αとβとΩと俺 〜αの番には運命のΩがいて… βの俺が出来ることは…〜

葉月

文字の大きさ
上 下
9 / 171

ヒートとラット 伊吹sideー

しおりを挟む
ん?
どうしたんだろう……
それになんだろう…
どこからか甘い香りがしてきた。

伊吹が疑問に思っていると、

「やったー‼︎決まりだね‼︎」

喜んだ柚が蒼の手を握ったとたん、


!!!!!!!!


ブアー!!と甘い香りが放出されたかと思うと、伊吹の体内で何かが、ドクンッ‼︎と脈打った。

なにこの甘い香…
あ!! 
もしかして!!

咄嗟に伊吹が柚の方を見ると、

!!!!
やっぱり!!

胸を抑えてうずくまった柚から、大量の甘い香りが放たれていた。

ヒートだ‼︎
しかもすごい量の香……
ベータの俺でもクラクラする……
っあ‼︎
蒼!!

伊吹が蒼の方をみると、
「蒼‼︎」

あのいつも冷静な蒼が、理性を保とうと顔を歪め、奥歯を噛みしめ、もがくように胸元の服を握りしめていた。

「……っして…」
蒼が喉の奥から絞り出すような言葉を発した。
「え⁉︎」
「俺の鞄から、薬出して!!」

‼︎‼︎

伊吹は初めて大声で怒鳴る蒼に驚いたが、すぐに蒼の鞄から緊急ラット抑制剤をとりだすと、蒼に差し出す。
蒼はそれを奪い取ると、震えるてで薬を量など気にせず口に運び、そのまま飲み干した。

あんなに沢山の薬飲んだら‼︎

急に薬が効き出したのか、蒼がよろめいた。

「蒼‼︎」

倒れそうになる蒼を、伊吹は全身で支えるが、体格が違いすぎて伊吹自身もよろけ…

このままじゃ、蒼と一緒に倒れてしまう‼︎

バランスを崩した伊吹が倒れそうになった時、

パシッ

伊吹は腕を掴まれた。
「…大丈夫?」
そこには柚のヒートを全身で浴びながらも片手でヒートの柚を支え、もう片方の手で伊吹を支える孝司の姿があった。
「ありがとうございます。孝司さんが支えてくれなかったら、蒼と二人して倒れているところでした」
「それは…きにしないで…」
孝司もラットにならないよう、理性を必死に奮い立たせていた。
「本当は蒼くんを運ぶのを…手伝ってあげたいけど……ごめんね…、今は…自分の事でいっぱいいっぱいだ…。伊吹くん…一人で…大丈夫?」
孝司は苦しそうに肩で息をしだした。
「俺は大丈夫です!」
伊吹が力強く答えると、孝司は苦しそうだが、微笑み、
「柚は…俺が…連れて帰る…。だから、伊吹くんは……蒼くんを…頼む…」
そういうと、孝司は掴んでいた伊吹の腕を離すと、急いで自分のジャケットのポケットから薬を取り出す。
そして蒼同様、緊急ラット抑制剤を飲み込むと柚を抱きかかえ、店を出た。

「い…ぶき…?」
少し意識がしっかりしてきた蒼が、寄り掛かっていた伊吹から、体を離した。
「‼︎蒼!大丈夫⁉︎」
蒼は声に出しては答えず、首を横に振る。

蒼、そんなに……

「蒼、あそこに停まってるタクシーまで行ける?」
伊吹が店の中見える、外に停まっていたタクシーを指差すと蒼はこくんと頭を縦に振った。
「蒼、俺の肩に捕まって…」
伊吹は蒼に肩を貸すと、力を振り絞ってタクシーまで連れて行き、急いで二人、タクシーに乗り込んだ。

「できるだけ早く、〇〇までお願いします‼︎」
伊吹は住所をタクシーの運転手に伝えると、隣で苦しむ蒼の手を握った。

抑制剤飲んだのに、全然効いてない…

蒼はなんとか理性を保とうと、するが息は上がり、冷や汗もかいている。

早く家に着いて‼︎
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版) 読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭 1/27 1000❤️ありがとうございます😭

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

運命の番はいないと診断されたのに、なんですかこの状況は!?

わさび
BL
運命の番はいないはずだった。 なのに、なんでこんなことに...!?

言い逃げしたら5年後捕まった件について。

なるせ
BL
 「ずっと、好きだよ。」 …長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。 もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。 ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。  そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…  なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!? ーーーーー 美形×平凡っていいですよね、、、、

僕の番

結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが―― ※他サイトにも掲載

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

処理中です...