3 / 171
2人の出会い
しおりを挟む
もうすぐ4月だというのに、まだ肌寒い3月の終わり。
つい先日、伊吹と蒼は同じ高校を卒業したばかりで、この4月からは晴れて同じ大学の大学生だ。
2人の実家から距離があるので、2人は一つの部屋をシェアハウスすることになったが、この2人は恋人同士なので…
同棲といってもいいだろう。
寺前 伊吹はベータだ。
162センチと少し低い背丈に、ベータには珍しく目を見張るほどの透明感のある肌に澄んだ瞳。
可愛い顔立ちで、伊吹が微笑めば、その場にいた人々は頬を赤らめるぐらいだ。
曲線美をもつ体つきは、可愛い中にも色気を醸し出していた。
が、本人としては女の子顔負けの可愛い顔立ちはコンプレックス。
そのせいか『可愛い』と言われることが大嫌いで、毛嫌いしている。
また、イケメンという人種も苦手だった。
自分にはない高身長と爽やかさとを、兼ね備えているからだ。
そんな中、出会ったのが、両親共にアルファで2人いる兄達もアルファ。
そして当人もアルファ。
アルファ一家の『東 蒼』(あずま あおい)だった。
彼は普通のアルファとは少し違っていた。
『自分は他の人とは違う』と人を見下したり、オメガを蔑んだりせず、
アルファもベータもオメガも分け隔てなく、接していた。
そんな蒼にどんな人も心奪われるのに時間はかからなかった。
伊吹もその1人。
だが、伊吹が他の人とは違っていたのは、蒼とお近づきになりたいと思わなかった事。
ただ遠くから見つめるだけで幸せだった。
だがそれは、運命なのか、偶然なのか……
その日は突然訪れた。
伊吹が二年生のある日………
「伊吹!避けろ‼︎」
体育の授業中バスケの試合があり、自分のチームが試合をする順番待ちをしていた伊吹は、仲の良かった友達との話に夢中になりすぎ、自分の方にボールが飛んできたのに気がつかず………
バンッ‼︎
伊吹の後頭部に強いボールが直撃した。
ん?
伊吹が状況を把握する前に、目の前がスローモーションに見え……
そのまま、暗い闇へと落ちていった。
ここは……
次に伊吹が目を覚ましたところは、保健室のベットの上だった。
えーっと…確か…
バスケの試合待ちをしてた時……
飛んできたボールが、頭を直撃して……
今、ここに至る…か。
保健室の天井を見つめながら、伊吹は記憶を辿る。
うん。
ちゃんと覚えてる。
打ち所は、悪くはなかったみたいだ……
少しずきんと痛む頭を押さえながら、伊吹が体を起こすと……
‼︎‼︎
誰⁉︎
伊吹が眠ってたベットには、一人の男子生徒がベットに組んだ腕を乗せ、その腕の上に頭を乗せて眠っていた。
その男子生徒を、よくよく見ると……
東 蒼⁉︎⁉︎
もともと綺麗な顔立ちだが、無防備に寝ている彼は、いつもにも増して魅力的だ。
保健室の窓から入る風が、蒼の艶やかな髪をたなびかせる。
綺麗な顔してるな~。
綺麗過ぎて、やっぱり近付き難い……
東くんが起きる前に、ここから退散しようかな…
なるべくイケメンとは関わりたくなかった伊吹は、蒼に気づかれないように、ベットからそーっと降りようとした時…
ん??
伊吹は自分の手を見た。
え?
なんで?
蒼は伊吹の手を、ギュッと握ったまま寝ていたのだった。
手をそーっと抜こうにも、しっかりと握られていて、抜けない。
どうしよう……
もう一度、抜けるか試してみよう…
ゆっくりと蒼の手から抜こうとすると……
!!
今度は強くぎゅっと握り返され…
起きた⁉︎
恐る恐る蒼の方を見ると、寝起きだが、うっとりするほど美しいその顔で伊吹は見つめられ、蒼が甘い声色で囁く。
「ねぇ、伊吹くん。俺と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」
「‼︎」
言葉の意味が理解できずに、伊吹が固まっていると、蒼は伊吹の耳元に顔を寄せ、
「お願い。付き合って……」
伊吹の耳元で囁かれたその言葉は、まるで呪文のように伊吹を痺れさせ、
「…はい…」
伊吹は考える間もなく答えていた。
つい先日、伊吹と蒼は同じ高校を卒業したばかりで、この4月からは晴れて同じ大学の大学生だ。
2人の実家から距離があるので、2人は一つの部屋をシェアハウスすることになったが、この2人は恋人同士なので…
同棲といってもいいだろう。
寺前 伊吹はベータだ。
162センチと少し低い背丈に、ベータには珍しく目を見張るほどの透明感のある肌に澄んだ瞳。
可愛い顔立ちで、伊吹が微笑めば、その場にいた人々は頬を赤らめるぐらいだ。
曲線美をもつ体つきは、可愛い中にも色気を醸し出していた。
が、本人としては女の子顔負けの可愛い顔立ちはコンプレックス。
そのせいか『可愛い』と言われることが大嫌いで、毛嫌いしている。
また、イケメンという人種も苦手だった。
自分にはない高身長と爽やかさとを、兼ね備えているからだ。
そんな中、出会ったのが、両親共にアルファで2人いる兄達もアルファ。
そして当人もアルファ。
アルファ一家の『東 蒼』(あずま あおい)だった。
彼は普通のアルファとは少し違っていた。
『自分は他の人とは違う』と人を見下したり、オメガを蔑んだりせず、
アルファもベータもオメガも分け隔てなく、接していた。
そんな蒼にどんな人も心奪われるのに時間はかからなかった。
伊吹もその1人。
だが、伊吹が他の人とは違っていたのは、蒼とお近づきになりたいと思わなかった事。
ただ遠くから見つめるだけで幸せだった。
だがそれは、運命なのか、偶然なのか……
その日は突然訪れた。
伊吹が二年生のある日………
「伊吹!避けろ‼︎」
体育の授業中バスケの試合があり、自分のチームが試合をする順番待ちをしていた伊吹は、仲の良かった友達との話に夢中になりすぎ、自分の方にボールが飛んできたのに気がつかず………
バンッ‼︎
伊吹の後頭部に強いボールが直撃した。
ん?
