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マナーのレッスン ⑥
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「ところでユベール様」
踊っている最中、ヒューゴ様が話しかけてきた。
「なんで……すか?」
一応返事はしたものの、気持ちは踊りに集中している。
「どうして練習相手が殿下でなく私なのですか?」
そう言いながらヒューゴ様は、僕をくるりと回す。
「だってこんな下手なダンス、アレク様には見せられません」
「え? ユベール様はとてもお上手ですよ」
今度はグイッと体を引き寄せられ、ヒューゴ様の顔が目の前にきて、思わず頬を赤らめてしまった。
「一度、殿下と練習されてはいかがですか?上達が早くなるかもしれませんよ」
腰をクイッと引かれると、ヒューゴ様とより体が密着する。
アレク様とこんなに密着したら、落ち着いて踊れないよ……。
返事に困っていると、
ーバンッ!ー
ノックもなしに、部屋のドアが開けられアレク様が大股で入って来た。
「これはどういうことだ!?」
「わっ!」
密着しているヒューゴ様と僕を引き離すと、アレク様が僕を抱き寄せヒューゴ様を睨む。
「ダンスの練習です」
鋭い視線で睨まれたにもかかわらず、ヒューゴ様はアレク様に満面の笑みで微笑み返す。
「見ればわかる。何故お前がユベールの相手をしているのかと聞いている」
ヒューゴ様の微笑みに、アレク様は明らかに苛立っている。
今のアレク様からは、ガゼボの時と同じ雰囲気を感じる。
「ぼ、僕がお願いしたんです!」
慌ててアレク様とヒューゴ様の話の間に入った。
「なに?」
「今、ダンスの先生とデビュタントで踊るダンスレッスンをしているのですが全然上達しなくて、それで、その、個人的にレッスンをしたくて……それで相手役をヒューゴ様にお願いしたんです」
「……。経緯はわかった。で、どうして相手役かヒューゴなんだ?」
「え?」
「相手役なら俺でもいいだろう」
腰に手を回されグイッと引き寄せられると、あと少しで唇と唇が触れそうになる。
自分の頬が真っ赤になるのがわかって、ア
レク様から視線を逸らせてしまう。
「相手が俺では不服か?」
パクッと耳を甘噛みされると、ゾクゾクッと背中から震える。
「そういう訳では……決してないのですが……」
「じゃあどういう事だ」
理由は簡単。
完璧に踊りこなせるようになってから、アレク様には見て欲しかったのと、あまりに体を密着させるのはドキドキしてダンスどころではなくなる。
「それは、その……」
理由を言うのが恥ずかしくて、口篭ってしまっていると、
「ヒューゴが好きなのか?」
寂しそうにアレク様が僕を見つめる。
「違います!」
全力で否定するとアレク様は嬉しそうだけど、ヒューゴ様は拗ねている。
「違うんです! ヒューゴ様のことは好きですが、アレク様に対しての好きとは違っていまして……。えっと、あの、その……」
こんな時、なんて言えばいいの?
僕があたふたしていると、ずっと拗ねていたヒューゴ様の顔が、だんだん笑いを堪えている顔になり、とうとう吹き出した。
踊っている最中、ヒューゴ様が話しかけてきた。
「なんで……すか?」
一応返事はしたものの、気持ちは踊りに集中している。
「どうして練習相手が殿下でなく私なのですか?」
そう言いながらヒューゴ様は、僕をくるりと回す。
「だってこんな下手なダンス、アレク様には見せられません」
「え? ユベール様はとてもお上手ですよ」
今度はグイッと体を引き寄せられ、ヒューゴ様の顔が目の前にきて、思わず頬を赤らめてしまった。
「一度、殿下と練習されてはいかがですか?上達が早くなるかもしれませんよ」
腰をクイッと引かれると、ヒューゴ様とより体が密着する。
アレク様とこんなに密着したら、落ち着いて踊れないよ……。
返事に困っていると、
ーバンッ!ー
ノックもなしに、部屋のドアが開けられアレク様が大股で入って来た。
「これはどういうことだ!?」
「わっ!」
密着しているヒューゴ様と僕を引き離すと、アレク様が僕を抱き寄せヒューゴ様を睨む。
「ダンスの練習です」
鋭い視線で睨まれたにもかかわらず、ヒューゴ様はアレク様に満面の笑みで微笑み返す。
「見ればわかる。何故お前がユベールの相手をしているのかと聞いている」
ヒューゴ様の微笑みに、アレク様は明らかに苛立っている。
今のアレク様からは、ガゼボの時と同じ雰囲気を感じる。
「ぼ、僕がお願いしたんです!」
慌ててアレク様とヒューゴ様の話の間に入った。
「なに?」
「今、ダンスの先生とデビュタントで踊るダンスレッスンをしているのですが全然上達しなくて、それで、その、個人的にレッスンをしたくて……それで相手役をヒューゴ様にお願いしたんです」
「……。経緯はわかった。で、どうして相手役かヒューゴなんだ?」
「え?」
「相手役なら俺でもいいだろう」
腰に手を回されグイッと引き寄せられると、あと少しで唇と唇が触れそうになる。
自分の頬が真っ赤になるのがわかって、ア
レク様から視線を逸らせてしまう。
「相手が俺では不服か?」
パクッと耳を甘噛みされると、ゾクゾクッと背中から震える。
「そういう訳では……決してないのですが……」
「じゃあどういう事だ」
理由は簡単。
完璧に踊りこなせるようになってから、アレク様には見て欲しかったのと、あまりに体を密着させるのはドキドキしてダンスどころではなくなる。
「それは、その……」
理由を言うのが恥ずかしくて、口篭ってしまっていると、
「ヒューゴが好きなのか?」
寂しそうにアレク様が僕を見つめる。
「違います!」
全力で否定するとアレク様は嬉しそうだけど、ヒューゴ様は拗ねている。
「違うんです! ヒューゴ様のことは好きですが、アレク様に対しての好きとは違っていまして……。えっと、あの、その……」
こんな時、なんて言えばいいの?
僕があたふたしていると、ずっと拗ねていたヒューゴ様の顔が、だんだん笑いを堪えている顔になり、とうとう吹き出した。
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