【完結】たとえ彼の身代わりだとしても貴方が僕を見てくれるのならば… 〜初恋のαは双子の弟の婚約者でした〜

葉月

文字の大きさ
上 下
34 / 105

帝都でのパーティー ⑤

しおりを挟む
 サイモンと僕はパーティーに招待されている貴族達に挨拶してまわっていると、皇帝陛下がサイモンをお呼びになった。

 サイモンは僕のそばを離れるのは心配だと言っていたけれど、皇帝陛下がお呼びになったのはサイモンだけだったので、僕は部屋の隅でひっそりとサイモンの帰りを待つことにした。

 のどかな場所で育った僕は、着飾った場所が苦手だ。
 部屋の壁にもたれかけながら、場内の様子を見る。
 どのご婦人も綺麗で、大人っぽくて、素敵で、自分の子供っぽさが恥ずかしくなってくる。
 早く帰りたいな。

 そんなことを考えていると、
「オリバー伯爵とはご一緒じゃないんですか?」
 気が付けば、数人の男性に囲まれてしまっていた。

「皇帝陛下のところに行っていまして……」
「それでは私達と一緒に飲みませんか?上等のワインがあるんですよ」
「いえ、サイモンにここで待つと言ってありますので」
 関わりたくないと、そっとその場から逃げ出そうとすると、そこにご令嬢達もやって来て逃げ道を塞がれてしまう。

 リーダーっぱいご令嬢が僕の前に一歩踏み出す。
「ミカエル様は男性のオメガなんですってね」
「はい……」
「男性のオメガの方は、やはり女性のまねごとをされるんですか?」
「え?」
「だって髪を伸ばし結われたり、ドレスをお召しになったり。まるで女性のまねごとではありませんか。やはり女性になりたいのですか?」
「そんなつもりは……」
「それにチョーカーをされてるってことは、まだ番になられてないんですね。本当にサイモン様とご結婚されたんですか?」
 後にいた他のご令嬢方が怪訝そうに僕を見る。

「本当に、しました……」
 悔しい。あんなことを言われても、きちんと言い返せない。
 奥歯を噛み締めるが、涙が溢れて来そうだ。
 泣かない。こんなところで泣かない!

「つまんない話、してんじゃねーよ」
 ご令嬢方の間を割って入って来たのは
「ルーカス殿下」
 皇帝陛下の第二王子、ルーカス殿下。

 艶やかな金色の髪、どこまでも透き通る青い瞳、整いすぎるほどの美しい容姿に、スラリと高い身長。博識で武術、戦いでは先頭に立って敵陣に挑み、参謀の仕事まで全てされている。ルーカス様は天が二物を与えたよな存在だった。

 僕を含め、周りにいた貴族達が頭を下げる。
「貴族ってほんと暇だよな。そんなこと、どーでもいいじゃん」
「……」
 周りにいた貴族達は口ごもる。

「はぁ。自分より強い者には何も言えないのかよ。まぁいい。ミカエル、来いよ」
「え?」
 驚く僕の手をルーカス様はぐいぐいと引き、テラスに連れ出す。
しおりを挟む
感想 158

あなたにおすすめの小説

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

それ以上近づかないでください。

ぽぽ
BL
「誰がお前のことなんか好きになると思うの?」 地味で冴えない小鳥遊凪は、ある日、憧れの人である蓮見馨に不意に告白をしてしまい、2人は付き合うことになった。 まるで夢のような時間――しかし、その恋はある出来事をきっかけに儚くも終わりを迎える。 転校を機に、馨のことを全てを忘れようと決意した凪。もう二度と彼と会うことはないはずだった。 ところが、あることがきっかけで馨と再会することになる。 「凪、俺以外のやつと話していいんだっけ?」 かつてとはまるで別人のような馨の様子に戸惑う凪。 「お願いだから、僕にもう近づかないで」

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

トップアイドルα様は平凡βを運命にする

新羽梅衣
BL
ありきたりなベータらしい人生を送ってきた平凡な大学生・春崎陽は深夜のコンビニでアルバイトをしている。 ある夜、コンビニに訪れた男と目が合った瞬間、まるで炭酸が弾けるような胸の高鳴りを感じてしまう。どこかで見たことのある彼はトップアイドル・sui(深山翠)だった。 翠と陽の距離は急接近するが、ふたりはアルファとベータ。翠が運命の番に憧れて相手を探すために芸能界に入ったと知った陽は、どう足掻いても番にはなれない関係に思い悩む。そんなとき、翠のマネージャーに声をかけられた陽はある決心をする。 運命の番を探すトップアイドルα×自分に自信がない平凡βの切ない恋のお話。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

パラレルワールドの世界で俺はあなたに嫌われている

いちみやりょう
BL
彼が負傷した隊員を庇って敵から剣で斬られそうになった時、自然と体が動いた。 「ジル!!!」 俺の体から血飛沫が出るのと、隊長が俺の名前を叫んだのは同時だった。 隊長はすぐさま敵をなぎ倒して、俺の体を抱き寄せてくれた。 「ジル!」 「……隊長……お怪我は……?」 「……ない。ジルが庇ってくれたからな」 隊長は俺の傷の具合でもう助からないのだと、悟ってしまったようだ。 目を細めて俺を見て、涙を耐えるように不器用に笑った。 ーーーー 『愛してる、ジル』 前の世界の隊長の声を思い出す。 この世界の貴方は俺にそんなことを言わない。 だけど俺は、前の世界にいた時の貴方の優しさが忘れられない。 俺のことを憎んで、俺に冷たく当たっても俺は貴方を信じたい。

事故つがいの夫は僕を愛さない  ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】

カミヤルイ
BL
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続、ありがとうございました! 美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活 (登場人物) 高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。  高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。 (あらすじ)*自己設定ありオメガバース 「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」 ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。 天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。 理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。 天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。 しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。 ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。 表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217

処理中です...