【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

文字の大きさ
上 下
70 / 105

恐れていたこと ⑥

しおりを挟む
 ルーカス様に頼み、最後の挨拶をするために執事に連れられて、サイモンが滞在している部屋に向かう。

 部屋までの廊下はとても長く、その間、僕はサイモンに対しての謝罪の言葉を考えた。
 謝罪の言葉。
 どんなことを言い繕っても、サイモンを騙し傷付けたことは変わりがない。
 最後にきちんと『さよなら』と『今まで騙してしまって、ごめんなさい』だけは言いたい。

 僕とサイモンは離縁する。
 サイモンに姑息な僕と結婚してしまったという、汚点をつけさせてしまった。

 僕は一体、どのぐらいサイモンに嘘をつき、どのぐらい傷付け、どのぐらい迷惑をかけただろう。
 母様がおっしゃる通り、僕が出来損ないで人に迷惑ばかりかける、どうしようもない奴なんだ……。

「こちらが、サイモン様が滞在されているお部屋となっています。私は離れて待っておりますので、ゆっくりと最後・・のお別れをしてください」
 そう言って、執事は部屋のドアから離れた。

「……」
 サイモンがいる部屋に、僕は一歩近づく。
 もう一歩近づく。
 あと一歩近づけば、ドアをノックできる距離になる。

 心臓の音が大きくなる。
 サイモンに別れの挨拶をする。
 脳裏にサイモンの笑顔と共に、先ほど僕を見つめる嫌悪がみちた顔が浮かぶ。

 胸が苦しい。
 自分がした罪の重さで押しつぶされそうだ。
 潰されてでも罪を償わないといけない。よくわかっている。
 なのに涙が出てくる。
 後悔と自責の涙が。
 泣いても何も変わらないのに、涙が出てくる。

 さようなら、あの楽しかった日々……。
 ぎゅっと力を込めて拳を作り、

ーコン コン コンー

 とドアをノックした。

「はい」
 中から愛しい人の声がする。
 ドキンと鼓動が跳ねた。
「サイモン、僕だよ。レオナルド・・・・・
 ミカが死んでしまってから初めて、僕はサイモンに自分はレオナルドだと言った。

「……」
 でも本当の名前を告げても、サイモンから返事は返ってこない。
 そうだよね。僕の声なんて聞きたくないよね……。
 でも……。

「あのねサイモン。今までずっとサイモンに嘘をついて騙して、ごめんなさい。今更何を言ってもダメだと思う。でも僕はずっとサイモンのことを想っていたし、愛していたんだ」
「……」
「番にも……なりたかった……」
「……」

 サイモンからは何も返事がない。
 そりゃそうだよね。僕は何て未練たらしいことを言っているんだろう。
 そう思っても言ってしまう。
 この後に及んで、サイモンに誤解されたままは嫌だった。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

【完結】選ばれない僕の生きる道

谷絵 ちぐり
BL
三度、婚約解消された僕。 選ばれない僕が幸せを選ぶ話。 ※地名などは架空(と作者が思ってる)のものです ※設定は独自のものです

事故つがいの夫は僕を愛さない  ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】

カミヤルイ
BL
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続、ありがとうございました! 美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活 (登場人物) 高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。  高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。 (あらすじ)*自己設定ありオメガバース 「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」 ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。 天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。 理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。 天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。 しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。 ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。 表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない

天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。 ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。 運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった―――― ※他サイトにも掲載中 ★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★  「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」  が、レジーナブックスさまより発売中です。  どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

【完結】何一つ僕のお願いを聞いてくれない彼に、別れてほしいとお願いした結果。

N2O
BL
好きすぎて一部倫理観に反することをしたα × 好きすぎて馬鹿なことしちゃったΩ ※オメガバース設定をお借りしています。 ※素人作品です。温かな目でご覧ください。 表紙絵 ⇨ 深浦裕 様 X(@yumiura221018)

運命だなんて言うのなら

riiko
BL
気が付いたら男に組み敷かれていた。 「番、運命、オメガ」意味のわからない単語を話す男を前に、自分がいったいどこの誰なのか何一つ思い出せなかった。 ここは、男女の他に三つの性が存在する世界。 常識がまったく違う世界観に戸惑うも、愛情を与えてくれる男と一緒に過ごし愛をはぐくむ。この環境を素直に受け入れてきた時、過去におこした過ちを思い出し……。 ☆記憶喪失オメガバース☆ 主人公はオメガバースの世界を知らない(記憶がない)ので、物語の中で説明も入ります。オメガバース初心者の方でもご安心くださいませ。 運命をみつけたアルファ×記憶をなくしたオメガ 性描写が入るシーンは ※マークをタイトルにつけますのでご注意くださいませ。 物語、お楽しみいただけたら幸いです。

処理中です...