伊吹が状況を把握する前に、目の前がスローモーションに見え……
そのまま、暗い闇へと落ちていった。
ここは……
次に伊吹が目を覚ましたところは、保健室のベットの上だった。
えーっと…確か…
バスケの試合待ちをしてた時……
飛んできたボールが、頭を直撃して……
今、ここに至る…か。
保健室の天井を見つめながら、伊吹は記憶を辿る。
うん。
ちゃんと覚えてる。
打ち所は、悪くはなかったみたいだ……
少しずきんと痛む頭を押さえながら、伊吹が体を起こすと……
‼︎‼︎
誰⁉︎
伊吹が眠ってたベットには、一人の男子生徒がベットに組んだ腕を乗せ、その腕の上に頭を乗せて眠っていた。
その男子生徒を、よくよく見ると……
東 蒼⁉︎⁉︎
もともと綺麗な顔立ちだが、無防備に寝ている彼は、いつもにも増して魅力的だ。
保健室の窓から入る風が、蒼の艶やかな髪をたなびかせる。
綺麗な顔してるな~。
綺麗過ぎて、やっぱり近付き難い……
東くんが起きる前に、ここから退散しようかな…
なるべくイケメンとは関わりたくなかった伊吹は、蒼に気づかれないように、ベットからそーっと降りようとした時…
ん??
伊吹は自分の手を見た。
え?
なんで?
蒼は伊吹の手を、ギュッと握ったまま寝ていたのだった。
手をそーっと抜こうにも、しっかりと握られていて、抜けない。
どうしよう……
もう一度、抜けるか試してみよう…
ゆっくりと蒼の手から抜こうとすると……
!!
今度は強くぎゅっと握り返され…
起きた⁉︎
恐る恐る蒼の方を見ると、寝起きだが、うっとりするほど美しいその顔で伊吹は見つめられ、蒼が甘い声色で囁く。
「ねぇ、伊吹くん。俺と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」
「‼︎」
言葉の意味が理解できずに、伊吹が固まっていると、蒼は伊吹の耳元に顔を寄せ、
「お願い。付き合って……」
伊吹の耳元で囁かれたその言葉は、まるで呪文のように伊吹を痺れさせ、
「…はい…」
伊吹は考える間もなく答えていた。
0
お気に入りに追加
566
あなたにおすすめの小説
お客様と商品
あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
婚約者は俺にだけ冷たい
円みやび
BL
藍沢奏多は王子様と噂されるほどのイケメン。
そんなイケメンの婚約者である古川優一は日々の奏多の行動に傷つきながらも文句を言えずにいた。
それでも過去の思い出から奏多との別れを決意できない優一。
しかし、奏多とΩの絡みを見てしまい全てを終わらせることを決める。
ザマァ系を期待している方にはご期待に沿えないかもしれません。
前半は受け君がだいぶ不憫です。
他との絡みが少しだけあります。
あまりキツイ言葉でコメントするのはやめて欲しいです。
ただの素人の小説です。
ご容赦ください。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
【完結】あなたの恋人(Ω)になれますか?〜後天性オメガの僕〜
MEIKO
BL
この世界には3つの性がある。アルファ、ベータ、オメガ。その中でもオメガは希少な存在で。そのオメガで更に希少なのは┉僕、後天性オメガだ。ある瞬間、僕は恋をした!その人はアルファでオメガに対して強い拒否感を抱いている┉そんな人だった。もちろん僕をあなたの恋人(Ω)になんてしてくれませんよね?
前作「あなたの妻(Ω)辞めます!」スピンオフ作品です。こちら単独でも内容的には大丈夫です。でも両方読む方がより楽しんでいただけると思いますので、未読の方はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
後天性オメガの平凡受け✕心に傷ありアルファの恋愛
※独自のオメガバース設定有り
オメガの騎士は愛される
マメ
BL
隣国、レガラド国との長年に渡る戦に決着が着き、リノのいるリオス国は敗れてしまった。
騎士団に所属しているリノは、何度も剣を交えたことのあるレガラドの騎士団長・ユアンの希望で「彼の花嫁」となる事を要求される。
国のためになるならばと鎧を脱ぎ、ユアンに嫁いだリノだが、夫になったはずのユアンは婚礼の日を境に、数ヶ月経ってもリノの元に姿を現すことはなかった……。
もし、運命の番になれたのなら。
天井つむぎ
BL
春。守谷 奏斗(α)に振られ、精神的なショックで声を失った遊佐 水樹(Ω)は一年振りに高校三年生になった。
まだ奏斗に想いを寄せている水樹の前に現れたのは、守谷 彼方という転校生だ。優しい性格と笑顔を絶やさないところ以外は奏斗とそっくりの彼方から「友達になってくれるかな?」とお願いされる水樹。
水樹は奏斗にはされたことのない優しさを彼方からたくさんもらい、初めてで温かい友情関係に戸惑いが隠せない。
そんなある日、水樹の十九の誕生日がやってきて──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる