【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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決意 ⑧

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「僕にはちょっと早いかも…」
 そう言ったものの、僕はもう18歳。
 成人し、そういう本を読んだり、話をしたりするに早い年じゃないのはわかっている。
 でもお城で暮らしていた時、読んでいたといえば冒険者のお話だったり、孤児院で読んでいたのは神様のお話だったり、昔からある名著。
 色々は本が置いてあっても、官能小説は流石に置いていなかった。

「早いなんてことはありませんよ」
「でも僕には、その…刺激が強くて…」
 そう言いながら、男性と女性が絡み合う所が目に焼き付き顔がますます赤くする。

「何を仰ってるのですか。官能小説と言いましても、二人の恋を邪魔するものとの愛の戦いや、愛するが故の葛藤。締め付けられるような心情に二人が結ばれた時の幸福感…。そういう恋愛の素晴らしさがこの中に詰まっているのです」
「そう…なの?」
「そうですとも!究極のロマンです。きっとユベール様はこの本のヒロインのように、殿下からの究極の愛に包まれるんでしょうね」
 クロエはうっとりと何か想像しているように、宙を見る。

「そんなこと……ありえるのかな……」
 今の殿下との関係だと、そんなことありえない。
 だって僕は殿下のかりそめの側室。
 決して殿下から愛されての事じゃない。
「それに近い将来、殿下とユベール様が床を共にされる初夜のとき、何もご存じないのはユベール様自身が不安になられるかも知れません」
 殿下と床を共にする!?
 初夜にすることって、床をを共にすることだったんだ!

 宮廷に来て初めての夜。
 殿下はお忙しく来られなかったけど、もし来られていたら、そこで僕と殿下は……。
 みんな知っていて、僕だけ知らなかったことや、床を共にするときのことを想像してしまうと、全身の血液が沸騰してしまいそうになる。

 知らないことをする。
 この挿絵の人たちみたいなことをする。
 そういうことは、どうしてもいけないことのような気がしてしまう。
「知識はあって困ることはありませんよ」
 それなのにクロエの前で『読まない』という選択肢はなさそうだ。

「どうしても読まないとダメ?」
 本を強く勧めてくるクロエにいうと、
「ダメです」
「読みたくなければ、読まなくてもいいですよ」
 クロエとヒューゴ様からまったく正反対の答えが返ってくる。
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