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真実 ②
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「クロエから少し聞いているかもしれないが、俺の母は俺が12歳の時に毒殺された」
「毒殺!?」
あまりに恐ろしい言葉に、鳥肌が立つ。
「だが犯人の標的は母と俺の二人だったんだ」
アレクの母君、ナーシャ様は貴族の出身ではなく、色々な国を渡り歩いていた踊り子だった。
当時皇帝陛下は、すでに隣国の皇女だった皇后様を迎え入れられいたが、陛下はナーシャ様に一目惚れし側室に迎え入れ、寵愛されていたそうだ。
そして月日は流れ、先に陛下の子供を授かったのはナーシャ様で、アレクは第一王子となり王位継承者として一番近い存在となった。
そしてアレクは幼い頃から命を狙われていた。そんな中、ナーシャ様とアレクのお茶に毒が入れられ、ナーシャ様はそのままお亡くなりになり、アレクも一時は危なかったが一命を取り留めた。
「え!?二人とも狙われてたの?」
「ああ。陛下はまた俺が狙われてしまうと思われ、事件が落ち着くまで中立国で信頼できるアスファーナ国、つまりユベールの父君が治められていた国に俺を預けたんだ」
「え!?アレクが僕たちの国に来ていたの?」
今までそんなこと誰からも聞いたことがなかった。
「ユベールが6歳頃、一年ほど城で一緒に過ごした兄弟と妹がいたのを覚えているか?」
確かにその頃、一年ほど兄弟と妹が僕達の城で一緒に生活し、過ごしていたのは覚えている。
「歳は離れていたけど、毎日一緒に遊んだ兄弟がいたのは覚えている」
「それ、俺とヒューゴとクロエだ」
「え!?」
そうアレクに言われ、その頃の記憶が鮮明に思い出される。
「思い出した!毎日一緒に過ごして、喧嘩もイタズラもして、よく母様に怒られてた。それに……あ!」
「思い出したか?」
「思い出した。アレクが僕のために持ってきてくれたミルク飴とクッキー、あれ、よく4人で食べてたおやつだ!」
「ああ、そうだ。あの時、母様が死んでしまって、何もかもどうでもよくなっていた俺を助けてくれたのは、ユベールなんだ」
「あの時も今も、僕、何も知らなくてアレクに何もしてあげられなくて、本当にごめんなさい」
僕はもっとアレクにしてあげられることが、たくさんあったと思う。
知らなかったから、何もしなかったなんて言い訳だ。
「いや、ユベールは誰も寄せ付けないようにしていた俺に関わり続けてくれて、助けてくれた。ユベールがいたから、俺は母様の分まで生きていこうって思えたんだ」
「……」
「その時から、ユベールは俺の唯一で最愛の人だ。だから俺はユベールの国が襲われたと聞いてから、再会するまでユベールは生きていると信じてずっと探していたんだ」
僕が生きているかわからないのに、アレクは10年間も探し続けてくれていたなんて。
アレクとと再会でき、目頭と胸が熱くなって思わず抱きついた。
「あんな形だったがユベールと再開できた時は、奇跡だと思った」
「でもどうして、そのことを僕に教えてくれなかったの?」
「毒を盛った犯人は捕まったが、黒幕はまだ捕まっていない。ユベールがアスファーナ一族の生き残りだと黒幕に知られたら、今度はユベールの命が狙われると思ったからだ。だが今回のことで母様と俺に毒を盛った黒幕も捕まりそうだ」
「え?アレクはその犯人が誰だかわかっているの?」
「皇后だ」
「!!」
アレクの口から発せられた名前に、絶句してしまう。
「皇后の側近も皇后が黒幕だと証言している。間違いないだろう」
「そんな……」
「王位継承者である俺や側室の母様が邪魔だったんだろう。王位継承なんて俺たちはそんなこと興味もなかったのに……。そんなことのために母様は殺されてしまった……」
アレクの瞳に悔しさとやるせなさと怒りが混じる。
皇后にマティアス。
あの人達は人の命をなんだと思っているんだ。
物や権力が欲しいからと毒殺し、戦いに紛れてなんの罪もない人を殺す。
幼い頃、家族を失った僕にはわかる。
家族を失うことが、どれほど辛いことか。ぽっかり空いてしまった心はどうしても埋まらない。
僕は家族を殺したやつが誰なのかわかっているけど、アレクは自分たちを毒殺しようとした黒幕がわからなず誰も信用できない中、心に傷を負っていても気丈に振る舞っていた。
皇后に弱みを見せないようにし、マティスの悪事を暴こうと頑張ってきたか。国民の気持ちをわかろうとし、守ろうとしてきたのか。
どんなに悔しかっただろう。心細かっただろう。悲しかっただろう。
「アレク」
僕はアレクをしっかりと抱きしめる。
「アレク、今まで辛かたね、悲しかったね、一人でよく頑張ったね。ヒューゴ様やクロエがアレクのそばにいてくれて、ありのままのアレクでいられる場所があって僕は嬉しい。だからこれからもヒューゴ様とクロエを大切にしてね」
本当はヒューゴ様やクロエと一緒に、アレクのそそばでアレクを支えていきたい。
でも、僕にはそれができない。だって僕は……。
「そこにユベールはいてくれないのか?」
「……」
「俺の前からいなくなろうと、しているのか?」
「それは……」
頭の中では答えがでているのに、これから先の言葉が口から出てこない。
「ユベール、どうなんだ!」
両腕をきつく掴まれながら、怒りの目で見据えられる。
言わないと……きちんと自分の気持ちを、アレクに言わないと。でないと、僕もアレクも次に進めない。
「毒殺!?」
あまりに恐ろしい言葉に、鳥肌が立つ。
「だが犯人の標的は母と俺の二人だったんだ」
アレクの母君、ナーシャ様は貴族の出身ではなく、色々な国を渡り歩いていた踊り子だった。
当時皇帝陛下は、すでに隣国の皇女だった皇后様を迎え入れられいたが、陛下はナーシャ様に一目惚れし側室に迎え入れ、寵愛されていたそうだ。
そして月日は流れ、先に陛下の子供を授かったのはナーシャ様で、アレクは第一王子となり王位継承者として一番近い存在となった。
そしてアレクは幼い頃から命を狙われていた。そんな中、ナーシャ様とアレクのお茶に毒が入れられ、ナーシャ様はそのままお亡くなりになり、アレクも一時は危なかったが一命を取り留めた。
「え!?二人とも狙われてたの?」
「ああ。陛下はまた俺が狙われてしまうと思われ、事件が落ち着くまで中立国で信頼できるアスファーナ国、つまりユベールの父君が治められていた国に俺を預けたんだ」
「え!?アレクが僕たちの国に来ていたの?」
今までそんなこと誰からも聞いたことがなかった。
「ユベールが6歳頃、一年ほど城で一緒に過ごした兄弟と妹がいたのを覚えているか?」
確かにその頃、一年ほど兄弟と妹が僕達の城で一緒に生活し、過ごしていたのは覚えている。
「歳は離れていたけど、毎日一緒に遊んだ兄弟がいたのは覚えている」
「それ、俺とヒューゴとクロエだ」
「え!?」
そうアレクに言われ、その頃の記憶が鮮明に思い出される。
「思い出した!毎日一緒に過ごして、喧嘩もイタズラもして、よく母様に怒られてた。それに……あ!」
「思い出したか?」
「思い出した。アレクが僕のために持ってきてくれたミルク飴とクッキー、あれ、よく4人で食べてたおやつだ!」
「ああ、そうだ。あの時、母様が死んでしまって、何もかもどうでもよくなっていた俺を助けてくれたのは、ユベールなんだ」
「あの時も今も、僕、何も知らなくてアレクに何もしてあげられなくて、本当にごめんなさい」
僕はもっとアレクにしてあげられることが、たくさんあったと思う。
知らなかったから、何もしなかったなんて言い訳だ。
「いや、ユベールは誰も寄せ付けないようにしていた俺に関わり続けてくれて、助けてくれた。ユベールがいたから、俺は母様の分まで生きていこうって思えたんだ」
「……」
「その時から、ユベールは俺の唯一で最愛の人だ。だから俺はユベールの国が襲われたと聞いてから、再会するまでユベールは生きていると信じてずっと探していたんだ」
僕が生きているかわからないのに、アレクは10年間も探し続けてくれていたなんて。
アレクとと再会でき、目頭と胸が熱くなって思わず抱きついた。
「あんな形だったがユベールと再開できた時は、奇跡だと思った」
「でもどうして、そのことを僕に教えてくれなかったの?」
「毒を盛った犯人は捕まったが、黒幕はまだ捕まっていない。ユベールがアスファーナ一族の生き残りだと黒幕に知られたら、今度はユベールの命が狙われると思ったからだ。だが今回のことで母様と俺に毒を盛った黒幕も捕まりそうだ」
「え?アレクはその犯人が誰だかわかっているの?」
「皇后だ」
「!!」
アレクの口から発せられた名前に、絶句してしまう。
「皇后の側近も皇后が黒幕だと証言している。間違いないだろう」
「そんな……」
「王位継承者である俺や側室の母様が邪魔だったんだろう。王位継承なんて俺たちはそんなこと興味もなかったのに……。そんなことのために母様は殺されてしまった……」
アレクの瞳に悔しさとやるせなさと怒りが混じる。
皇后にマティアス。
あの人達は人の命をなんだと思っているんだ。
物や権力が欲しいからと毒殺し、戦いに紛れてなんの罪もない人を殺す。
幼い頃、家族を失った僕にはわかる。
家族を失うことが、どれほど辛いことか。ぽっかり空いてしまった心はどうしても埋まらない。
僕は家族を殺したやつが誰なのかわかっているけど、アレクは自分たちを毒殺しようとした黒幕がわからなず誰も信用できない中、心に傷を負っていても気丈に振る舞っていた。
皇后に弱みを見せないようにし、マティスの悪事を暴こうと頑張ってきたか。国民の気持ちをわかろうとし、守ろうとしてきたのか。
どんなに悔しかっただろう。心細かっただろう。悲しかっただろう。
「アレク」
僕はアレクをしっかりと抱きしめる。
「アレク、今まで辛かたね、悲しかったね、一人でよく頑張ったね。ヒューゴ様やクロエがアレクのそばにいてくれて、ありのままのアレクでいられる場所があって僕は嬉しい。だからこれからもヒューゴ様とクロエを大切にしてね」
本当はヒューゴ様やクロエと一緒に、アレクのそそばでアレクを支えていきたい。
でも、僕にはそれができない。だって僕は……。
「そこにユベールはいてくれないのか?」
「……」
「俺の前からいなくなろうと、しているのか?」
「それは……」
頭の中では答えがでているのに、これから先の言葉が口から出てこない。
「ユベール、どうなんだ!」
両腕をきつく掴まれながら、怒りの目で見据えられる。
言わないと……きちんと自分の気持ちを、アレクに言わないと。でないと、僕もアレクも次に進めない。
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