【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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可愛い人

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 僕とアレク様は夕食を一緒に食べ、そのまま僕の部屋で過ごした。

「楽しい時間が過ごせたんだな」
  僕がアレク刺しを膝枕をすると、アレク様は僕の長い髪を指にからませながら、今日の話を聞いてくださる。

「明日の字の練習用に紙と鉛筆を用意させておく。子ども用の本も買い足さないとな。また沢山話を聞かせてくれ」
 明日、子ども達と過ごすことを、僕よりもなぜだかアレク様の方が楽しみにしているようだ。

「ほら、やっぱりアレク様はお優しい」
 僕がアレク様の頬に手を当てる。
「そうか?冷血だと評判は悪いぞ」
 そう言いながらも、アレク様は僕の反応を伺っているように見える。

「僕が知るアレク様はお優しくて、甘えたさんです」
「甘えた?」
「はい。膝枕して欲しいって仰ったり、ずっと僕の髪で遊ばれてたり。とても可愛いです」
 アレク様の髪を優しく撫でると、アレク様は目を丸くし、そして気持ちよさそうに目を瞑った。

「甘えられるのは嫌か?」
「嫌ではありませんが、人によります」
「じゃあ、誰だったらいいんだ?」
「たとえば、子ども達だったり…」
「他はいないのか?」
 目を瞑っていたアレク様が目を開ける。

「他の方ですか?」
 う~んと考えるが、出てこない。
「そんなに考えないと出てこないのか?」
 むくりとアレク様が上半身を起こす。

「そう言われましても……」
 困り果てていると、
「俺は……どうなんだ?」
「え?」
「俺に甘えられるのは、嫌なのか?」
 顔を赤くしながらアレク様が言うので、笑ってはいけないとわかりつつも我慢ができず「うふふ」と笑ってしまった。

「笑うな」
 アレク様睨むけど、全く怖くない。
「アレク様は僕に甘えたいのですか?」
「悪いか……?」
 子どものように、アレク様はプイッと顔を横に向ける。

「アレク様は特別です。だから甘えられるのは嬉しいですし、もっと甘えてもらいたいです」
 これ以上笑うと、子どもみたいに拗ねてしまいそうだったので、必死に笑いを堪えている。

「アレク様、たくさん甘えてくださいね」
「……」
 アレク様は言葉で答えず、チラリと僕を見ると、そのまままた僕の膝の上に頭を置いた。 

 なんて可愛い人なんだろう。
 笑うのを我慢していたが、自然と「うふふ」と笑ってしまっていた。
「だから笑うなと言っている」
「申し訳ございません。ただあまりにもアレク様が……」
 可愛いと言ってしまってはまた拗ねると思い、
「なんでもありません」
 そう誤魔化しながら、アレク様の艶のある黒髪を優しく撫でた。


 翌日から僕とカイトくん達は読み書き、計算などを勉強したりした。そして毎日夕食後はアレク様を膝枕をしながら、日中の話をするのが日課となっていた。

 ある時、僕が勉強を頑張っているカイトくんの話ばかりするので、アレク様が「他の男の話ばかりするな」と拗ねた時は、お腹を抱えて笑ってしまった。
 子ども達と触れ合う中、他の使用人達とも話す機会が増え、日を重ねるごとにアレク様や子ども達、後宮内との人たちとの距離が近くなり始めていた。
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