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皇帝と皇妃との謁見 ②
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「アレキサンドロス。ユベールは男だと訊いているが、男は側室の一人とは認められない」
「はい、承知しております」
「それでもユベールを側室として迎え入れるのだな?」
やっぱり僕が側室なのは、無理がある。
そんなことを考えている間に、アレク様は
「はい」
短いが、はっきりと答えていた。
「そうか、まあいい。そのことに関しては、もう少し頭を冷やして考えるがいい。ところで今日、お前たちをここに呼んだのは、ユベールとの顔合わせと、もう一つはアレキサンドロスとマティアスには北部にあるエルマ国の現地調査、実状によってはそのまま出兵を命ずるためだ」
「エルマ国といえば三年前に帝国領土になった国で、帝国に従順だと訊いていますが、どうしてそのような場所に現地調査が必要になったのですか?」
困惑したようにマティアス様が訊く。
「実はわしが密かに送り込んでいた内通者がいたのだが、その者と連絡がとれなくなってな」
皇帝陛下の話によると帝国が支配下に置いた国々には、陛下直々に選りすぐった内通者を送っている。だが最近、送り込んでいた内通者達からの定期連絡がなくなることが目立ち始めていたそうだ。
しばらく様子を見ていたが、エルマ国の内通者から『国内で不審な動きがあり、盗賊も頻発に出現し商人を襲っている』と連絡が届いていたのに、詳しい報告を受ける段階になった時、急に消息がつかめなくなり、今回、現地調査が行われることになったそうだ。
「わしが送った内通者は腕がたち、従順で信頼できるものだ。だが今回連絡がないことで、わしは内通者が何者かによって消されていると考えている。そこでわしが一番信頼しているアレキサンドロスに元帥として軍を率いてもらい、マティアスには参謀をしてもらいたいと思っている」
皇帝の言葉に皇后の眉がピクリとする。
「マティアスは元帥ではなく参謀なのですか?」
「ああ。アレキサンドロスは経験も知識も豊富だ。マティアスは元帥にはまだ荷が重い」
「しかしマティアスも戦地での経験がございます。なのに参謀止まりはあまりにも……」
皇后様がまだ話を続けようとした時、
「皇后はわしの戦法に異議を申し立てるのか?」
皇帝陛下が皇后様に鋭い視線を送った。
「め、滅相もございません」
顔を青白くさせた皇后様が、皇帝陛下に頭を下げる。
「詳しい話は後ほど話す。それまでに出発の用意をするように」
「はっ」
「はっ」
アレク様とマティアス様は頭を下げた。
でも僕の場所からはマティアス様は頭を下げながら、苦虫を噛んだような表情をしていたのが見えていた。
「はい、承知しております」
「それでもユベールを側室として迎え入れるのだな?」
やっぱり僕が側室なのは、無理がある。
そんなことを考えている間に、アレク様は
「はい」
短いが、はっきりと答えていた。
「そうか、まあいい。そのことに関しては、もう少し頭を冷やして考えるがいい。ところで今日、お前たちをここに呼んだのは、ユベールとの顔合わせと、もう一つはアレキサンドロスとマティアスには北部にあるエルマ国の現地調査、実状によってはそのまま出兵を命ずるためだ」
「エルマ国といえば三年前に帝国領土になった国で、帝国に従順だと訊いていますが、どうしてそのような場所に現地調査が必要になったのですか?」
困惑したようにマティアス様が訊く。
「実はわしが密かに送り込んでいた内通者がいたのだが、その者と連絡がとれなくなってな」
皇帝陛下の話によると帝国が支配下に置いた国々には、陛下直々に選りすぐった内通者を送っている。だが最近、送り込んでいた内通者達からの定期連絡がなくなることが目立ち始めていたそうだ。
しばらく様子を見ていたが、エルマ国の内通者から『国内で不審な動きがあり、盗賊も頻発に出現し商人を襲っている』と連絡が届いていたのに、詳しい報告を受ける段階になった時、急に消息がつかめなくなり、今回、現地調査が行われることになったそうだ。
「わしが送った内通者は腕がたち、従順で信頼できるものだ。だが今回連絡がないことで、わしは内通者が何者かによって消されていると考えている。そこでわしが一番信頼しているアレキサンドロスに元帥として軍を率いてもらい、マティアスには参謀をしてもらいたいと思っている」
皇帝の言葉に皇后の眉がピクリとする。
「マティアスは元帥ではなく参謀なのですか?」
「ああ。アレキサンドロスは経験も知識も豊富だ。マティアスは元帥にはまだ荷が重い」
「しかしマティアスも戦地での経験がございます。なのに参謀止まりはあまりにも……」
皇后様がまだ話を続けようとした時、
「皇后はわしの戦法に異議を申し立てるのか?」
皇帝陛下が皇后様に鋭い視線を送った。
「め、滅相もございません」
顔を青白くさせた皇后様が、皇帝陛下に頭を下げる。
「詳しい話は後ほど話す。それまでに出発の用意をするように」
「はっ」
「はっ」
アレク様とマティアス様は頭を下げた。
でも僕の場所からはマティアス様は頭を下げながら、苦虫を噛んだような表情をしていたのが見えていた。
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