【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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決意 13

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「ユベール、ヒューゴ、これはどういうことだ?」
 顔面蒼白になったクロエと殿下が現れた。
 日はまだ高く、殿下がお戻りになる時間はもっと遅いはず。
 どしてこんなに早いの?
 一気に緊張が全身を駆け巡り、冷や汗が背中を伝う。
「俺は部屋から出ていいといってはいないが。あんなことがあったのに、まだ俺のいうことが聞けないのか?」
 殿下の紅い瞳が怒りでより紅い。
 何か喋らないと、何か喋らないと……。
 気持ちは焦るのに、すごむような瞳でにらまれると、蛇に睨まれた蛙のように口から一言も言葉がでない。
「クロエは、自分がユベールを園庭に誘い出したと言っているが、それは本当か?」
 殿下は隣にいたクロエを、虫ケラでもみるような目で見、クロエはビクっ体を揺らした。
「それは……」
ー僕の意思で園庭にでました!ー
 そう言いたいのに喉の奥で言葉が詰まり、何も言えない。
「俺がいない間にまた殺されかけたいのか?」
 あの日の出来事が瞬時に脳裏で再生され、身動きがとれない。
「ヒューゴ。お前という奴がいながら、この不始末。どう責任を取るつもりだ」
 殿下の手が腰の剣に伸びる。
 場が凍る。誰1人、身動きがとれない。
 時が止まったように何一つ動いていない。
 ダメだ!このままではダメだ!
 お腹に力を入れ、喉の奥に詰まった言葉を放とうとするが、何度力を入れても言葉は喉より上には上がってくれない。
 息を大きく吸うが吐くことができず、苦しい。
 お願い!声よ出て!
 心の中で叫んだとき、ヒューゴ様が殿下に近づき、目の前で跪く。
「アレク様の思いのまま、ご処分を」
 頭を下げた。
 剣とさやが擦れる音がして、ヒューゴ様の頭上で剣の刃が太陽の光を反射させる。
「言い残すことは?」
 殿下の声と眼光はその場を凍えさせる。
 そんな!待って!
 体を動かそうにも、体が胴で固められたように動かない。
 待って!
 声を出そうにも、喉をきつく締め付けられているようで声が出ない。
「ございません」
 ヒューゴ様は顔を上げず、殿下からの処罰を待っている。
 待って!待って!
 どうして動かないんだ!
 どうして言葉が出ないんんだ!
 殿下との約束を破ってまでして、外に出ようと決めたのは僕自身じゃないか!
 僕は自分で決めたことは、自分で責任を取ると決めたんじゃなかったのか!
 自分で前に進もうとおもったんじゃないのか!
 悔しい!何もできない自分が、自分の行動の責任すら取れない自分が情けなくて、悔しい。
 いやだ!このまま何もしないなんて嫌だ!!
 僕はもう、何も失いたくない!
 失わないんだ!!
 絶対、絶対にもう何も失わない!
 体の奥深くに力を込める。
 殿下から処罰を受けるのは僕であって、ヒューゴ様じゃない!
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