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文通 ①

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「そうか……ミカエルは流行病で死んでしまったのか……」
 気のせいだろうか?ルーカス様は握り拳に力を入れ、目にはうっすら涙を浮かべられている。

「レオナルド。お前とミカエルとは一度会ったことがある」
 そう言われて一生懸命記憶を遡るが、僕の記憶ではルーカス様とで会ったことはない。

「と言っても、レオナルドとは会ったのは一瞬。お前達が社交界デビューした時に、俺はたまたまテラスにいたミカエルと出会い、話をしているところに、お前がミカエルを連れ戻しに来た時だからな」
 あれは確か15歳の頃、父様と母様に連れられて社交界デビューをした時、ミカエルが突然いなくなって必死になって探してミカエルを見つけた時に一緒にいた男の子が、ルーカス様だったんだ。

「あの時、ミカエルと色々話をして気があって、意気投合して、それから文通をするようになったんだ」
 ルーカス様は遠い目をされた。
 ミカが誰かと文通していたのは知っていたけど、相手がまさかルーカス様だったなんて。

「ミカエルはいつもは強がってわがまま放題だが、実は寂しがり屋で家族のことが大好きなやつだったな」
 ミカはわがまま放題で周りに呆れられてたけど、本当はみんなと仲良くしたいのに、どう接せればいいのかわからないだけの不器用さんだった。

 それに体が弱くて、父様や母様に心配ばかりかけていたのを申し訳なく思っていた。
 言葉には出さなかったけれど、僕にも色々我慢させていたことに負い目を感じているという気がしていた。

「ルーカス様は本当のミカエルのことを、知っててくださったのですね」
 僕の他に本当の優しいミカのことを知ってくれている人がいたことが、嬉しい。
「ミカエルだけ、俺を皇帝の第二王子として見ず、1人の人として見てくれた俺の最愛の人だ」
「ルーカス様の最愛の人?」
「ああ、俺は16歳になったら、ミカエルにプロポーズしようと思っていた。だが俺がプロポーズする前に、突然『結婚することになった』と手紙が届いて、それ以降俺が手紙をいくら出しても返事は返ってこなかった。最後にひとめ、ひとめでいいからミカエルに会いたかった……」
 テラスの手すりをつかんだルーカス様の手が、微かに震えていた。

 ルーカス様はさよならも言えず、もう二度とミカに会えない。
 最愛の人に二度と会えない悲しみは、痛いほどよくわかる。
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