38 / 109
決意 13
しおりを挟む
「ユベール、ヒューゴ、これはどういうことだ?」
顔面蒼白になったクロエと殿下が現れた。
日はまだ高く、殿下がお戻りになる時間はもっと遅いはず。
どしてこんなに早いの?
一気に緊張が全身を駆け巡り、冷や汗が背中を伝う。
「俺は部屋から出ていいといってはいないが。あんなことがあったのに、まだ俺のいうことが聞けないのか?」
殿下の紅い瞳が怒りでより紅い。
何か喋らないと、何か喋らないと……。
気持ちは焦るのに、すごむような瞳でにらまれると、蛇に睨まれた蛙のように口から一言も言葉がでない。
「クロエは、自分がユベールを園庭に誘い出したと言っているが、それは本当か?」
殿下は隣にいたクロエを、虫ケラでもみるような目で見、クロエはビクっ体を揺らした。
「それは……」
ー僕の意思で園庭にでました!ー
そう言いたいのに喉の奥で言葉が詰まり、何も言えない。
「俺がいない間にまた殺されかけたいのか?」
あの日の出来事が瞬時に脳裏で再生され、身動きがとれない。
「ヒューゴ。お前という奴がいながら、この不始末。どう責任を取るつもりだ」
殿下の手が腰の剣に伸びる。
場が凍る。誰1人、身動きがとれない。
時が止まったように何一つ動いていない。
ダメだ!このままではダメだ!
お腹に力を入れ、喉の奥に詰まった言葉を放とうとするが、何度力を入れても言葉は喉より上には上がってくれない。
息を大きく吸うが吐くことができず、苦しい。
お願い!声よ出て!
心の中で叫んだとき、ヒューゴ様が殿下に近づき、目の前で跪く。
「アレク様の思いのまま、ご処分を」
頭を下げた。
剣と鞘が擦れる音がして、ヒューゴ様の頭上で剣の刃が太陽の光を反射させる。
「言い残すことは?」
殿下の声と眼光はその場を凍えさせる。
そんな!待って!
体を動かそうにも、体が胴で固められたように動かない。
待って!
声を出そうにも、喉をきつく締め付けられているようで声が出ない。
「ございません」
ヒューゴ様は顔を上げず、殿下からの処罰を待っている。
待って!待って!
どうして動かないんだ!
どうして言葉が出ないんんだ!
殿下との約束を破ってまでして、外に出ようと決めたのは僕自身じゃないか!
僕は自分で決めたことは、自分で責任を取ると決めたんじゃなかったのか!
自分で前に進もうとおもったんじゃないのか!
悔しい!何もできない自分が、自分の行動の責任すら取れない自分が情けなくて、悔しい。
いやだ!このまま何もしないなんて嫌だ!!
僕はもう、何も失いたくない!
失わないんだ!!
絶対、絶対にもう何も失わない!
体の奥深くに力を込める。
殿下から処罰を受けるのは僕であって、ヒューゴ様じゃない!
顔面蒼白になったクロエと殿下が現れた。
日はまだ高く、殿下がお戻りになる時間はもっと遅いはず。
どしてこんなに早いの?
一気に緊張が全身を駆け巡り、冷や汗が背中を伝う。
「俺は部屋から出ていいといってはいないが。あんなことがあったのに、まだ俺のいうことが聞けないのか?」
殿下の紅い瞳が怒りでより紅い。
何か喋らないと、何か喋らないと……。
気持ちは焦るのに、すごむような瞳でにらまれると、蛇に睨まれた蛙のように口から一言も言葉がでない。
「クロエは、自分がユベールを園庭に誘い出したと言っているが、それは本当か?」
殿下は隣にいたクロエを、虫ケラでもみるような目で見、クロエはビクっ体を揺らした。
「それは……」
ー僕の意思で園庭にでました!ー
そう言いたいのに喉の奥で言葉が詰まり、何も言えない。
「俺がいない間にまた殺されかけたいのか?」
あの日の出来事が瞬時に脳裏で再生され、身動きがとれない。
「ヒューゴ。お前という奴がいながら、この不始末。どう責任を取るつもりだ」
殿下の手が腰の剣に伸びる。
場が凍る。誰1人、身動きがとれない。
時が止まったように何一つ動いていない。
ダメだ!このままではダメだ!
