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拓海の想い ②
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嶺塚の病院に着くと車椅子に乗り、健康状態の検査を受け森本の研究室に向かう。
「雅成様!」
ドアを開けた瞬間、すでに泣いていた森本が雅成の方に駆けてくる。
「私のせいで、申し訳ありません。申し訳ありません」
床に頭を擦り付けながら土下座した。
雅成は車椅子から降りるとしゃがみ、森本の顔を覗き込みながら肩に手を置く。
「怪我は大丈夫でしたか?」
「え?」
予想もしなかった言葉に、森本は驚き顔をあげる。
「僕のせいで危険な目に遭わせてしまって、ごめんなさい」
そう言うと、森本の目から大量の涙と鼻からは鼻水が流れだす。
「雅成様~~!」
雅成に抱きつきそうになったのを、拓海によって静かに止められた。
大号泣した森本がなんとか落ち着きを取り戻し、雅成は何種類かの検査をした。
結果は良好。
救護車からの治療が功を成していた。
完治までには、まだまだ時間はかかるが、確実に治ると言われ、
「本来、私は検査入院をお勧めする立場なのですが、今日は家に帰ってゆっくりしてください」
と、森本は車を出し、雅成と拓海をマンションまで送った。
車から降りると、拓海は雅成を抱き抱え部屋に向かう。
拓海の胸に耳をあてると、心音が聞こえる。
玄関から室内に入ると、懐かしい香がする。
二人で過ごしていた時と変わらない、香がした。
拓海は寝室に入ると、雅成をベッドに寝かせ布団をかける。
「拓海……」
名前を呼ぶと、
「ん?」
いつものように返事をしてくれる。
「迎えに来てくれて、助けに来てくれて、僕を許してくれて、ありがとう……」
助け出してくれてから、ずっと言えていなかったことを、やっと伝えることができた。
また愛しい人の元へ帰れるなんて、思ってもみなかった。
あれほど酷いことをしたのに、迎えにきてくれるとは思ってもみなかった。
病気に治療薬ができて、未来のことを考えられるようになるとは、思ってもみなかった。
拓海とこれからもずっと一緒にいられるとは、思ってもみなかった。
拓海はベッドのヘリに座り、雅成の手をとる。
「もしも俺が雅成と同じ立場で同じことをしたからって、雅成は俺のことを嫌いになれるのか? 離れられるのか? もう愛することをやめられるのか?」
訊かれた。
「絶対にできない……。嫌いになんてなれないし、離れることなんてできない。愛することをやめるなんて絶対にできない」
「だろ? もし俺が誰かに拉致されたらどうする?」
「世界中這いずり回ってでも、探し出してみせる」
「もし俺の身に危険が迫っていたらどうする?」
「なにをどうしても、絶対に助け出す」
「雅成これはね、許す許さないの問題じゃないんだ。俺がどうしたいかだけなんだ」
「……」
「俺が絶対に雅成を全ての問題から助け出す。そう決めただけなんだよ」
「……」
「雅成は俺の全てなんだ。雅成がいない世界なんて、俺にはありえないんだ。だから俺は今、雅成がここにいてくれて、俺を見つめてくれている。それが最高に幸せなんだ。だから俺は雅成が帰ってきてくれて、本当に嬉しい」
「……」
「おかえり、雅成」
拓海はそっと雅成を抱きしめる。
「ただいま……」
やっと帰ってこられた。
二人の家に。
思い出がたくさん詰まったこの家に。
やっと帰ってこられた。
拓海の元に。
何の秘密も持たずに帰ってこられた。
暖かな胸に抱きしめられることが、こんなに尊いものだと気付かされた。
「雅成様!」
ドアを開けた瞬間、すでに泣いていた森本が雅成の方に駆けてくる。
「私のせいで、申し訳ありません。申し訳ありません」
床に頭を擦り付けながら土下座した。
雅成は車椅子から降りるとしゃがみ、森本の顔を覗き込みながら肩に手を置く。
「怪我は大丈夫でしたか?」
「え?」
予想もしなかった言葉に、森本は驚き顔をあげる。
「僕のせいで危険な目に遭わせてしまって、ごめんなさい」
そう言うと、森本の目から大量の涙と鼻からは鼻水が流れだす。
「雅成様~~!」
雅成に抱きつきそうになったのを、拓海によって静かに止められた。
大号泣した森本がなんとか落ち着きを取り戻し、雅成は何種類かの検査をした。
結果は良好。
救護車からの治療が功を成していた。
完治までには、まだまだ時間はかかるが、確実に治ると言われ、
「本来、私は検査入院をお勧めする立場なのですが、今日は家に帰ってゆっくりしてください」
と、森本は車を出し、雅成と拓海をマンションまで送った。
車から降りると、拓海は雅成を抱き抱え部屋に向かう。
拓海の胸に耳をあてると、心音が聞こえる。
玄関から室内に入ると、懐かしい香がする。
二人で過ごしていた時と変わらない、香がした。
拓海は寝室に入ると、雅成をベッドに寝かせ布団をかける。
「拓海……」
名前を呼ぶと、
「ん?」
いつものように返事をしてくれる。
「迎えに来てくれて、助けに来てくれて、僕を許してくれて、ありがとう……」
助け出してくれてから、ずっと言えていなかったことを、やっと伝えることができた。
また愛しい人の元へ帰れるなんて、思ってもみなかった。
あれほど酷いことをしたのに、迎えにきてくれるとは思ってもみなかった。
病気に治療薬ができて、未来のことを考えられるようになるとは、思ってもみなかった。
拓海とこれからもずっと一緒にいられるとは、思ってもみなかった。
拓海はベッドのヘリに座り、雅成の手をとる。
「もしも俺が雅成と同じ立場で同じことをしたからって、雅成は俺のことを嫌いになれるのか? 離れられるのか? もう愛することをやめられるのか?」
訊かれた。
「絶対にできない……。嫌いになんてなれないし、離れることなんてできない。愛することをやめるなんて絶対にできない」
「だろ? もし俺が誰かに拉致されたらどうする?」
「世界中這いずり回ってでも、探し出してみせる」
「もし俺の身に危険が迫っていたらどうする?」
「なにをどうしても、絶対に助け出す」
「雅成これはね、許す許さないの問題じゃないんだ。俺がどうしたいかだけなんだ」
「……」
「俺が絶対に雅成を全ての問題から助け出す。そう決めただけなんだよ」
「……」
「雅成は俺の全てなんだ。雅成がいない世界なんて、俺にはありえないんだ。だから俺は今、雅成がここにいてくれて、俺を見つめてくれている。それが最高に幸せなんだ。だから俺は雅成が帰ってきてくれて、本当に嬉しい」
「……」
「おかえり、雅成」
拓海はそっと雅成を抱きしめる。
「ただいま……」
やっと帰ってこられた。
二人の家に。
思い出がたくさん詰まったこの家に。
やっと帰ってこられた。
拓海の元に。
何の秘密も持たずに帰ってこられた。
暖かな胸に抱きしめられることが、こんなに尊いものだと気付かされた。
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