【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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事故 ③

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 殿下とヒューゴ様のやり取りを見ていた使用人達が、何事かと顔を覗かせた。

「殿下、僕は大丈夫です」
 殿下の腕から降りようとするが、
「大丈夫なわけあるか。今すぐ医者に診てもらう。それまでじっとしていろ。いいな」
 口調はきついが、殿下が何かとても心配しているのがわかる。
 僕が頷くと、殿下は僕の部屋に急いだ。

 部屋に着きベッドに寝かされると、騒ぎを聞きつけたクロエが湯を沸かし部屋で待機していた。
「殿下、大変申し訳ございませんが、医師の診断の際、ユベール様が下着姿になるのをお許しいただけませんでしょうか?」
 殿下の眉がピクリと動く。

「それはどうしてものことなのか?」
「服越しですと、怪我を見落としてしまうかもしれません」
「……。わかった。それでは俺も立ち会おう」
「それはできません」
「どうしてだ!」
 殿下の視線が鋭くなる。

「いくらユベール様が殿下のご側室であっても、初夜を共にされていないかぎり、服を脱いだお姿を見ることは許されていません」
「ユベールは俺の側室だぞ。どうして夫が怪我をした妻のもとにいられないのだ!」
「そういう決まりです。どうか我慢をしてくださいませ」
 クロエは殿下相手に怒鳴られようと、一歩も譲らない。

「私が責任を持ってユベール様の診断を見届けます。ですのでどうかお許しください」
 クロエが深々と頭を下げると、
「殿下、どうかお気を落ち着かせください」
 ヒューゴ様が医師を連れてきた。
「これは殿下がどう言われても、仕方のない決まりなのです。どうぞ隣の部屋でお待ちください」
 クロエは恐れず殿下から目を逸らさず言う。

 いつもは誰の意見も聞かなさそうなのに、「チッ」と舌打ちし、殿下は部屋から出て行った。
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