【完結】闇オークションの女神の白く甘い蜜に群がる男達と女神が一途に愛した男

葉月

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真実 ⑤

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 病室に残ってくれた森本に、雅成は紅茶を淹れる。
 本当はコーヒーが好きな森本には、コーヒーを淹れてあげたかったが、コーヒーメーカーでないと味が安定しないので、ティーバック茶葉の量が決まっている紅茶にした。
「粗茶ですが」
 雅成が森本の前に差し出すと、
「ありがとうございます」
 受け取り一口飲み、スッと音を立てて吸い切をした後、
「おいしく頂戴いたしました」
 軽く頭を下げた。

 今日も森本は白衣を着ていた。
 まだどうして森本が白衣を着ているのか、雅成は聞いていなかった。
「そういえばどうして森本さんは、最近白衣を着ているのですか?」
「ああ、そうでした。雅成様はご存じなかったですね。普段は旦那様の秘書をしていますが、実は私、本来は研究者なんです」
「え!? そうなんですか?」
 森本とは嶺塚家に来てから、拓海、嶺塚、その次によく関わっている人間だ。

 まさかいつも嶺塚のそばにいる森本が本当は研究者なんて、雅成は思いもよらなかった。
「はい」
 返事をした森本は少し考え、
「話は長くなるのですが、聞いていただけますか?」
 雅成に尋ねる。
「はい。時間はたっぷりあります。よろしくお願いします」
 まだ自分の知らないことがある。
 もしかすると話の中で拓海が抱えているであろうことがわかるかもしれない。
 雅成は森本の話を聞くことにした。

 森本が話し始めたのは、ずっと昔。
 森本も雅成も生まれていない、嶺塚が20代の頃の話だった。

 嶺塚は今、茶道の家元だが、その前は実家の茶道を継がず細胞を専門にした研究者だった。
 そんな時、嶺塚の前に老人に連れられた銀髪の一人の女性が現れた。

 その女性は闇の世界では『成功に導く女神』と呼ばれていた。
 女性を連れてきた老人の話では、女神の体調がすぐれないので穏便に検査をしてほしいとのことだった。
 詳しい検査をしていくうちに細胞の異常が見られる。

 治療方法を探すため、より女性の細胞の研究をするようになった。
 色々な仮説が出ては治療を試みる。
 だが結果はでない。
 楽な治療方法だけではなかった。

 ほとんどが女性にとって辛いものだった。
 だが女性はどうしても生きたいと、どんな治療も試した。
 女性が生きたいと願った理由。
 それは女性が妊娠していたから。

 闇のオークションで行為を強要され、避妊薬を服用していたが妊娠した。
 しかも父親が誰かもわからない子を。
 女性は「妊娠がわかった時、素直に嬉しかた」と言ったそうだ。
 だからどうしてもお腹の子がこの世に生まれてくるまでは、生きていたいと願ったと。

 嶺塚は女性の願いを叶えようと、寝る間を惜しんで研究し、女性は嶺塚のそばで研究を見守った。
 同じ願いを共有した二人。
 すぐに距離は縮まり、体の関係はなかったが恋仲となった。

 日に日にお腹は大きくなっていくが、ベッドから起き上がれなくなっていく女性。
 生きているのが奇跡なぐらい憔悴していた。
 胎内の子どもが生まれてもぎりぎり大丈夫になった頃、延命治療の方法が見つかり試したが、もう遅かった。

 帝王切開で子どもを産んだ女性は、そのまま帰らぬ人となった。
 女性から生まれた子ども。
 それが雅成の母親だった。
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