お腹に力を入れ、喉の奥に詰まった言葉を放とうとするが、何度力を入れても言葉は喉より上には上がってくれない。
息を大きく吸うが吐くことができず、苦しい。
お願い!声よ出て!
心の中で叫んだとき、ヒューゴ様が殿下に近づき、目の前で跪く。
「アレク様の思いのまま、ご処分を」
頭を下げた。
剣と鞘が擦れる音がして、ヒューゴ様の頭上で剣の刃が太陽の光を反射させる。
「言い残すことは?」
殿下の声と眼光はその場を凍えさせる。
そんな!待って!
体を動かそうにも、体が胴で固められたように動かない。
待って!
声を出そうにも、喉をきつく締め付けられているようで声が出ない。
「ございません」
ヒューゴ様は顔を上げず、殿下からの処罰を待っている。
待って!待って!
どうして動かないんだ!
どうして言葉が出ないんんだ!
殿下との約束を破ってまでして、外に出ようと決めたのは僕自身じゃないか!
僕は自分で決めたことは、自分で責任を取ると決めたんじゃなかったのか!
自分で前に進もうとおもったんじゃないのか!
悔しい!何もできない自分が、自分の行動の責任すら取れない自分が情けなくて、悔しい。
いやだ!このまま何もしないなんて嫌だ!!
僕はもう、何も失いたくない!
失わないんだ!!
絶対、絶対にもう何も失わない!
体の奥深くに力を込める。
殿下から処罰を受けるのは僕であって、ヒューゴ様じゃない!
37
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
「その想いは愛だった」騎士×元貴族騎士
倉くらの
BL
知らなかったんだ、君に嫌われていたなんて―――。
フェリクスは自分の屋敷に仕えていたシドの背中を追いかけて黒狼騎士団までやって来た。シドは幼い頃魔獣から助けてもらった時よりずっと憧れ続けていた相手。絶対に離れたくないと思ったからだ。
しかしそれと引き換えにフェリクスは家から勘当されて追い出されてしまう。
そんな最中にシドの口から「もうこれ以上俺に関わるな」という言葉を聞かされ、ずっと嫌われていたということを知る。
ショックを受けるフェリクスだったが、そのまま黒狼騎士団に残る決意をする。
夢とシドを想うことを諦められないフェリクスが奮闘し、シドに愛されて正式な騎士団員になるまでの物語。
一人称。
完結しました!
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
[BL]王の独占、騎士の憂鬱
ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕
騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて…
王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい
左遷先は、後宮でした。
猫宮乾
BL
外面は真面目な文官だが、週末は――打つ・飲む・買うが好きだった俺は、ある日、ついうっかり裏金騒動に関わってしまい、表向きは移動……いいや、左遷……される事になった。死刑は回避されたから、まぁ良いか! お妃候補生活を頑張ります。※異世界後宮ものコメディです。(表紙イラストは朝陽天満様に描いて頂きました。本当に有難うございます!)
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
【完結】ここで会ったが、十年目。
N2O
BL
帝国の第二皇子×不思議な力を持つ一族の長の息子(治癒術特化)
我が道を突き進む攻めに、ぶん回される受けのはなし。
(追記5/14 : お互いぶん回してますね。)
Special thanks
illustration by おのつく 様
X(旧Twitter) @__oc_t
※ご都合主義です。あしからず。
※素人作品です。ゆっくりと、温かな目でご覧ください。
※◎は視点が変わります。
【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜
N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。
表紙絵
⇨元素 様 X(@10loveeeyy)
※独自設定、ご都合主義です。
※ハーレム要素を予定しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる