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動物園 ②

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「それは……ごめんなさい……」
 21歳になっても、色々なことに興味を示し、無邪気に楽しみ、いいと思ったことはいいといい、自分に非があれば素直に謝る。
 それが雅成のいいところで、誰にでも好かれる要因でもある。
 誰にでも好かれた。それはいいことなのだが、拓海には色々心配事がついてまわる。

「雅成、もしかして起きてからずっとその格好?」
「そうだけど?」
「下着は着けているだろうな?」
「え? えーっと……」
 雅成は口ごもり、拓海から視線を逸らす。
 拓海は189センチ。雅成は168センチと身長差があって、雅成が拓海の上着やシャツを着てもシャツワンピースのようになる。
 ワンピースのようになるが、どんなに拓海との身長差があったとしてもシャツとなると、丈に問題が出てくる。
 丈がちょうど股下ギリギリなのだ。
「俺を家中探し回ったって言ってたよな」
「え? ……そうだったけ……」
 そんなこといった覚えはありませんという感じに言ったが、嘘を着くのが苦手な雅成は思いっきり目が泳いでいる。
「まさかその格好でバルコニーに出てないだろうな」
「え? それは……。あ! 拓海パン屋さんにいってきたんでしょ? なにを買ったの?」
 なんとか話を逸らそうとするが、わざとらしい。
「その格好のまま、バルコニーに出たな。正直に言うんだ」
 拓海に横目で睨まれて、雅成は震え上がった。
「え~っと……その~……」
 雅成はしどろもどろ。
「正直に言えば許してやる」
 拓海は持っていた荷物を、とりあえず靴箱の上に置き腕組みをする。
「本当に?」
「ああ」
「本当の本当?」
「だからそう言っている」
「じゃや正直に言うね……。あの、このままの格好で、バルコニーに……出ました……」
 本当に怒られないか、雅成は拓海の様子を伺う。
「あれだけ、バルコニーに出る時はきちんとシャツとパンツを履くことって言ってたのに、しなかったんだな? いくらこの部屋が高層階だからって言っても、いつどこで誰がみているかわからないだろう? この前だって双眼鏡で部屋の中、覗かれてたばかりじゃないか」

 つい1ヶ月前。雅成を盗み見するためにわざわざ二人が住む部屋を双眼鏡で覗ける部屋に引っ越してきた男を、拓海が捕まえたばかりだ。
 その前はストーカーされたり、待ち伏せされたりと雅成はその美貌で、男女問わず付き纏われ、覗かれ、盗撮されることが頻繁に起こる。
 その度に拓海は口を酸っぱくして「外出すつときは変装しろ」「露出の多い服装はやめろ」「誰にでも優しくするのはやめろ」と言っている。
 誰にでも優しくするのはやめろと言うのは、横暴だが、変装をしたり服装をきちんとすることは
、身を守るために必要なこと。
 危機感の少ない雅成に、いくら注意しても雅成は「だってずっと拓海と一緒だから大丈夫」と言うばかりで、一向に聞こうとしない。
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