【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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マナーのレッスン ③

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「アレク様、本当によろしいのですか?」
「ああ。クロエから今日のマナーレッスン、とても頑張っていたと聞いたからな。ご褒美だ」
 ベッドに座ったアレク様は、自分の膝の上をポンポンと二回叩いた。

 本当にいいのかな?
 少し心配になりながらも、アレク様を膝の上に頭を置く。

 アレク様からのご褒美。
 それはいつもは僕がアレク様をが膝枕をしているけど、今日はアレク様に僕が膝枕をしてもらうことだった。

 頭は意外と重いと以前聞いていたから、アレク様の足に負担がかからないように頭を少し上げているけど、これがなかなか大変。
 日中、全身の筋肉を使っていて、さらに頭を浮かそうと首の筋肉を使うと、首周りがプルプルする。

「遠慮せず、力を抜くといい」
 アレク様ははそう言ってくださるけど、その言葉に甘えていいものかと、さらに首に力が入る。
「それでは余計に辛くないのか?」
「いえ、大丈夫です」
「しかし、首がプルプルしているぞ」
 そんな姿も可愛いが、と付け加えアレク様は僕のの頬を人差し指で突く。

「アレク様、押さないでください。力が抜けてしまいます」
 より首に力を入れたので、顔に血が集まってしまい真っ赤になるのがわかった。
「ユベールは意外と強情だな。それでは……」
 アレク様が僕の脇のしたをくすぐる。

「アレク様! もう! あははは」
 最後まで首に力を入れていたのに、とうとう笑ってしまって体の力が抜けると、完全にアレク様に膝枕をしてもらう体勢となってしまった。

「どうだ? 全身の力を抜いて膝枕されるのは、案外気持ちいいものだろ?」
 そう言われながらアレク様に頭を撫でられると、気持ちよくて蕩けてしまいそうだ。

「でも重くないのですか?」
 撫で続けられ、目がとろんとしてくる。
「いや全く。そういうユベールは俺に膝枕をしている時、俺の頭を重いと思っていたのか?」
「そんなこと思ったことありません。むしろ殿下の頭は、気持ちいい重みです」
 しっかりとそこにアレク様がいると実感できる。そんな重みが大好き。

「気持ちいい重みか……。なるほど、それはいい例えだ。ユベールの頭の重さも、気持ちいい重さだぞ」
 アレク様は僕の髪をひとつまみ掴むと、口付けをする。

「それで、レッスンはどうだった?」
「とてもためになる、充実したレッスンでした」
 本当は嫌なことだらけだった。
 だけと、それを嫌なことで終わらせたくなかった。
 絶対、絶対、モノにしてみせる。
 心に決めていた。

「本当にそれだけか?」
 いつもの僕と違うと思われたのか、アレク様は僕の顔を覗き見る。

 アレク様には嘘はつかない。
 でも本当のことを言ってしまえば、違う先生に変えられてしまうかもしれない。

「あのアレク様。お願いがあります」
「なんだ」
「勉強やレッスンの件なのですが、アレク様は何も言わず、ただ僕を見守ってやっていただけないでしょうか?」
「何か気になることがあったのか?」
「気になるというか……、やりきってみたいんです。ハンナ先生が合格をくださるまでやりきって、アレク様の隣にいても恥ずかしくない側室になりたいんです」

 自分がどこまでできるかわからない。
 ハンナ先生の合格ラインに到底届かないかもしれない。
 それでも諦めたくなかった。

 天国にいる父様と母様に「頑張ったよ」と報告したい。
 アレク様に「頑張ったな」と言ってもらいたい。

 誰も知り合いのいない後宮に入って、アレク様に与えられるだけでなく、自分で何かやり遂げたい。
 そう思った。

「どこまでできるかわかりませんが、一生懸命頑張りたいんです」
 見上げると、アレク様は大きく頷いた。
「納得するまでするといい。ユベールの頑張りを応援する」
 アレク様は僕の前髪をあげ、額に口付けをする。

「無理はしても無茶はするな。いいな」
「はい」
 僕は頷いた。

 やっぱりアレク様は優しい。
 どう考えてもアレク様は残酷で残忍なことが、できる方ではない。
 そう思う反面、アレク様のことを残忍だと思いたくないから、いいところばかりに目が向くのか。それとも本当にアレク様は優しくて思慮深い人なのか……。
 答えを出すには、まだアレク様と過ごした時間は短い。

 焦らなくてもいい。
 ゆっくり本当のアレク様と向き合おう。
 目を閉じると、
「今日はもう休むといい」
 アレク様は僕が眠りに落ちるまで、膝枕をし頭を撫で続けてくれていた。
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