケーキを食べながら談笑している。ケーキを買ってきて本当によかった。ニッケルの町から王都にきたり、メリィちゃんの迷宮事件があったりして皆それぞれ大変だったもんね。
またこうやってみんなで笑い合いながら、穏やかな時間を過ごせて本当によかった......。
みんなの様子を眺めながら、想いを巡らせていると、シィーが可愛らしい小さなフォークを抱えながら、私の方へ飛んできた。
「シィーどうしたの?」
「チカー! 私3個も食べられないの!」
そりゃそうだよね。よく考えたら、シィーの小さな体にケーキ3個は無理がある。
まあー、もし余ったら私が全部食べるつもりだったから、無理しないでいいんだけどね!
私が無理しないでっとシィーに言葉をかけようとした瞬間、シィーはそれを遮るように言葉を続ける。
「そこで提案があるの!」
「提案? 明日食べるとか?」
「ちがうの!ジョン爺にあげたいの!」
「────ッ!?」
それを聞いたジョンさんが、ビクッと身体を震わせたかと思うと、信じられないものを見るような目でシィーを見つめた。
「なんでジョンさんにあげたいの?」
「迷宮に行くときに3人のぬいぐるみを作って迷惑をかけたの......。だからジョンさんに食べてほしいの」
そう言うと、シィーは申し訳なさそうにしながら瞳を伏せる。
私はシィーとマリーちゃんが迷宮から帰ってきてから、ジョンさんにこっぴどく叱られてたのを思い出した。
「うん。いいんじゃない?」
「やったのー!」
シィーはニコニコと嬉しそうにしながらケーキの乗ったお皿をジョンさんの元へ運んでいく。
「さっさ、ジョン爺。美味しく召し上がれなの!」
「うぐっ。あ、ありがとうございます。」
叱られてるときはムッとした表情で口を尖らせてたから、てっきり内心怒ってるのかと思ってたけど、シィーもいいとこあるじゃん。
私が感心しながらはシィーの背中を見つめていると、ふとマリーちゃんとメリィちゃんが視界に映る。
顔を青ざめながら怯えたように2人で抱き合って、ジョンさんとシィーの方向を見つめていた。
どうしたんだろ。
いったい何に怯えてるの?
──このときシィーがニマニマした邪悪な笑みを浮かべていたことを知ったのは、しばらく経ってからのことだった。
ジョンさんごめんなさい......。
「ケーキパーティーの幕開けだあー!!」
私はバッグの中からケーキが入った箱を取り出すと、封を丁寧に開けてお皿に取り分けていく。
「とりあえず20個ぐらいでいいかな♪」
色鮮やかなケーキがテーブルを彩っていく様子を、シィーは呆れ顔で眺めながら、
「とりあえずって数じゃねえの......。テーブルがケーキまみれなの」
「大丈夫でしょ! 7人もいるんだから1人3個食べるとしたら、これでも足りないぐらいだよ?」
そう言うと、チカは鼻歌を歌いながら上機嫌でケーキをテーブルに並べていく。
シィー、マリー、メリィはお互い顔を見合わせると、チカからそっと距離をとった。
「──ねえ。なんでチカはこんなにテンションが高いの?」
「わかんないニャ。よっぽどケーキが好きなのかもしれないニャ。」
「ん。私もそう思う。馬車の中でもちょっとおかしかった」
「そういえばそうだったの!」
「一番悲惨なのはジョン爺ニャ......。ほら、あれをみるニャ」
ジョンさんの方を見てみる。
一見平静を装っているが、よくみると頬を引きつらせて動揺している様子が見て取れた。
「ジョン爺がどうかしたの?」
「──甘いモノが大嫌いなのニャ......。」
「馬鹿なの? 食べなきゃいい話なの!」
「そうもいかないニャ。客人が用意したものを食べないのは失礼にあたるニャ。ジョン爺は執事としてのプライドが高いから断れないニャ」
「ん。それも3個用意されてる」
シィーは両手でニヤけた口元を押さえて、笑いを堪えるかのように肩を僅かに揺らす。
「ぷぷっ! それはいい事を聞いたの!」
「「えっ?」」
マリーとメリィはシィーの意外な反応に驚いて、間の抜けた声を漏らした。2人の視線の先で、シィーがニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべていた。
◆◇◆◇
「ふっー。これで終わりっと♪」
チカは満足げにそう言うと、テーブルの上に並べられた沢山の美味しそうなケーキをうっとりした表情で眺める。
やっと念願のケーキが食べられる。ふふっ♪ いったいどんな味がするのか想像するだけで、涎が止まらなくなっちゃいそうだよ♪
「じゃあみんなで食べよっか! まだまだおかわりもあるからね!」
「では、わたしはお茶をみなさまに用意しますね。」
マリアさんがお茶を運んでみんなの席に配っていくと、みんなはそれぞれテーブルからケーキを選んでフォークで口元に運んでいく。
──わたしはチーズケーキにしようかな♪
私はチーズケーキの先端をフォークで一口サイズに切って口元に運ぶ。
「んっ~♪ 甘くてすごく美味しいっ!」
チーズの風味と甘味が口いっぱいに広がって、まるで溶けるように口の中から消えていく。
元の世界で食べるチーズケーキより美味しいかもしれない。異世界にきてよかったー!!
みんなに視線を向けてみると、美味しそうにケーキを食べながら談笑している。ケーキを買ってきて本当によかった。ニッケルの町から王都にきたり、メリィちゃんの迷宮事件があったりして皆それぞれ大変だったもんね。
またこうやってみんなで笑い合いながら、穏やかな時間を過ごせて本当によかった......。
みんなの様子を眺めながら、想いを巡らせていると、シィーが可愛らしい小さなフォークを抱えながら、私の方へ飛んできた。
「シィーどうしたの?」
「チカー! 私3個も食べられないの!」
そりゃそうだよね。よく考えたら、シィーの小さな体にケーキ3個は無理がある。
まあー、もし余ったら私が全部食べるつもりだったから、無理しないでいいんだけどね!
私が無理しないでっとシィーに言葉をかけようとした瞬間、シィーはそれを遮るように言葉を続ける。
「そこで提案があるの!」
「提案? 明日食べるとか?」
「ちがうの!ジョン爺にあげたいの!」
「────ッ!?」
それを聞いたジョンさんが、ビクッと身体を震わせたかと思うと、信じられないものを見るような目でシィーを見つめた。
「なんでジョンさんにあげたいの?」
「迷宮に行くときに3人のぬいぐるみを作って迷惑をかけたの......。だからジョンさんに食べてほしいの」
そう言うと、シィーは申し訳なさそうにしながら瞳を伏せる。
私はシィーとマリーちゃんが迷宮から帰ってきてから、ジョンさんにこっぴどく叱られてたのを思い出した。
「うん。いいんじゃない?」
「やったのー!」
シィーはニコニコと嬉しそうにしながらケーキの乗ったお皿をジョンさんの元へ運んでいく。
「さっさ、ジョン爺。美味しく召し上がれなの!」
「うぐっ。あ、ありがとうございます。」
叱られてるときはムッとした表情で口を尖らせてたから、てっきり内心怒ってるのかと思ってたけど、シィーもいいとこあるじゃん。
私が感心しながらはシィーの背中を見つめていると、ふとマリーちゃんとメリィちゃんが視界に映る。
顔を青ざめながら怯えたように2人で抱き合って、ジョンさんとシィーの方向を見つめていた。
どうしたんだろ。
いったい何に怯えてるの?
──このときシィーがニマニマした邪悪な笑みを浮かべていたことを知ったのは、しばらく経ってからのことだった。
ジョンさんごめんなさい......。
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