18 / 109
刺客 ④
しおりを挟む
「ユベール様は何も悪くありません。悪いのはユベール様を守れなかった、私たちです」
ヒューゴ様達が悪いはずはない。僕は首を振った。
「いいえ、私たちのせいなんです」
クロエが用意してくれたハーブティを、ヒューゴ様が手渡してくれる。
もう安全なはずなのに震えが止まらず、ソーサーとカップが擦れる音がし、ハーブティの水面が揺れる。
「このハーブティは気持ちを落ち着かせてくれます。これを飲まれてから、湯船につかってください。入浴中は、私が外で護衛しますので、どうぞ安心していてください」
僕は働かない頭で何度も頷き、言われるがままお茶を飲んだ。
返り血を流すために、湯船はすぐに赤く染まり入浴は長かった。
クロエが綺麗に洗ってくれるのを、僕はただじっと見ていることしかできなかった。
何事もなかったかのように、返り血でドロドロになっていた髪や体は綺麗に洗われていく。
それでも自分の体から放たれていた鉄のような、あの血なまぐさい臭いが、鼻の奥にの凝っている。
あれが夢であればいいのに……。
そう思うが、鏡に映った自分の首に、先ほど短剣を突きつけられ流血した箇所が、手当てされていた。
どんなに思いたくなくても、あれは現実で夢ではない。
クロエに手を引かれるまま、ベッドの中に入ったが、目を瞑れば先ほどの惨状が瞼の裏に映し出される。
結局、僕は一睡もできないまま、朝を迎えた。
僕がここで生きていく方法。ここでは息を殺し、死んだように生きていくことが、僕の生きる道。孤児院を守る方法だち、僕は肝に銘じた。
ヒューゴ様達が悪いはずはない。僕は首を振った。
「いいえ、私たちのせいなんです」
クロエが用意してくれたハーブティを、ヒューゴ様が手渡してくれる。
もう安全なはずなのに震えが止まらず、ソーサーとカップが擦れる音がし、ハーブティの水面が揺れる。
「このハーブティは気持ちを落ち着かせてくれます。これを飲まれてから、湯船につかってください。入浴中は、私が外で護衛しますので、どうぞ安心していてください」
僕は働かない頭で何度も頷き、言われるがままお茶を飲んだ。
返り血を流すために、湯船はすぐに赤く染まり入浴は長かった。
クロエが綺麗に洗ってくれるのを、僕はただじっと見ていることしかできなかった。
何事もなかったかのように、返り血でドロドロになっていた髪や体は綺麗に洗われていく。
それでも自分の体から放たれていた鉄のような、あの血なまぐさい臭いが、鼻の奥にの凝っている。
あれが夢であればいいのに……。
そう思うが、鏡に映った自分の首に、先ほど短剣を突きつけられ流血した箇所が、手当てされていた。
どんなに思いたくなくても、あれは現実で夢ではない。
クロエに手を引かれるまま、ベッドの中に入ったが、目を瞑れば先ほどの惨状が瞼の裏に映し出される。
結局、僕は一睡もできないまま、朝を迎えた。
僕がここで生きていく方法。ここでは息を殺し、死んだように生きていくことが、僕の生きる道。孤児院を守る方法だち、僕は肝に銘じた。
39
お気に入りに追加
282
あなたにおすすめの小説
「その想いは愛だった」騎士×元貴族騎士
倉くらの
BL
知らなかったんだ、君に嫌われていたなんて―――。
フェリクスは自分の屋敷に仕えていたシドの背中を追いかけて黒狼騎士団までやって来た。シドは幼い頃魔獣から助けてもらった時よりずっと憧れ続けていた相手。絶対に離れたくないと思ったからだ。
しかしそれと引き換えにフェリクスは家から勘当されて追い出されてしまう。
そんな最中にシドの口から「もうこれ以上俺に関わるな」という言葉を聞かされ、ずっと嫌われていたということを知る。
ショックを受けるフェリクスだったが、そのまま黒狼騎士団に残る決意をする。
夢とシドを想うことを諦められないフェリクスが奮闘し、シドに愛されて正式な騎士団員になるまでの物語。
一人称。
完結しました!
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
孤独な王弟は初めての愛を救済の聖者に注がれる
葉月めいこ
BL
ラーズヘルム王国の王弟リューウェイクは親兄弟から放任され、自らの力で第三騎士団の副団長まで上り詰めた。
王家や城の中枢から軽んじられながらも、騎士や国の民と信頼を築きながら日々を過ごしている。
国王は在位11年目を迎える前に、自身の治世が加護者である女神に護られていると安心を得るため、古くから伝承のある聖女を求め、異世界からの召喚を決行した。
異世界人の召喚をずっと反対していたリューウェイクは遠征に出たあと伝令が届き、慌てて帰還するが時すでに遅く召喚が終わっていた。
召喚陣の上に現れたのは男女――兄妹2人だった。
皆、女性を聖女と崇め男性を蔑ろに扱うが、リューウェイクは女神が二人を選んだことに意味があると、聖者である雪兎を手厚く歓迎する。
威風堂々とした雪兎は為政者の風格があるものの、根っこの部分は好奇心旺盛で世話焼きでもあり、不遇なリューウェイクを気にかけいたわってくれる。
なぜ今回の召喚されし者が二人だったのか、その理由を知ったリューウェイクは苦悩の選択に迫られる。
召喚されたスパダリ×生真面目な不憫男前
全38話
こちらは個人サイトにも掲載されています。
[BL]王の独占、騎士の憂鬱
ざびえる
BL
ちょっとHな身分差ラブストーリー💕
騎士団長のオレオはイケメン君主が好きすぎて、日々悶々と身体をもてあましていた。そんなオレオは、自分の欲望が叶えられる場所があると聞いて…
王様サイド収録の完全版をKindleで販売してます。プロフィールのWebサイトから見れますので、興味がある方は是非ご覧になって下さい
【完結】オーロラ魔法士と第3王子
N2O
BL
全16話
※2022.2.18 完結しました。ありがとうございました。
※2023.11.18 文章を整えました。
辺境伯爵家次男のリーシュ・ギデオン(16)が、突然第3王子のラファド・ミファエル(18)の専属魔法士に任命された。
「なんで、僕?」
一人狼第3王子×黒髪美人魔法士
設定はふんわりです。
小説を書くのは初めてなので、何卒ご容赦ください。
嫌な人が出てこない、ふわふわハッピーエンドを書きたくて始めました。
感想聞かせていただけると大変嬉しいです。
表紙絵
⇨ キラクニ 様 X(@kirakunibl)

【完結】スイートハニーと魔法使い
福の島
BL
兵士アグネスは幼い頃から空に思い憧れた。
それはアグネスの両親が魔法使いであった事が大きく関係している、両親と空高く飛び上がると空に浮かんでいた鳥も雲も太陽ですら届く様な気がしたのだ。
そんな両親が他界して早10年、アグネスの前に現れたのは甘いという言葉が似合う魔法使いだった。
とっても甘い訳あり魔法使い✖️あまり目立たない幸薄兵士
愛や恋を知らなかった2人が切なく脆い運命に立ち向かうお話。
約8000文字でサクッと…では無いかもしれませんが短めに読めます。

白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる