70 / 109
マナーのレッスン ⑥
しおりを挟む
「ところでユベール様」
踊っている最中、ヒューゴ様が話しかけてきた。
「なんで……すか?」
一応返事はしたものの、気持ちは踊りに集中している。
「どうして練習相手が殿下でなく私なのですか?」
そう言いながらヒューゴ様は、僕をくるりと回す。
「だってこんな下手なダンス、アレク様には見せられません」
「え? ユベール様はとてもお上手ですよ」
今度はグイッと体を引き寄せられ、ヒューゴ様の顔が目の前にきて、思わず頬を赤らめてしまった。
「一度、殿下と練習されてはいかがですか?上達が早くなるかもしれませんよ」
腰をクイッと引かれると、ヒューゴ様とより体が密着する。
アレク様とこんなに密着したら、落ち着いて踊れないよ……。
返事に困っていると、
ーバンッ!ー
ノックもなしに、部屋のドアが開けられアレク様が大股で入って来た。
「これはどういうことだ!?」
「わっ!」
密着しているヒューゴ様と僕を引き離すと、アレク様が僕を抱き寄せヒューゴ様を睨む。
「ダンスの練習です」
鋭い視線で睨まれたにもかかわらず、ヒューゴ様はアレク様に満面の笑みで微笑み返す。
「見ればわかる。何故お前がユベールの相手をしているのかと聞いている」
ヒューゴ様の微笑みに、アレク様は明らかに苛立っている。
今のアレク様からは、ガゼボの時と同じ雰囲気を感じる。
「ぼ、僕がお願いしたんです!」
慌ててアレク様とヒューゴ様の話の間に入った。
「なに?」
「今、ダンスの先生とデビュタントで踊るダンスレッスンをしているのですが全然上達しなくて、それで、その、個人的にレッスンをしたくて……それで相手役をヒューゴ様にお願いしたんです」
「……。経緯はわかった。で、どうして相手役かヒューゴなんだ?」
「え?」
「相手役なら俺でもいいだろう」
腰に手を回されグイッと引き寄せられると、あと少しで唇と唇が触れそうになる。
自分の頬が真っ赤になるのがわかって、ア
レク様から視線を逸らせてしまう。
「相手が俺では不服か?」
パクッと耳を甘噛みされると、ゾクゾクッと背中から震える。
「そういう訳では……決してないのですが……」
「じゃあどういう事だ」
理由は簡単。
完璧に踊りこなせるようになってから、アレク様には見て欲しかったのと、あまりに体を密着させるのはドキドキしてダンスどころではなくなる。
「それは、その……」
理由を言うのが恥ずかしくて、口篭ってしまっていると、
「ヒューゴが好きなのか?」
寂しそうにアレク様が僕を見つめる。
「違います!」
全力で否定するとアレク様は嬉しそうだけど、ヒューゴ様は拗ねている。
「違うんです! ヒューゴ様のことは好きですが、アレク様に対しての好きとは違っていまして……。えっと、あの、その……」
こんな時、なんて言えばいいの?
僕があたふたしていると、ずっと拗ねていたヒューゴ様の顔が、だんだん笑いを堪えている顔になり、とうとう吹き出した。
踊っている最中、ヒューゴ様が話しかけてきた。
「なんで……すか?」
一応返事はしたものの、気持ちは踊りに集中している。
「どうして練習相手が殿下でなく私なのですか?」
そう言いながらヒューゴ様は、僕をくるりと回す。
「だってこんな下手なダンス、アレク様には見せられません」
「え? ユベール様はとてもお上手ですよ」
今度はグイッと体を引き寄せられ、ヒューゴ様の顔が目の前にきて、思わず頬を赤らめてしまった。
「一度、殿下と練習されてはいかがですか?上達が早くなるかもしれませんよ」
腰をクイッと引かれると、ヒューゴ様とより体が密着する。
アレク様とこんなに密着したら、落ち着いて踊れないよ……。
返事に困っていると、
ーバンッ!ー
ノックもなしに、部屋のドアが開けられアレク様が大股で入って来た。
「これはどういうことだ!?」
「わっ!」
密着しているヒューゴ様と僕を引き離すと、アレク様が僕を抱き寄せヒューゴ様を睨む。
「ダンスの練習です」
鋭い視線で睨まれたにもかかわらず、ヒューゴ様はアレク様に満面の笑みで微笑み返す。
「見ればわかる。何故お前がユベールの相手をしているのかと聞いている」
ヒューゴ様の微笑みに、アレク様は明らかに苛立っている。
今のアレク様からは、ガゼボの時と同じ雰囲気を感じる。
「ぼ、僕がお願いしたんです!」
慌ててアレク様とヒューゴ様の話の間に入った。
「なに?」
「今、ダンスの先生とデビュタントで踊るダンスレッスンをしているのですが全然上達しなくて、それで、その、個人的にレッスンをしたくて……それで相手役をヒューゴ様にお願いしたんです」
「……。経緯はわかった。で、どうして相手役かヒューゴなんだ?」
「え?」
「相手役なら俺でもいいだろう」
腰に手を回されグイッと引き寄せられると、あと少しで唇と唇が触れそうになる。
自分の頬が真っ赤になるのがわかって、ア
レク様から視線を逸らせてしまう。
「相手が俺では不服か?」
パクッと耳を甘噛みされると、ゾクゾクッと背中から震える。
「そういう訳では……決してないのですが……」
「じゃあどういう事だ」
理由は簡単。
完璧に踊りこなせるようになってから、アレク様には見て欲しかったのと、あまりに体を密着させるのはドキドキしてダンスどころではなくなる。
「それは、その……」
理由を言うのが恥ずかしくて、口篭ってしまっていると、
「ヒューゴが好きなのか?」
寂しそうにアレク様が僕を見つめる。
「違います!」
全力で否定するとアレク様は嬉しそうだけど、ヒューゴ様は拗ねている。
「違うんです! ヒューゴ様のことは好きですが、アレク様に対しての好きとは違っていまして……。えっと、あの、その……」
こんな時、なんて言えばいいの?
僕があたふたしていると、ずっと拗ねていたヒューゴ様の顔が、だんだん笑いを堪えている顔になり、とうとう吹き出した。
10
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
「その想いは愛だった」騎士×元貴族騎士
倉くらの
BL
知らなかったんだ、君に嫌われていたなんて―――。
フェリクスは自分の屋敷に仕えていたシドの背中を追いかけて黒狼騎士団までやって来た。シドは幼い頃魔獣から助けてもらった時よりずっと憧れ続けていた相手。絶対に離れたくないと思ったからだ。
しかしそれと引き換えにフェリクスは家から勘当されて追い出されてしまう。
そんな最中にシドの口から「もうこれ以上俺に関わるな」という言葉を聞かされ、ずっと嫌われていたということを知る。
ショックを受けるフェリクスだったが、そのまま黒狼騎士団に残る決意をする。
夢とシドを想うことを諦められないフェリクスが奮闘し、シドに愛されて正式な騎士団員になるまでの物語。
一人称。
完結しました!
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。

龍神様の神使
石動なつめ
BL
顔にある花の痣のせいで、忌み子として疎まれて育った雪花は、ある日父から龍神の生贄となるように命じられる。
しかし当の龍神は雪花を喰らおうとせず「うちで働け」と連れ帰ってくれる事となった。
そこで雪花は彼の神使である蛇の妖・立待と出会う。彼から優しく接される内に雪花の心の傷は癒えて行き、お互いにだんだんと惹かれ合うのだが――。
※少々際どいかな、という内容・描写のある話につきましては、タイトルに「*」をつけております。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
[BL]王の独占、騎士の憂鬱
ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕
騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて…
王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい
左遷先は、後宮でした。
猫宮乾
BL
外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる