【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

文字の大きさ
上 下
99 / 109

罪人 ④

しおりを挟む
「マティアス様の命令でアレキサンドロス様を……襲いました」
 震える声で男が話すと、そこにいた人達全員がざわつく。
「どうしてそんな戯言ざれごとを。兄上はユベールを助けたいばかりに、この者にそんな嘘をつかされているのだな」
「戯言?ではもう少しこの者の話を聞いてみよう」
 アレクはマティアス様を睨み、そして刺客をギロリと睨む。

「私は昔は刺客として人を殺していました。でも結婚し新しい家族もでき、刺客から足を洗い静かに暮らしていました。そんな時妻と子供を人質に取られ、マティアス様の下で刺客として働くことを余儀なくされました。そして最後の仕事だと言われたのが、アレキサンドロス様を殺害することでした。その際、アレキサンドロス様を殺害するため、俺を城内に招き入れたのはジェイダです」
 男が話終わると、縄で縛られたやつれたジェイダが引きずられるように連れて来られる。

「ジェイダ、言い訳ならここで聞く」
 怯えジェイダに、アレクは冷ややかなで見る。そしてジェイダは震えながら話し出した。

「……。幼い頃、私の育った村は戦いに紛れてやってきた兵士達に家は焼かれ、村人は殺されていきました。私は命からがら逃げ、村を焼き払った犯人を見つけ裁いてやろうと思い、踊り子として国中放浪していました。そんな時マティアス様と出会いアレキサンドロス様が村を襲った首謀者だと聞かされ、復讐したくないか?と話を持ちかけられました。マティアス様の命令通りアレキサンドロス様に近づき、あの夜、侍女になりすまし痺れ薬入りの葡萄酒を飲ませ刺客を部屋に招き入れました。そしてアレキサンドロス様を庇うユベール様を背後から刺しました」
 真っ直ぐにアレクを見ながらジェイダは話し、そして憎しみを込めた瞳でマティアス様を睨む。

「そんな作り話、誰が信じる」
 顔色ひとつ変えず、マティアス様が言うと、
「証拠ならここにある。ヒューゴ」
 アレクがそう言うと、ヒューゴ様がマティアス様の側近を連れてきた。

「この者を以前から監視していて、この二人の話でやっとお前の尻尾を掴むことができた。この者の部屋から出てきた物は何だと思う?」
 そう言いながらアレクがヒューゴ様に目配せすると、ターコイズの首飾りと、色とりどりの糸で編まれた独特の模様の敷物が出された。

「「そ、それは!!」」
 男とジェイダが同時に叫ぶ。
「そのターコイズの首飾りは、結婚式の日に私が妻に送ったものです!」
「その敷物は私の村でしか作ることが出来ない染料で作り上げられた敷物です!」
 男とジェイダは口々に言い、出されたターコイズの首飾りと色とりどりの敷物を受け取り、胸に押し当て咽び泣いた。

「この者は戦利品として、襲った村や人の持ち物を持ち帰っていた」
「なっ!」
 先ほどまで顔色ひとつ変えていなかったマティアス様の顔が真っ青になる。

「こいつを問い詰めると、今まで戦いに紛れて街や村を襲っていたり、俺を殺す計画を立てていたのはマティアス、お前だと言っている。これが動かぬ証拠だ」
 アレクはマティアス様の側近を地面に叩きつけた。

「マティアス、それは真か?」
 黙って経緯を見守っていた皇帝陛下が口を開かれた。
「……」
 黙ってしまったマティアス様を見て、
「話は後でゆっくり訊く。そこの兵士、ユベールの縄を解き、マティアスとこやつを牢に連れて行け」
 と言われた後、
「ユベールは冤罪により、無罪とする」
 と宣言してされると、処刑場は歓喜の声で震える。

「ユベール、ケガはしていないか?痛いところはないか?」
 アレクは僕の顔や体に傷がないか確認しようとする。

「大丈夫。どこも痛くないよ」
 本当は鎖で繋がれた足も、縄で縛られていた手首も、刺された脇腹も痛かったけどアレクを心配させたくなかった。

「よかった……。間に合って、間に合って本当に良かった….」
 アレクは涙を浮かべながら何度もそう言いい、僕を強く抱きしめた。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

「その想いは愛だった」騎士×元貴族騎士

倉くらの
BL
知らなかったんだ、君に嫌われていたなんて―――。 フェリクスは自分の屋敷に仕えていたシドの背中を追いかけて黒狼騎士団までやって来た。シドは幼い頃魔獣から助けてもらった時よりずっと憧れ続けていた相手。絶対に離れたくないと思ったからだ。 しかしそれと引き換えにフェリクスは家から勘当されて追い出されてしまう。 そんな最中にシドの口から「もうこれ以上俺に関わるな」という言葉を聞かされ、ずっと嫌われていたということを知る。 ショックを受けるフェリクスだったが、そのまま黒狼騎士団に残る決意をする。 夢とシドを想うことを諦められないフェリクスが奮闘し、シドに愛されて正式な騎士団員になるまでの物語。 一人称。 完結しました!

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる

葉月めいこ
BL
ラーズヘルム王国の王弟リューウェイクは親兄弟から放任され、自らの力で第三騎士団の副団長まで上り詰めた。 王家や城の中枢から軽んじられながらも、騎士や国の民と信頼を築きながら日々を過ごしている。 国王は在位11年目を迎える前に、自身の治世が加護者である女神に護られていると安心を得るため、古くから伝承のある聖女を求め、異世界からの召喚を決行した。 異世界人の召喚をずっと反対していたリューウェイクは遠征に出たあと伝令が届き、慌てて帰還するが時すでに遅く召喚が終わっていた。 召喚陣の上に現れたのは男女――兄妹2人だった。 皆、女性を聖女と崇め男性を蔑ろに扱うが、リューウェイクは女神が二人を選んだことに意味があると、聖者である雪兎を手厚く歓迎する。 威風堂々とした雪兎は為政者の風格があるものの、根っこの部分は好奇心旺盛で世話焼きでもあり、不遇なリューウェイクを気にかけいたわってくれる。 なぜ今回の召喚されし者が二人だったのか、その理由を知ったリューウェイクは苦悩の選択に迫られる。 召喚されたスパダリ×生真面目な不憫男前 全38話 こちらは個人サイトにも掲載されています。

[BL]王の独占、騎士の憂鬱

ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕 騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて… 王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい

【完結】オーロラ魔法士と第3王子

N2O
BL
全16話 ※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。 ※2023.11.18 文章を整えました。 辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。 「なんで、僕?」 一人狼第3王子×黒髪美人魔法士 設定はふんわりです。 小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。 嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。 感想聞かせていただけると大変嬉しいです。 表紙絵 ⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

銀の王子は金の王子の隣で輝く

明樹
BL
不幸な王子は幸せになれるのか? 異世界ものですが転生や転移ではありません。 素敵な表紙はEka様に描いて頂きました。

白金の花嫁は将軍の希望の花

葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。 ※個人ブログにも投稿済みです。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

処理中です...