【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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決意 ①

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 殿下と謁見してから3ヶ月がたち、園庭で咲く花々の種類がガラッと変わってきた。

 あの事故から1ヶ月ほどたち、だんだんと窓から園庭を見られるようになってきた。
 クロエがいう表面上だけの殿下じゃなくて、本当の殿下ってどういう意味なんだろう?
 殿下を暗闇から救い出すって、どういう意味なんだろう?
 言葉の意味がわからず、あれからずっと引っ掛かっている。

 僕と殿下はあの日以来、直接は顔を合わせていない。
 でもこの間、僕の部屋の窓から殿下が園庭で花を摘む姿を見た。
 丁寧に丁寧に花を花を選び摘んでいく。
 一体誰に渡すんだろう……。
 あんなにじっくりと花を選ばれてたぐらいだから、きっと殿下の大切な方なんだろう。

 僕は殿下のことを知りたいと思う。
 謁見室で初めてあった時の冷たい殿下。
 不審者と出会してしまった時に見せた、怒りに満ちた殿下。
 僕が部屋から落ちてしまった時に、僕を助けてくれたお優しい殿下。
 僕は殿下と会うたびに、新しい殿下と出会う。

 殿下は怖い。怖いはずなのに、もっと知りたいとどこか惹かれてしまう。
 だから僕は、僕のまだ知らない殿下にあってみたいんだ。

「おはようございます、ユベール様。新しいお花をお届けに参りました」
 いつものようにクロエが部屋に飾る花を持ってきてくれる。
「いつもありがとう」
 クロエが花を花瓶に生けてくれ、淡いピンク色の花から甘い香りがかおる。

 園庭にはこんな花々の香りがしているんだろうなと思うと、外に出てみたい。
 でも殿下との約束があって、僕は外には出ない。
 外に出てみたいけれど、|出ない〈・・・〉。
 クロエが毎日持ってきてくれる花で、僕は十分なんだ。
「クロエ、毎日花を摘んで来てくれて、ありがとう」
 もう一度深く花の香を嗅ぐ。
「毎日お部屋に飾っているお花は、私が摘んだものじゃないんですよ」
「え?じゃあ誰なの?」
 こんな僕のために毎日きれいな花を摘んでくれる人なんて、クロエしか思いつかない。
「言いたいのですが、それは秘密です」
 クロエは口の前に人差し指をあてがい『シー』とジェスチャーをする。
「それよりユベール様、今日は殿下はヒューゴ様とは別行動で、夕方まで城を出られます。その間、園庭には出てみませんか?」
「え!?」
 考えてもしていなかったクロエの発言。
 一瞬「行きたい!」といいそうになったけれど、慌てて口をつぐんだ。
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