【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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決意 12

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「ユベール様は何のご本を読んでいるの?」
「え?ご本?えーっとね……小説って言って、少し長いお話が書いてある本だよ」
 まさか子どもに『大人のロマンス小説』とは言えず、小説の部分だけを話す。
「それ面白いの?」
「まだ読み始めたばっかりだけど、知らないことがたくさん書いてあって面白いよ」
「僕が読んでるご本も面白いよ」
 テーブルの上に置いていた本を、僕に手渡してくれる。
「お誕生日に買ってもらったんだ」
 それは6歳児が読むには少し分厚い。
 表紙には見覚えがある本だった。
 この本はたしか孤児院にいた頃、子ども達にせがまれよく読んだっけ。
「その本面白いよね」
 本を見ていると、孤児院での生活を思い出し懐かしくなり、恋しくもなる。
 あの子たちは元気にしているだろうか?
 会いたい……。
「ユベール様このご本、貸してあげるよ」
 カイト君は本をさらにグイッと差し出してきた。
「え?大事な本なんじゃないの?」
「うん。でもいいんだ」
「どうして?」
「だってユベール様、今さみしそうな顔をしているよ。悲しそうな人とか、さみしそうな人とか困っている人には、優しくするんだよってママが言ってたもん。それに僕、ユベール様に元気になってほしい。だから貸してあげる」
 僕が読んでいた本の上に、カイト君は自分が持っていた本を重ねた。
「優しいね」
 カイト君は「えへへ」とくすぐったそうに笑う。
 孤児院を出てから、久々に触れた無垢な優しさ。
 心が、また少し温かくなった。
「ねぇカイト君。一人で読むより一緒に読んだ方が楽しいから、一緒に読まない?」
 そう言いながら自分の膝の上をポンポンと叩くと、カイト君は「やったー!」とぴょんぴょん飛び跳ねながら僕の膝の上に座る。
「カイト君はどこまで読んだの?」
「えーっとね…」
 カイト君は続きのページまでめくると「ここ!」と指差した。
「それじゃあ、ここから読むね」
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