【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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園庭で ②

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「だって僕は殿下の手を煩わせてばかり。それに殿下が僕をみるとき、とても不快そうにされている。僕は殿下に嫌われてもいい。でも僕は殿下に不快な思いをさせたくない。だから僕は殿下の視界に入ったらいけないんだ」
「そんな……」
「僕は殿下に嘘をついて側室になった。それだけでも重罪だよ……」
 湖に落ちた石が湖の底に落ちていくように、気持ちがどんどん、どんどん沈んでいく。

 体が重くて、地中に埋まっていきそう。
 このまま沈んでしまえば楽になるのかな?
 そんなことが頭に浮かんだけれど、僕がいなくなったら……殿下の手を煩わせるだけの僕がいなくなったっら、もう孤児院の援助は打ち切られてしまうのだろうか……。
 どこにも逃げ場がなくて、苦しい。
 空気の少なくなった水槽に入れられた魚のよう。

「ユベール様、顔をあげてください」
 俯き膝の上で握られた僕の拳を、クロエは優しく両手で包み込む。
 僕は視線を握られた手に落とすと、クロエも僕の手に視線をおとした。

「殿下は私がヤキモキするぐらい、とても不器用な方です。本当はユベール様と沢山お話がしたいのに、正反対のことばかりされています。それは多分、幼い頃から周りが敵ばかりで、人を信用することができなかったからだと思います」
「……」
「殿下がユベール様に冷たく接せられるのにも、きっと訳があります。だから私はユベール様だけには、表面上の殿下だけでなく、本当の殿下を知って頂きたいのです。殿下を暗闇から救い出してください」
 僕の手を握るクロエの手の力が、ほんの少し強くなる。

「クロエは殿下のことが大好きなんだね」
「はい。ユベール様の次に大好きです」
 イタズラっぽくペロリと舌を出して、ウィンクをした。
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