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刺客 ②
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僕は一体どこに連れて行かれるの?何をされるの?
部屋から直線の廊下を歩き、角を曲がると遠くに陛下とヒューゴ様の姿が見えた。
陛下!ヒューゴ様!
心の中で叫ぶと、殿下と目が合った。
「おい待て」
殿下と視線がぶつかった。
よかった!殿下、どうか気付いて!
僕がより強く心の中で願うと、殿下が鋭い視線で僕と不審者を睨み、僕たちの前にやってくる。
「ユベール、俺は部屋から出る許可は出してないが、どうして部屋から出ている」
「それは……」
僕はチラリと後ろで短剣を突きつけている使用人を見て、殿下に目配せした。
「おいお前、どうしてユベールといる?それに見たことのない顔だな。名を名乗れ」
殿下がそう言った途端、不審者は僕を後ろからはがいじめにし、喉ものに短剣の先を当てる。短剣が刺さったところから、ツーっと血が流れた。
「そこを退け!さもないと……」
不審者が何か言いかけた時、
「ユベール、目を瞑れ」
え?
なにもかも瞬時に凍らせてしまいそうなほど、冷たい殿下の声がして急いで目を瞑る。
ずぶりと何かが何かに突き刺さる気配がし、その後背後から「うぐっ!」と今まで聞いたことのない声がした。
僕をはがいじめにしていた腕がずるりと抜ける。そして腕がずり落ちると同時に何かが引き抜かれる気配がし、生暖かいどろりと粘り気のある液体が体に降りかかる。
目を開けると僕の体は血だらけで、足元に視線を落とすと、先ほどまで僕をはがいじめしていた不審者が倒れ、その下には血溜まりがどんどん広がる。
「!!」
一瞬、目に映し出された映像が理解できなかった。が、ぴくりとも動かない男を見ると彼が絶命し、僕の体にかかった血が彼のものだということがわかった。
声が出ず腰が抜け倒れこみそうになった僕を、ヒューゴ様が支えてくれる。
「お怪我はありませんか?」
返り血を浴びドロドロになった僕を、ヒューゴ様が怪我がないかと確認してくれる。
僕は声が出ず、大きく頷くことができなかった。
「よかった……」
ヒューゴ様は安心した表情を浮かべ、胸を撫で下ろす。
ヒューゴ様と殿下を見ると、殿下は怒りに満ちた表情で僕を睨みつけ、
「あれほど部屋の中にいろと言ったのに、俺の言うことが聞けないのか!? 今まで何人の刺客に狙われていたのか、お前はわかっているのか!?」
廊下中に響き渡るほどの大きな声で殿下は怒鳴り、僕の肩を掴み壁に体を押し当てる。
部屋から直線の廊下を歩き、角を曲がると遠くに陛下とヒューゴ様の姿が見えた。
陛下!ヒューゴ様!
心の中で叫ぶと、殿下と目が合った。
「おい待て」
殿下と視線がぶつかった。
よかった!殿下、どうか気付いて!
僕がより強く心の中で願うと、殿下が鋭い視線で僕と不審者を睨み、僕たちの前にやってくる。
「ユベール、俺は部屋から出る許可は出してないが、どうして部屋から出ている」
「それは……」
僕はチラリと後ろで短剣を突きつけている使用人を見て、殿下に目配せした。
「おいお前、どうしてユベールといる?それに見たことのない顔だな。名を名乗れ」
殿下がそう言った途端、不審者は僕を後ろからはがいじめにし、喉ものに短剣の先を当てる。短剣が刺さったところから、ツーっと血が流れた。
「そこを退け!さもないと……」
不審者が何か言いかけた時、
「ユベール、目を瞑れ」
え?
なにもかも瞬時に凍らせてしまいそうなほど、冷たい殿下の声がして急いで目を瞑る。
ずぶりと何かが何かに突き刺さる気配がし、その後背後から「うぐっ!」と今まで聞いたことのない声がした。
僕をはがいじめにしていた腕がずるりと抜ける。そして腕がずり落ちると同時に何かが引き抜かれる気配がし、生暖かいどろりと粘り気のある液体が体に降りかかる。
目を開けると僕の体は血だらけで、足元に視線を落とすと、先ほどまで僕をはがいじめしていた不審者が倒れ、その下には血溜まりがどんどん広がる。
「!!」
一瞬、目に映し出された映像が理解できなかった。が、ぴくりとも動かない男を見ると彼が絶命し、僕の体にかかった血が彼のものだということがわかった。
声が出ず腰が抜け倒れこみそうになった僕を、ヒューゴ様が支えてくれる。
「お怪我はありませんか?」
返り血を浴びドロドロになった僕を、ヒューゴ様が怪我がないかと確認してくれる。
僕は声が出ず、大きく頷くことができなかった。
「よかった……」
ヒューゴ様は安心した表情を浮かべ、胸を撫で下ろす。
ヒューゴ様と殿下を見ると、殿下は怒りに満ちた表情で僕を睨みつけ、
「あれほど部屋の中にいろと言ったのに、俺の言うことが聞けないのか!? 今まで何人の刺客に狙われていたのか、お前はわかっているのか!?」
廊下中に響き渡るほどの大きな声で殿下は怒鳴り、僕の肩を掴み壁に体を押し当てる。
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