【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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決意 ⑥

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「ハーブティーが冷めないうちに、召し上がってください」
 僕にはハーブティーとケーキをすすめるが、クロエや僕たちの護衛をしてくれながら後ろを歩いていたヒューゴ様はハーブティーを飲む気配も、ケーキを食べる気配もない。

「クロエやヒューゴ様は食べないの?」
「こちらに用意したのは全てユベール様お一人のためのものです」
 クロエは自分の顔の前で、大きく手を横に振った。
「これ僕一人だけのため?」
 ヒューゴ様の方を見ると、
「左様でございます」
 ヒューゴ様も僕1人のものだという。

 せっかくこんな素敵な場所に連れてきてくれて、こんなに美味しそうなお茶とケーキを用意してくれているのに、僕一人だけいただくなんておかしい。
「ねぇクロエ、ヒューゴ様」
「はい、なんでございましょう」
「僕一人だけのお茶会なんて寂しいから、クロエやヒューゴ様さえ良ければ一緒に参加してくれない?」
 侍女であるクロエはもちろん、ヒューゴ様の立場であったとしても、形だけであっても第1王子の側室と同じテーブルでお茶をするなんてことは、聞いたことがない。

 だからクロエやヒューゴ様は僕の分しかお茶の用意をしてこなかったと思う。
 でも僕の中でクロエは侍女というより、元気で優しいお姉さんのような存在。
 ヒューゴ様はとても頼りになる聡明な方。
 だから一緒にお茶を楽しみたい。
 先ほどクロエが進めてくれたケーキを皿に乗せハーブティーを2人分カップに淹れると、テーブルの上に置いた。

「ヒューゴ様、クロエ、僕とどう一緒にお茶会をしてくれませんか?」
 微笑みかける。
「私は護衛という役割がありますので……」
 ヒューゴ様が申し訳なさそうにいうけれど、僕はヒューゴ様とも一緒にお茶を楽しみたい。

「僕はヒューゴ様と仲良くなりたいんです。お願いします」
 僕がお願いすると、
「ありがとうございます。では椅子をあと二脚用意させます」
 少し困ったような、でもどこか嬉しそうにヒューゴ様は微笑み返してくれる。

「ね、クロエも一緒にお茶会してくれる?」
 僕がそう聞くと、
「それは、もちろんです!」
 満面の笑みを浮かべる。
 そして3人の楽しいお茶会が始まった。
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