αとβとΩと俺 〜αの番には運命のΩがいて… βの俺が出来ることは…〜

葉月

文字の大きさ
上 下
164 / 171

ー俺のフェロモンって… 伊吹sideー

しおりを挟む
ーートントンーー

伊吹の病室のドアがノックされる。
「伊吹、入っていい?」

あ!蒼だ‼︎

返事をする前に、伊吹は部屋のドアを開けた。
「蒼、入って」
蒼が来てくれたのが嬉しいというように、ドアを開けた。

「へー、病院の個室とは思えないね」
辺りを見回した蒼が驚いた。
それもそのはず。
質の良さそうな絨毯が引き詰められ、ベットも大きいく、見舞客もゆっくりできそうなソファーがあり、バスルームは浴室付き。
窓は大きく作られていて外を眺めると、伊吹と瑆が初めて出会った公園の満開の桜がよく見える。

「高級ホテルみたいだろ?蒼も一緒にこの部屋で泊まったら、ちょっとした旅行みたいじゃない?」
伊吹が楽しそうに笑う。
「本当だな。ベットも大きいから一緒に寝られそう」

じゃあ…

伊吹の悪戯心に火がつくが、
「でも、泊まれないからな」
伊吹の言いたいことがわかっているかのように蒼が言い、伊吹の頭を蒼がぐしゃぐしゃと撫でた。

やっぱりダメか…
でも、入院は4日。
4日も離れるなんて、寂しい…

「そんなに寂しそうな顔しない。入院っていっても4日だけだろ?すぐに一緒にいられるって。俺も伊吹と一緒じゃないのは寂しいけど、我慢するから伊吹も頑張って」
蒼が優しい目で伊吹を見つめる。

「それで、伊吹の治療方法決まった?」
「決まったよ。治療方法はね…」
伊吹は話し出した。
治療方法はベータ化とオメガ化とあって、自分はオメガ化の治療をすると…
オメガ化治療を周りの大人達からは反対されていることを伏せて…

蒼に本当の事を言うと絶対反対されるし、蒼との約束が欲しいからって理由を知られるわけにはいかない…
俺のオメガ化治療は、蒼を繋ぎ止めるためのものだから。

「伊吹?大丈夫?」
無意識のうちに暗い顔になっていた伊吹のことを、蒼が心配する。
「‼︎大丈夫‼︎それより蒼、病院内探検しない?素敵なカフェもあるって母さん言ってたし」
伊吹が蒼に触れた時、
「‼︎」
蒼の表情が変わり、伊吹の時計型フェロモン検知器が緑から、急に赤へと変わった。

え⁉︎
どうして⁉︎
蒼に触れただけだよ‼︎

蒼は急いでポケットから薬を取り出すと、そのまま飲み込んだ。

紫色のカプセル‼︎
この前、蒼が飲みすぎてた薬‼︎

「蒼それ‼︎…」
「大丈夫…、まだ今日飲んでなかったから」
薬を飲むと蒼の顔色が戻ってくるが、伊吹のフェロモン検知器は赤のまま。
伊吹も自分の薬に手を伸ばすが、
「俺はもう大丈夫だから、伊吹は飲まなくていいよ。それより、伊吹の数値下がったらカフェ行こうな」
蒼が伊吹に触れる。

蒼に触れて欲しい…
でも、触れたら俺のフェロモン数値上がるの?
もしかして、家で蒼が薬たくさん飲んでたのって、俺のせい?
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

元ベータ後天性オメガ

桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。 ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。 主人公(受) 17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。 ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。 藤宮春樹(ふじみやはるき) 友人兼ライバル(攻) 金髪イケメン身長182cm ベータを偽っているアルファ 名前決まりました(1月26日) 決まるまではナナシくん‥。 大上礼央(おおかみれお) 名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥ ⭐︎コメント受付中 前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。 宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

【運命】に捨てられ捨てたΩ

雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」 秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。 「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」 秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。 【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。 なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。 右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。 前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。 ※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。 縦読みを推奨します。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭 3/6 2000❤️ありがとうございます😭

執着攻めと平凡受けの短編集

松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。 疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。 基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)

処理中です...