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マナーのレッスン ⑦
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「え? え?」
どうして笑われたか分からなくて、さらにあたふたしてしまう。
「笑ってしまい申し訳ありません。ユベール様があまりにも可愛くて、わざと拗ねてみました」
あまりに楽しそうに笑うので、
「そう、なんですね」
もう苦笑いするしかない。
「ユベールは俺のこと、好きなのか? そうなのか?」
アレク様はアレク様で、なぜだか先程まで苛立ちが嘘のように消えていて、今にも鼻歌を歌い出しそうだ。
アレク様は本当に表情豊かだな。
1人くるくる表情が変わるアレク様の事が、ますます愛しく感じる。
「は、はい……」
答えると、強く抱きしめられ、
「俺もユベールのことが好きだ」
髪に口付けされた。
アレク様にまっすぐに気持ちをぶつけられて、からだが爆発しそうなほど照れていると、コホンとヒューゴ様が咳払いされる。
「ところでユベール様。せっかくなのでダンスのお相手役を殿下に頼まれたらいかがですか?」
「それはいい案だ」
なぜだかアレク様はますます上機嫌になる。
僕としてもアレク様と踊りたいけど、やはり恥ずかしすぎる。
「あの、それは……」
口篭っていると、
「ユベールは俺と踊るのが嫌なのか?」
少し淋しそうにされる。
さっきまで笑ってたのに、もう淋しそう。
なんだかアレク様の気分屋にも慣れてきた。
ふふふと笑ってしまうと、今度は『笑うな』と言うようにちらりと睨む。
なんて可愛い人なんだ。
また笑いそうになるのを堪えて、
「アレク様は僕と踊りたいのですか?」
冗談で聞いてみた。
するとアレク様はほんのり頬を赤らめ、
「悪いか……」
僕から視線を逸せた。
「!」
思いもよらない可愛い反応に、思わず吹き出しそうになっているのを堪えていたのに、アレク様が僕の様子を見るように、またちらりと僕を見たので、
「あはははっ!」
大きな口を開けてヒューゴ様が笑いだし、釣られて僕とクロエも吹き出してしまった。
「だから笑うなと言っている!」
アレク様が凄むが、もう全く怖くない。
「初めからそうユベール様に、そうおっしゃればいいことじゃないですか」
笑いすぎて涙目になっているヒューゴ様の横腹に、アレク様は鋭いパンチを喰らわせ、ヒューゴ様は笑い続けながらも横腹を押さえた。
「そんなこと俺から言えるか」
まだ拗ねているアレク様を見て、
「アレク様、僕のダンスレッスンのお相手をお願いできませんでしょうか?」
礼儀正しく聞いたみた。
「……ユベールがどうしてもというなら、いいぞ」
「!」
アレク様は一生懸命余裕を見せようとしているけど、僕の目で見ても相当嬉しそうだ。
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
そう言うと、ダンスの曲が流れ始める。
今までどことなくぎこちなかった僕のステップが、流れるように滑らかになっていく。
頭の中でリズムを数えなくても、体が自然と動きだす。
見上げれば、包み込むような優しい眼差しで僕を見つめるアレク様と視線がぶつかり、もう目が離せない。
クイっと腰を引き寄せられると、もっと密着したくなる。
ずっとこうしていたい。
そう思っている間に曲は終わってしまい、お辞儀をすると、
「素敵だった」
そう言われ頭を撫でられると、今までの努力が一気に報われた気がした。
こんなにもお可愛くてお優しいのに、このお方のどこが冷徹で恐ろしいんだろう?
僕が絶対に誤解をといてみせる!
そう心に決めた時、部屋のドアがノックされ、
「失礼します。皇帝陛下よりご伝言を承りました」
廊下から家臣の声がした。
どうして笑われたか分からなくて、さらにあたふたしてしまう。
「笑ってしまい申し訳ありません。ユベール様があまりにも可愛くて、わざと拗ねてみました」
あまりに楽しそうに笑うので、
「そう、なんですね」
もう苦笑いするしかない。
「ユベールは俺のこと、好きなのか? そうなのか?」
アレク様はアレク様で、なぜだか先程まで苛立ちが嘘のように消えていて、今にも鼻歌を歌い出しそうだ。
アレク様は本当に表情豊かだな。
1人くるくる表情が変わるアレク様の事が、ますます愛しく感じる。
「は、はい……」
答えると、強く抱きしめられ、
「俺もユベールのことが好きだ」
髪に口付けされた。
アレク様にまっすぐに気持ちをぶつけられて、からだが爆発しそうなほど照れていると、コホンとヒューゴ様が咳払いされる。
「ところでユベール様。せっかくなのでダンスのお相手役を殿下に頼まれたらいかがですか?」
「それはいい案だ」
なぜだかアレク様はますます上機嫌になる。
僕としてもアレク様と踊りたいけど、やはり恥ずかしすぎる。
「あの、それは……」
口篭っていると、
「ユベールは俺と踊るのが嫌なのか?」
少し淋しそうにされる。
さっきまで笑ってたのに、もう淋しそう。
なんだかアレク様の気分屋にも慣れてきた。
ふふふと笑ってしまうと、今度は『笑うな』と言うようにちらりと睨む。
なんて可愛い人なんだ。
また笑いそうになるのを堪えて、
「アレク様は僕と踊りたいのですか?」
冗談で聞いてみた。
するとアレク様はほんのり頬を赤らめ、
「悪いか……」
僕から視線を逸せた。
「!」
思いもよらない可愛い反応に、思わず吹き出しそうになっているのを堪えていたのに、アレク様が僕の様子を見るように、またちらりと僕を見たので、
「あはははっ!」
大きな口を開けてヒューゴ様が笑いだし、釣られて僕とクロエも吹き出してしまった。
「だから笑うなと言っている!」
アレク様が凄むが、もう全く怖くない。
「初めからそうユベール様に、そうおっしゃればいいことじゃないですか」
笑いすぎて涙目になっているヒューゴ様の横腹に、アレク様は鋭いパンチを喰らわせ、ヒューゴ様は笑い続けながらも横腹を押さえた。
「そんなこと俺から言えるか」
まだ拗ねているアレク様を見て、
「アレク様、僕のダンスレッスンのお相手をお願いできませんでしょうか?」
礼儀正しく聞いたみた。
「……ユベールがどうしてもというなら、いいぞ」
「!」
アレク様は一生懸命余裕を見せようとしているけど、僕の目で見ても相当嬉しそうだ。
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
そう言うと、ダンスの曲が流れ始める。
今までどことなくぎこちなかった僕のステップが、流れるように滑らかになっていく。
頭の中でリズムを数えなくても、体が自然と動きだす。
見上げれば、包み込むような優しい眼差しで僕を見つめるアレク様と視線がぶつかり、もう目が離せない。
クイっと腰を引き寄せられると、もっと密着したくなる。
ずっとこうしていたい。
そう思っている間に曲は終わってしまい、お辞儀をすると、
「素敵だった」
そう言われ頭を撫でられると、今までの努力が一気に報われた気がした。
こんなにもお可愛くてお優しいのに、このお方のどこが冷徹で恐ろしいんだろう?
僕が絶対に誤解をといてみせる!
そう心に決めた時、部屋のドアがノックされ、
「失礼します。皇帝陛下よりご伝言を承りました」
廊下から家臣の声がした。
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