【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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決意 ④

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 扉を開けたると、眩い陽の光で目が眩んだ。
 光に目が慣れるよう、ゆっくりと目を開けると目に飛び込んできたのは、青々とした木々と色彩豊かな花々が陽の光に照らされ、ひかり輝いていた。

「綺麗……」
 吸い寄せられるように一番近くに咲いていた花のそばに行くと、花の香に誘われて飛んできていた、小さな黄色い蝶々が花の蜜を吸っている。

 花を摘んでしまうのはかわいそうだったので、しゃがんで花に顔を近づけ、香を嗅いだ。
 砂糖菓子のような強い甘い香はしないけど、体を包み込んでくれるような優しい甘い香がする。
 大きく深呼吸をし、葉に顔を近づける。
 葉の上に水滴を残している葉は、若葉の青さを放ち、水滴は陽の光を浴び光を反射させながら虹色に輝く。

 懐かしい香がした。
 幼い頃の香がした。
 香と共に、父様、母様、兄様、姉様、僕を守ってくれた乳母……。
 愛しく懐かしく恋しい家族の顔が浮かぶ。
 牧師様、可愛い僕の兄さん、姉さん、弟、妹たち……。

 僕がどうしても守りたかった特別な人たちの顔が浮かぶ。
 ずっとずっと会いたかった大切な人々の顔が浮かぶ。

 園庭ここにきて、よかった。
 みんなに会えた……。
 視界が緩み水滴が残る葉の上に涙が落ち、涙の重みで葉が揺れ水滴と涙が湿った地面に落ちた。

「ユベール様に見ていたどきたい場所があります」
 僕の様子を後ろで見守ってくれていたクロエが僕の手をとり、立ち上がらせてくれる。
「こちらです。行きましょう」
 ゆっくりと歩き出し、ヒューゴ様は僕たちのすぐ後ろを歩いた。
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