143 / 171
ーー箇条書き ② 蒼sideーー
しおりを挟む
「話が長くなりそうだから…」
と、ソファーに座る伊吹にホットミルクを渡し、蒼は自分には紅茶をローテーブルに置いた。
それから柚と再会してからの事を順を追って蒼は今見での経緯と、和臣との話を、伊吹に全て話した。
「それで、柚の体調は?」
あまりに蒼の話を真剣に聞いていた伊吹のホットミルクは、手付かずのまま冷えていっている。
「とりあえずは落ち着いてきてるみたいだけど………」
蒼はそこで一度言葉を切り、
「伊吹…」
隣に座る伊吹を抱きしめた。
「伊吹、体調は?」
伊吹が動くたび、本当に微量だが漂うフェロモンの香。
これは機械でも測定できないであろう、蒼だけがわかるほどの量。
蒼の鼻をくすぐる甘い香りは、蒼をラットにさせるほどではないが、それでもフェロモンが出ている事が蒼は不安で仕方なかった。
伊吹自身、このことにきがついているのだろうか?
「大丈夫。でもフェロモン出てるか、自分では分からなくて……。もし蒼に迷惑かけたら…」
やっぱり気が付いていない…
だから今まで伊吹からフェロモン出ていても、伊吹自身は自覚がなかったんだ…
「実は俺、伊吹からフェロモン出てるかも…って思ってたんだ」
「え?」
蒼の思わぬ告白に、伊吹は目を見開く。
「じゃあどうして言ってくれなかったの?」
素朴な疑問を伊吹は蒼に投げかける。
「俺の勘違いかと思ってた。伊吹はベータだからフェロモン出るはずないって…。でも後天性オメガだったなんて…」
アルファである俺が伊吹のそばにいるから、伊吹のフェロモンが反応しているのかも…
本当は一緒にいない方が伊吹のためなのかもしれない。
でもそんなこと…
そんなこと、俺は耐えられない。
もし、伊吹が俺のそばにいてくれると言ってくれたら…
俺はそばにいてもいいか?
「伊吹、そばにいてほしい」
抱きしめていた腕を蒼は緩め、伊吹の目を見つめた。
「え?それどういう……」
伊吹が言いかけた時、
「俺、抑制剤飲むの平気だから。量が増えても大丈夫。だから、そばにいて欲しい」
「…」
「伊吹からフェロモンが出だしたら、俺がちゃんと伊吹に伝えるし、伊吹には触れない。だから……、そばにいて欲しい」
お願いだ、伊吹。
『いい』と言ってくれ……
願い続けている蒼の胸は、不安で張り裂けそう。
お願いだ…伊吹…
「俺も一緒にいたいよ、蒼」
‼︎‼︎
伊吹が蒼に抱きつくと、蒼は伊吹のチョーカーに優しくキスをする。
よかった…
ありがとう、伊吹。
俺は一緒にいたいんだ。
伊吹が俺と一緒にいていいと思ってくれている間は……
「大好きだよ、伊吹……」
そう言って、伊吹の肩に頭を埋めた。
と、ソファーに座る伊吹にホットミルクを渡し、蒼は自分には紅茶をローテーブルに置いた。
それから柚と再会してからの事を順を追って蒼は今見での経緯と、和臣との話を、伊吹に全て話した。
「それで、柚の体調は?」
あまりに蒼の話を真剣に聞いていた伊吹のホットミルクは、手付かずのまま冷えていっている。
「とりあえずは落ち着いてきてるみたいだけど………」
蒼はそこで一度言葉を切り、
「伊吹…」
隣に座る伊吹を抱きしめた。
「伊吹、体調は?」
伊吹が動くたび、本当に微量だが漂うフェロモンの香。
これは機械でも測定できないであろう、蒼だけがわかるほどの量。
蒼の鼻をくすぐる甘い香りは、蒼をラットにさせるほどではないが、それでもフェロモンが出ている事が蒼は不安で仕方なかった。
伊吹自身、このことにきがついているのだろうか?
「大丈夫。でもフェロモン出てるか、自分では分からなくて……。もし蒼に迷惑かけたら…」
やっぱり気が付いていない…
だから今まで伊吹からフェロモン出ていても、伊吹自身は自覚がなかったんだ…
「実は俺、伊吹からフェロモン出てるかも…って思ってたんだ」
「え?」
蒼の思わぬ告白に、伊吹は目を見開く。
「じゃあどうして言ってくれなかったの?」
素朴な疑問を伊吹は蒼に投げかける。
「俺の勘違いかと思ってた。伊吹はベータだからフェロモン出るはずないって…。でも後天性オメガだったなんて…」
アルファである俺が伊吹のそばにいるから、伊吹のフェロモンが反応しているのかも…
本当は一緒にいない方が伊吹のためなのかもしれない。
でもそんなこと…
そんなこと、俺は耐えられない。
もし、伊吹が俺のそばにいてくれると言ってくれたら…
俺はそばにいてもいいか?
「伊吹、そばにいてほしい」
抱きしめていた腕を蒼は緩め、伊吹の目を見つめた。
「え?それどういう……」
伊吹が言いかけた時、
「俺、抑制剤飲むの平気だから。量が増えても大丈夫。だから、そばにいて欲しい」
「…」
「伊吹からフェロモンが出だしたら、俺がちゃんと伊吹に伝えるし、伊吹には触れない。だから……、そばにいて欲しい」
お願いだ、伊吹。
『いい』と言ってくれ……
願い続けている蒼の胸は、不安で張り裂けそう。
お願いだ…伊吹…
「俺も一緒にいたいよ、蒼」
‼︎‼︎
伊吹が蒼に抱きつくと、蒼は伊吹のチョーカーに優しくキスをする。
よかった…
ありがとう、伊吹。
俺は一緒にいたいんだ。
伊吹が俺と一緒にいていいと思ってくれている間は……
「大好きだよ、伊吹……」
そう言って、伊吹の肩に頭を埋めた。
0
お気に入りに追加
565
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
元ベータ後天性オメガ
桜 晴樹
BL
懲りずにオメガバースです。
ベータだった主人公がある日を境にオメガになってしまう。
主人公(受)
17歳男子高校生。黒髪平凡顔。身長170cm。
ベータからオメガに。後天性の性(バース)転換。
藤宮春樹(ふじみやはるき)
友人兼ライバル(攻)
金髪イケメン身長182cm
ベータを偽っているアルファ
名前決まりました(1月26日)
決まるまではナナシくん‥。
大上礼央(おおかみれお)
名前の由来、狼とライオン(レオ)から‥
⭐︎コメント受付中
前作の"番なんて要らない"は、編集作業につき、更新停滞中です。
宜しければ其方も読んで頂ければ喜びます。

【運命】に捨てられ捨てたΩ
雨宮一楼
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
1/27 1000❤️ありがとうございます😭
3/6 2000❤️ありがとうございます😭

当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる