【完結】偽りの花嫁 〜すり替えられた花嫁は冷血王子から身も心も蕩けるほどに溺愛される〜

葉月

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刺客 ④

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「ユベール様は何も悪くありません。悪いのはユベール様を守れなかった、わたくしたちです」
 ヒューゴ様達が悪いはずはない。僕は首を振った。
「いいえ、私たちのせいなんです」
 クロエが用意してくれたハーブティを、ヒューゴ様が手渡してくれる。
 もう安全なはずなのに震えが止まらず、ソーサーとカップが擦れる音がし、ハーブティの水面が揺れる。
「このハーブティは気持ちを落ち着かせてくれます。これを飲まれてから、湯船につかってください。入浴中は、私が外で護衛しますので、どうぞ安心していてください」
 僕は働かない頭で何度も頷き、言われるがままお茶を飲んだ。
 
 返り血を流すために、湯船はすぐに赤く染まり入浴は長かった。
 クロエが綺麗に洗ってくれるのを、僕はただじっと見ていることしかできなかった。
 何事もなかったかのように、返り血でドロドロになっていた髪や体は綺麗に洗われていく。
 それでも自分の体から放たれていた鉄のような、あの血なまぐさい臭いが、鼻の奥にの凝っている。
 あれが夢であればいいのに……。
 そう思うが、鏡に映った自分の首に、先ほど短剣を突きつけられ流血した箇所が、手当てされていた。
 どんなに思いたくなくても、あれは現実で夢ではない。
 クロエに手を引かれるまま、ベッドの中に入ったが、目を瞑れば先ほどの惨状が瞼の裏に映し出される。
 結局、僕は一睡もできないまま、朝を迎えた。
 僕がここで生きていく方法。ここでは息を殺し、死んだように生きていくことが、僕の生きる道。孤児院を守る方法だち、僕は肝に銘じた。

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